後悔
@gfdlove
第1話 幸せな時間
「あははっ、パパ〜抱っこして〜w w肩車でも良いよー!」
娘は今年で5歳になる。今日はGWでネモフィラが有名な公園に来ていた。
とにかく人がいっぱいで、どうなんだろうなぁと思っていたけど…
実際に目の当たりにすると、来て良かったなって素直に思えた。
「もう、春香ったら。はしゃぎ過ぎよw」
「まぁまぁ、俺は全然大丈夫だよ、涼香。
ほらっ、春香おいでっ!」
ネモフィラが丘一面に咲き誇っていて、
空の青さと色味の違うブルーのコントラストがとても綺麗だった。
「なぁ、同じ青でもやっぱり全然違うんだなぁ」
「そうね、春人はどっちの方が好き?」
涼香が自慢の長い黒髪を風に靡かせながら、尋ねてきた。
春香が産まれる前、髪を軽く茶色に染めてた時期があったけどやっぱり今の髪型の方が似合っていると思う。
黒髪にやっぱり戻そうかなって涼香が言った次の日、長い髪をバッサリ切ってきた時は驚いたけど・・・
それから涼香は子供が欲しいからと、忙しかった仕事の量を減らした。1年程して俺達は春香をお腹に授かり、妊娠を機に涼香は仕事を辞め、専業主婦となり無事に春香を出産することが出来た。
収入は減って苦しかったけど、2人で協力して家庭を作っていく時間はそれとは比べものにならないくらいに幸せだった。
「俺は空の青の方が好きだなぁ。ネモフィラの青も鮮やかで綺麗なんだけど、空の少しぼやけたような水色が優しい感じがしてさ。」
「そっかー。私は逆かな、ネモフィラのあの青さが清廉な感じがして好き。春香はどっち?」
「私はどっちも好きー!両方とも綺麗だもん!」
ネモフィラで染まった鮮やかなブルーの草原を3人で一緒に歩いた。
「ねー、パパ、ママ。また今度来ようねー」
「ああ、いいよ。春香はここ気に入ったのか?」
「うんっ、また一緒にお花を見に来ようね!」
「そうね、また来年も皆んなで来ましょうね。来年はお弁当も作って来ようかしら。」
「やったー!春香はシャケシャケのおにぎりが良いなぁー。それと卵焼き!」
「ふふっ、分かったわよ。来年は楽しみにしててね♪」
こんな時間がずっと続けばいいな。
俺の肩の上ではしゃいでる春香と、太陽の陽射しを眩しそうにしながら春香に微笑んでいる涼香を見てそう思った。
***************
GWが終わって、また仕事が始まる。
「高岡係長、また〇〇さんからクレームの電話がありまして・・・」
「そっか、まだ電話は繋がってるの?」
「はい、すみません…きっと私が受けた注文の件だと思うんですけど。
「んっ、大丈夫だよ。とりあえず僕が電話変わるから、霧咲さんは気にしちゃダメだよ。」
電話を変わって、内容を聞く。
どうやら注文していた材料が違っていたらしい。でも詳しく話を聞くと間違えていたのは先方の方みたいだ。
「はい、分かりました。すぐに手配しますので、安心して下さい。ただ〇〇と⬜︎⬜︎は間違えやすいので、次は気をつけて頂けると助かります。はい、それでは失礼致します。」
受話器を置いて霧咲さんに話しかける。
「霧咲さんのミスじゃないから安心して。〇〇さんにもちゃんとそれは伝えたから大丈夫だよ。〇〇さんは申し訳なかったって伝えてくれってさ。だから許してあげてね。」
「いえ、私が確認をしなかったのも悪かったので・・、高岡係長ありがとうございました。」
「本当に気にしないで。それよりも霧咲さんは偉いね。自省して、相手を許せるっていう事はすごい事だよ。」
俺は本当にそう思っていた。
例え他人から見たら簡単に許せるような事であっても、実際には難しかったりするから。
「係長。私はそんな事ないです。…でも本当にありがとうございました。」
霧咲さんはそう言って、自分の席に戻って行った。
今日はGW明け初日だから、ちょっと色々ありそうだなぁ。8時には帰れるといいけどな。
春香も今日から幼稚園か。ちゃんと頑張って行ったかな。8時上がりだと、今日は会えないかなぁ。
よしっ、少しでも早く帰れるように頑張ろう!
