探索だと思ったか?ただの散歩だ

聖域結界かぁ…なんか大層な名前ついてるやん?

確か世界樹を中心にして聖域作ってあるからって言ってたよね。

川渡った向こう側の門柱?あそこまで結界って事か。


んで、川向こう側に結界の目印の柵が設置されとる、と。

この橋渡れば何処かにいけるんか?


また、じーっと見つめていると


『この先タクステン、ファーマシィの街 領主タクステン伯爵の治める街のひとつ』

『農業が盛ん』


と出た。

ファーマシィ、そのまんまや(笑)

街がある事がわかればいいや。

次いこ次。


しかし橋周りは、かなり鬱蒼としていて

橋が生い茂る木等に隠されているように見える。

ふと気付く。

橋の袂に草の無い場所がある。

まるで整地したようにキレイに均してあるのが分かる。


…まさか…


駐車スペース?!


確かに家から此処まで道に沿って歩いても、ばーさんの小幅徒歩で30分近くかかった。

って事は…元の世界での生活を考えると、…最寄り駅まで徒歩20~30分だった。

って事はキロで言うと…確か駅迄1.5キロだった。

それよりちょいと歩いたから2キロ位か。

2キロ歩いて買い物もしんどいな?

車なら5分強か。

最低でも4キロは買い物荷物持ち歩かなきゃならん訳だ。

やはりわたしの軽バンは必要だったな。

橋渡った先の街までの距離もわからんし。


帰ったら車の確認してみなきゃだな。

ガソリン無いし。 

この場合、ガソリンの替わりに魔石だとか魔素だとかってのが定番だし。

車内のモノもそのままだったら、農家道具入れっぱなしだったから

なんか使えるべし。


うんうん。


因みに徒歩2分程度のコンビニにも車出しちゃう田舎者だから歩くの面倒。

特に歳をとってからは、スーパー買い物だって決まった経路歩いて決まったモノしか買わない。

農家のばーさんやってた時は、歩くには歩くがそれよりも

腰曲げた作業の方が辛かったからな。

で、やはりこれは駐車スペースだね。


ありがとう女神さま達。


帰ったらお供えものするよー


............


とりあえず道沿いを歩く事を続行する事にした。

橋の場所から道に戻って先に進む。


橋周りもそうだったが、この道は森の中の道みたいな感じだね。

暗くはないけど、何か隠れていても分からないかな。

でも、結界内だから大丈夫でしょう。


柵を右手に見ながら先に進むと、ちょいと開けた場所に出た。

道は続くが、…季節感無視な風景に出遭った。


道を真ん中にして右側に軽く土地が上がっている?

小山だよね。

んで、交差点みたいに道が十字路で区画されてる。

右側にある小山みたいな土地には、キレイに並んで蜜柑の木?がある。

橙色の果実がたわわに実ってる。

小山には蜜柑の木?4本の他に柿の木がある。

蜜柑は道の右側。

柿は左側。

蜜柑だったら恐らく温州蜜柑だな。

自分の好みだし。

柿もちゃんと実ってるが、平柿とふで柿が2本づつ。

たぶん、ふで柿は渋柿。


でメイン?交差点の道の左側。


うーん、コレは林檎の木かな。


ちゃんと赤と黄色がある。

赤がふじ、かな。

で黄色が…王林、だといいな、と希望的観測。


そして梨、豊水である事を祈る。

と、棚もちゃんとしてある葡萄。

しかも大好きだが、高くて拝むだけだった巨峰とマスカット。


ラノベでは桃が定番だが、此処にはない。

なぜならわたしが余り好きではないからだ。


この異世界の場所はわたしの妄想を再現していると言っていた。

だからわたしの欲しいモノだけがあるんじゃないかな、と思ってる。


ありがたい。

お供え奮発するよ!


しかし

食べてみたいが収穫道具がない。

どうしたもんか、と腕組みして考えていると

果物の木達(!)がサワサワと動き出した。

風はない。

なのに動く。


きもい

触手みたいな動きだな??


ピタリ


ウネウネサワサワと動き出していた枝「達」が止まった。

そして、プルプルと枝先を空に向けて震わせた。


あ、ごめん

触手みたいって思ったから?きもい、って思ったから?

ごめんよー


心なしかしょんもりした雰囲気を醸し出しながら、葡萄が着いている枝が

林檎が生っている枝が、梨が生っている枝が、蜜柑が、柿が・・全ての枝が交差点の真ん中に立っているわたしに向かって伸びてきて


ポトリポトリと丁寧に足元に落ちていく。


くれるの?

ありがとー美味しそうー持ってきてくれるなんて収穫に便利ー


枝達はクネクネと悶えながら元に戻っていく。


しかし困ったな・・手ぶらだ。

伊藤さんとスマホポーチしか持ってないぞ?

どうやって持ち帰ろう?


伊藤さんは、足元に置かれた果物たちをつついているし。


すると葡萄の枝(蔓か?)がニョロリとやって来て肩から斜め掛けしているスマホポーチをツンツンとつつく。


これ?

と、ポーチを掲げると枝(蔓)は、器用にチャックを開けて足元の果物たちを持ち上げてポーチへと運ぶ。


あ、むりむり

スマホしか入らない・・よ・・?

・・・あれ?・・・

なんで林檎がポーチに入るのかな?

蜜柑も柿も梨も入ったよ?

そして最後に葡萄?あ、潰れちゃうから?

気遣いありがとーね。


まてまてまてまてまてっっ!


何故入る!!


ポーチをジッと見る。

おらおら説明出ろ!


ほよん


出たよ画面。

で?なんだって?異世界お得意のアレかい?


『異世界のスマホポーチ型マジックバック 軽量化収納、時間経過軽減あり、収納量限度あり』


・・・・ふーん・・・・


御都合主義万歳ってトコかな。

って事は、自分が持ってきたモノ達もちゃんと調べた方がいいよね。

うん。


さ、次つぎ!

グルッと一周回っちゃいたいから急がなきゃ。

キョロリと見渡して家の位置を確認する。


んー・・家の裏手位なのかなー・・半分位歩いたのかな?

先は長いなー

寄り道したり休憩したりで2時間程は歩いたのかな?

結構広いなぁ、結界の範囲。

疲れたから此処で休憩しよう。


地面に座り込んで、ポーチにしまった筈の葡萄を出そうかな。

ん、これはどうやって出す・・?


葡萄ーマスカットの方ー出ろー出ろー

出た。

葡萄も出たけど画面も出た。

中に入っているモノのリストだ。

便利ー


_____________________



探索という散歩の再開だ。

果物山を抜けた先は森の中だった。

今までまっすぐな道だったけど、森の中は木に合わせて緩くカーブしたりしてる。

所処花が咲いてたりして、異世界感満載。

こんな場所には薬草とか野草とか色々あるんだろうなー

また改めてコッチに来よう。

散歩するならコッチ側がいいな。


果物取りに行く時は車で行けばいいよな。


道沿いに歩いていると森を抜けて、その先は家の前に続く道だった。

家に前にある道より先は、少し足の長い草が生い茂りそのまた先には大木があり、その先に柵があった。

そして、その向こう側は切り立った崖だった。


柵から見下げた崖の下には街があった。


・・・え、アソコまで行かなきゃ買い物できないのかぁ・・


ちょっと絶望した。

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