神様ツアー

甘ったるい喋り方の『人』は、うねる金髪、グリーンな瞳、ぷるぷるとしたピンク色下唇。

ボン、きゅっ、ボン!としたナイスバディな『人』で。

たぶん『人』

キラキラして神々しいけど『人』


「どちらさんで?」


宙に浮き周りにキラキラとしたエフェクト撒き散らした女性に声をかけた。


「どぉも。わたくしはこの世界の女神を拝命しております、シェラサーザと申します。」


空中で器用に正座をして、三つ指ついて挨拶した女神。


「…ご丁寧にありがとうございます。わたしは境ひかる、60歳です。」

「突然此処に来たものですから…」


女神はガバリと顔を上げ、わたしの目の前にズリズリと空中を移動してきて


「突然ですが、ひかるさん、異世界で第2の人生を送って貰おうと女神のギフトを授けました!」


女神様の話を聞くと、どうやら天界の人達の娯楽の中に下界観察があって、1人の(一柱の)神様がわたしを気に入って観察していたそうだ。

で、最近わたしが離婚して楽しそうにしていたので、残りの人生をもっと楽しんで貰たくてこの世界に喚んだ。と。


わたしの脳内ダダ漏れな妄想を実現化するべく、部下の女神様やら眷族達総動員して

妄想通りの環境を整えたらしい。


その成果がこのタイニーハウス。

及びその周辺。

因みに、住まいは適当に換えられるらしい。

しらんけど。


外観は吹けば飛ぶような板張りのボロい小屋だが、内装は最新設備が揃ったハウス。

ハウスからちょっと離れた場所には巨大な樹。

世界樹というらしい。 

この樹を中心に「聖域結界」とやらが作動していて、悪意等持って此処に近づく人達は結界に弾かれるそうだ。

結界の位置に柵をしてあるから、後で確認してくれだってさ。


そして、テンション高めな女神様は、どうやら妄想を実現する為の陣頭指揮をとっていたらしく、ムフンムフンと鼻息あらくルームツアーをしてくれた。


「まずはコチラです!」

「玄関は履物脱いで上がる日本仕様にしました!」

「上がって右手をご覧ください。造り付けの収納ソファです、ベッドとしてもご利用できます。」

「これ!これご覧ください!スプリングです!地球のヤツ再現しました!」

「マットより少し大きめに作りつけたので、マットがかぶらない部分に収納スペースに降りられる階段を作ってあります。」

「収納スペースは是非是非確認をしてください、自信作です」

「日本の貴方の部屋にあった買い置き商品等持ち込みました!」

「あ、これ。貴方のお布団と毛布…」


女神が持ち上げた毛布を見た伊藤さんは、わたしの背中から飛び降りて

毛布の上にダイビング。

すかさずグルグル呻りながらフミフミを始めた。


「えー…と、あとコチラ、キッチンです」

「シンクは小さいですがコンロは2口用意しました。」

「水と火は、魔石使用ですが…此処の引き出しに魔石を入れて下さい」

「この大きさ魔石で1年持ちます」


蛇口付近にある窪みと、コンロ近くにある窪みに青い魔石と赤い魔石をセットする。


「食器は…木製しかなくて申しわけありません」

「そして薪ストーブです、薪は此処に置いて火種は火魔法で。」

「あ、魔法あります、練習してすごすのもいいかもです。」

「火魔法習得するまでは、向こうから持ち込んだ荷物の中にチャッカ〇ンがありましたね、ソレ使っててください」

「ストーブ横の階段上ると、上はベッドルームとクローゼットがあります。」

「ベッド下のスペースに、トイレとシャワー室があります、」


はぁはぁ、と息をきらし

掻いてもいない汗を手のひらで拭うふりをすりる。


わたしは喋り続ける女神の後ろを、フンフン頷きながらハウスの中を見て回った。


いい!タイニーハウスいい!


壁際に造り付けられた折り畳み式のテーブルを出し、どこからか出したコーヒーを勧められた。


「えー…説明は以上です。」

「なにかご質問ありましたら、女神像に祈りを捧げて下さい」


女神像?


「こちらを」


空中から出した白い女神像を渡され


「これ、何処かに飾っておいてくださいね」


何から何までありがとう?

対価は何が必要なのかな?


「対価は…この世界で聖女として存在してください。」

「聖女は存在するだけでいいんです。」


小説なんかだと、魔物退治だとか浄化とかするみたいだけど?


「いえ、世界樹と聖女が居れば浄化も必要ありません。

聖女の力が必要になる程の瘴気が溢れるのは、スタンピード位です」

「それに、聖女は1人ではなくて各国に1、2人位は存在していますから」


それなら…いいかな。、なにもしないよ?


「えぇ、貴方には1人の時間を満喫して欲しいだけです」





そして、わたしの異世界生活が始まった。



あ、女神のギフトってなんだったんだろう?

聞くの忘れた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る