不実の実

縞間かおる

第1話 昼下がりの偽り

 お肉の名前みたいなラブホの306号室が最近の定番。


 大きな公園の程近く、閑静な住宅街の中のコーヒーショップから入ると敷地は中で繋がっていて、木陰に隠れたもう一つの入口がある。


 私とカレ、公園で咲茉えまを思いっきり遊ばせてからコーヒーショップへ向かう。


 ベビーカーを押すのはカレだ。


 平日の昼下がり


 仲の良い夫婦のひとコマとして他人の目には映るだろう。


 何もかもが穏やかに和やかに見えるような

 私にとって理想のカレ


 私のドキドキが

 知らず知らずのうちに歩みを早め

 カレの押すベビーカーを少し追い越してしまった。


 キラキラ光る木漏れ日に目を細めて振り返り、カレと視線を絡め合いながらベビーカーを少し先へ行かせる。

 それにピッタリくっついて歩いて行くと……


 丈の短めのセーターの裾から形のいいチノパンのお尻が見え隠れする。

 たまらず、お尻にそっと手を置くと

 カレは立ち止まってベビーカーの中の咲茉を覗き込む。


 私はカレのお尻に手を置いたまま横からベビーカーを覗き込み

 咲茉の頭の上で

 カレと背徳のキスをする。

 と、

 モズだろうか……

 遠くでけたたましく鳴く声がして


 私達はまた歩き出す。


 快楽の巣へ向かって


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