涼香に仕事から帰れるのは8時くらいになりそうだとLIMEして、取り掛かってた仕事に戻った。
ーーーかなり必死に頑張ったんだけど、やっぱり終わりそうにない…
机の上にある書類の山を見てウンザリする。
定時近くになって、これは8時どころか9時過ぎるかもなぁ・・・なんて思えてきた。
「高岡係長、手伝いましょうか?」
霧咲さんが声を掛けてきてくれた。
「あぁ霧咲さん、ありがとうね。でも連休明けで身体も慣れてないだろうし、大丈夫だよ。それに4月に入社したばっかりなのに、頑張り過ぎると続かなくなっちゃうからさ。」
「大丈夫です。さっき助けて頂いたので…それに係長だけが残業っておかしくないですか?
あと・・・私、早く仕事を覚えたいんです。」
真面目な子だなぁと思った。
気持ちはすごく嬉しかったし、甘えてしまおうかと一瞬思ってしまったけど、やめた。
「気持ちはすごく嬉しかったよ。でもね霧咲さんがすごく頑張っているのを知っているから、無理はして欲しくないんだ。」
「でも係長だって、早く帰りたいんじゃないですか?お子さんが待っているんですよね。」
良く知ってるなって、ちょっとびっくりした。
そして意思の強さに好感を持った。
「いや、まぁそうなんだけどね。うん、分かったよ。じゃあ手伝ってくれる?」
「はい、喜んで。」
霧咲さんは、笑顔で答えてくれた。
「なんか居酒屋みたいだねw w」
「ふふっ、そうですねw」
霧咲さんは想像以上に仕事が早くて、7時過ぎには仕事の目処がたった。
後は明日やれば大丈夫。
「霧咲さん、ありがとう。もう後は明日やれば大丈夫だから。思っていたよりも、全然仕事が早くてびっくりしたよ。」
「そうですか。このくらいなら、いつでもお手伝いしますよ。」
飄々と彼女は言う。
「いや、本当にありがとうね。この時間なら子供にまだ会えるかも。今度お礼にお昼でもご馳走させてね。」
「そんな気を使わないで大丈夫ですよ。
でも・・・それじゃあ気が済まないっていうのであれば、パスタの美味しいお店をお願いしますw」
彼女は冗談混じりに答えてくれた。
たまにはちょっと良いランチもいいかもな。
「分かったよ。じゃあお店を探しておくから、来週にでも一緒に行こう。」
「はい、ありがとうございます。それではまた明日よろしくお願いします。」
「うん、霧咲さんお疲れ様!」
霧咲さんとお礼にお昼をご馳走する約束をして、ちょっと急いで帰った。
「ただいま〜」
「パパ、お帰り〜」
春香がパタパタと走って玄関に迎えに来てくれた。あぁー可愛いな。
「あなた早かったじゃない?LIMEには帰れるの8時過ぎになりそうって入ってたから、もっと遅いかと思ってたわ。」
涼香も玄関まで来てくれた。
「あぁ、仕事手伝ってくれた子が居てね。思ってたより早く終わったんだよ。」
「そうなの、良かったわね。ご飯は食べ終わったから、これから春香をお風呂に入れようと思ってたの。春人が一緒に入る?そしたらご飯を温め直しておくわよ。」
「じゃあ、そうするよ。春香〜、パパと一緒にお風呂入ろっか?」
「うん、分かった〜じゃあパパ一緒に入ろー」
春香が両手を上げて、仕草で抱っこを要求してくる。
春香を抱き抱えてお風呂に向かった。
「じゃあ春香をよろしくね〜!そういえば手伝ってくれた子って、どんな子だったの?」
「霧咲さんっていってね、4月に入ったばかりの新人の女の子なんだよ。すごく仕事が早くてびっくりしちゃったよw w」
「・・・霧咲…?・・・女の子だったんだ…
あなた浮気しちゃダメだからねw」
「こんな幸せな家庭があるのに、するわけないだろ〜wそれに10歳も年下の女の子に手なんか出さないよw wおっさんだって、見向きもされないさ。」
「…ふーん、どうかしらね〜w」
「あー、でも今度お昼をご馳走する約束したんだ。これは浮気じゃないよね?」
「あら、おモテになることでwでもちゃんと言ってくれたら、そんなことでいちいち目くじら立てないから安心して。」
「そっか、信用してくれてありがとね。じゃあお風呂行ってきまーす!」
「パパ〜、早く行くよー!」
「はーい、了解!よし、春香行こー!」
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