ホットケーキに大さじ3杯の砂糖が私の帰る場所

カエデネコ

ホットケーキにお砂糖3杯

 亡くなった祖母は小学校から帰るといつもおやつを出してくれた。ご飯よりおやつが大好きな私のために。そのせいで食の細い私はさらに細くなって夕食を食べれず、叱られることが多かった。


「今日はホットケーキ焼いておいたよ」


「ホットケーキ!?うわぁ……おばあちゃん、シロップは?」


 ふっくらとしたおばあちゃんはハハハと朗らかに笑うと余計にふっくらとして見えた。


「そんなんつけなくていいから、食べてみ?」


 甘いシロップもバターもないなんて普通のパンとおんなじじゃない?と思いながら、ひとくち食べてみる。口の中にフワァと甘い味が広がる。


「あれ!?甘くて美味しい!」


 そうでしょう?と満足そうだった。不思議だなぁと思いながら、モグモグと完食し、また作ってねとお願いした。


 その後、母に『おばあちゃんが作ってくれた甘いホットケーキ食べたい』とお願いしてみた。フライパンで焼くから端っこもカリカリしてて美味しかったのかな?と小学生なりになぜ祖母のホットケーキが美味しいか?を考えてみたのだった。


 でも答えは単純だった。


「あれはね。お砂糖がはいってるの。ホットケーキミックスにも砂糖がはいってるのに、さらに砂糖大さじ3杯ドッサリいれてるのよ」


 子どもの健康を考えるとあまり褒められた食べ物ではなかったらしく、母は顔をしかめていた。


 それでも私はその味が忘れられなくて、大人になってから自分で作ってみた。


 だけどどうしても祖母の作ってくれたホットケーキの味にならないのだった。

  

 たったお砂糖3杯入れるだけで、あの時の祖母の味に帰れると思っていたが、それは難しいことなのだと後から気づいた。


 あの日、ただいまと帰ってきたランドセルをかついだ私に言いたい。味わって食べておきなさい。もう祖母の作ってくれたホットケーキは食べれないのだからと。

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