聖女ですか?なんにもしませんけどいいですか?

旅鴉

玄関開けたらそこは異世界

玄関開けたら5分で『異世界』


ホンマか?


異世界転移(ファンタジー)なんざ若い子にしか需要ないかと思っていたが

こんな婆さんも転移(ファンタジー)されてしまうとは!


私、境 ひかる 同年とって60際。

この度、目出度く自己愛満載のワガママ旦那と離婚が成立し

1人暮らしを初めて早2ヶ月。


60歳での離婚は、そりゃあ周りからの反対があったけど。

もう少し我慢しろ、だとか、今更離婚なんてみっともない、とか。

離婚したって、アパート借りるにも苦労するよ、とか。

ま、確かにアパート借りるには物凄く苦労したけどね。


独居老人、って言うのね。

60過ぎると。


老人かぁ…年齢だけ聞くと年寄だし

実際、孫もいるからばーちゃんなんだけどね。


朝昼晩ごはん作って

農家だから、24時間一緒だし。

お風呂とトイレと買い物だけが1人の時間。


独身の頃が懐かしい。

1人暮らししたい。

なんにもしたくない。


そんな感情に苛まれて、ほんのちょっとの諍いで勢いつけて離婚した。


はぁ、…楽。


生活苦しいけど、節約楽しいし。

電気点けっぱなしの旦那の後を追い回して消して歩かなくていいしね!

アパート借りる為に、不動産勤務してる娘に無理言って保証人になって貰ったし。


なんとかかんとか生活基盤出来てきた。


今日は、世話になってる娘の家に「おさんどん」しに行くつもりで

リュックにパンパンに色んなモノ詰め込んで、両手に持てるだけ荷物を持って

背負ったリュックの上にリードを着けた飼い猫(名前は伊藤さん、オス、たぶん3歳位、元野良猫、色は黒)が鎮座し、


さあ!いざゆかん!


てな事で、玄関開けたらそこは『異世界』だった訳だわ。


目の前は、アパートの廊下じゃなくて鬱蒼とした森、という程のものではなく、ちょっと開けた草原。

その向こう側に、光る水が見える。

川かな…森の中、とも言えない微妙な感じの山の中って感じ。


出て来た筈の玄関を振り返ると、そこにあった筈の2ヶ月親しんだアパートは無く、知らない小屋がある。


…どないしよう…


途方に暮れて、アパートの替わりに現れた小屋を見る。

外観はログハウスっぽい。

煙突がある、窓もある、ただしガラス?が磨りガラスよりマシな感じ。

周りを見渡しても、この小屋と林(森)と草原?広原?後はたぶん川。


鳥の囀りは聞こえる、気温は寒くない、呼吸は出来る。


うん、よし、生きては行けそう。


とりあえずは、背負ったリュックと両手の荷物を下ろしたい。

あと、伊藤さんも。

今自分が出て来た『筈』の玄関を開ける中に入る事にした。


一瞬脳内パニックに陥ったが、此処に立ち尽くしていても仕方ないし

なにより、疲れた。


お邪魔します


入ってビックリ


これ。タイニーハウスじゃん!

憧れの!

動画サイトで腐る程眺めてたタイニーハウスじゃん!

1人になりたくて、でもなれなくて、だけど1人ならこんな家ならいいよね?なんて妄想しながらな見てたハウスじゃん!

しかも、1番気に入ってたハウス!

何故に!


『ご希望どうりですかぁ?』


何処からか甘ったるい喋り方の声が聞こえた。


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