クモの子アリク
釣ール
第1話:大多数の幸せに俺達は選ばれなかった
ポスターにフ○〇クしてやったよ。指で。
どんな一日だよまったく。
「ふう」
息をはくと白い息が
もう12月か。
―
奇跡だったが身体になにか大きなケガはなかった。
ただし俺は医者の勝手でメンタルに異常があると決めつけられて運び込まれた。
今考えればあれが医者だったのか分からない。
他の医者とちがった
運ばれた場所には他にケガをした若者達がいて、ふるえていた。
「ここに運び込まれてほとんど
「精神になにかあるのかも。もっともどんな理由であれ私たちはここに運ばれる運命だけど」
俺は彼らの言っている内容がはじめは理解できなかった。
「俺はどこも異常がない! それなのにあいつらは俺のメンタルに何かあると決めつけている!」
すると女子高校生くらいの人が俺の肩をさわる。
「肩のこわばり方が一般人とはちがう。格闘家? あなたは?」
彼女は一発で俺が過去で何をやっていたかみぬいた。
「怖いなあ。じゃあ俺、メンタルになにかあるのかな」
そばでケガをしている若者が
「女の子に気を
なんだか嫌な空気だ。
はやくここから出してほしい。
「さあ医者の
いつの間にか彼女は消え、俺たちの前にアラサーらしきおっさんが二人現れた。
「俺たちに何をするつもりだ!」
他のケガをした若者達に変わって俺はおっさん達に立ち向かった。
「俺たちだけがやっと楽に金を稼げる
「クズかあんたら。それと俺たちをここに運んだ理由はなんだ?」
アラサーたちはこの世が存在しない幸せを求める
問題はそれだけの人間が医者からなにか任せられるわけがないってところ。
「つい最近
そこから俺の記憶はなくなっていた。
気がついたら俺はメンタルケアをさせられていて、半年間の治療ですんだ。
あの時運び込まれた若者達について聞いても誰も答えてくれない
掘り下げたらまた
そして現在。
12月になって
そこには鏡がなかったので公園まで歩いてトイレの鏡を見た。
見た目には変化がない。
それなのにまるで何かが自分の中で動いているような感覚はなんなんだ?
「
聞いた事がある声だ。
しかも半年前に。
「君は……あの時の女の子?」
「そのせつはどうも。インターネットで格闘技を初めて観て、あなたを応援した時からただものじゃないと思っていたけど。まさか半年で外へ出られるなんて」
彼女は一体なんなんだ?
しかもこんな公園にやってくるなんて。
「受験の悩みがあって。高校生活最後になるからバイトしていたらあなたが事故にあって例の場所で出会った。そこまでは記憶はある?」
「ある。だから君と話せてるじゃないか」
「よかった。受験の悩みを頼もしい格闘家のあなたに聞くそれまでに、今あなたが感じている異変について話そうかなと思って」
彼女は2024年で高校三年生の女の子。
軽いバイトのつもりでケガをした若者達を集める仕事を二十代後半のおっさん達にたのまれたらしい。
若者達を集めた理由はおっさん達の仲間にいた医者が生きづらい社会を変えるためにSNSに近いブログで
「インターネットでは若者のためにとか、お年寄りのためにとか、労働が政治がどうのとかよくみんながあえて口にしないことを解決策があるかのように文章を書いて動画配信もしている勢力に過ぎなかった。でも私はそんなアラサーたちの
彼女は俺の前で涙を流し、それでも無表情で話を続けた。
「不満はあった。でも私はお母さんを支えたくて
俺は
「君はあのおっさん達の部下で、俺が今感じている異変の正体を知っている。なら君は俺が守る。異変を知りたいからじゃない。君より1年先に産まれた男として話を聞きたいから」
彼女はレストランであまりメニューをたのまず、コーヒーをすすりながら話をしてくれた。
アラサー達が俺達にやっていたのは
自分達が楽をするために、自分達に
「チラシ子?」
「
『チラシ
どうやらあの時に運ばれた場所で話した若者達は今、『チラシ
そして俺も。
「どうしてこんなことを?」
不景気だから起こってしまったのか。
結局人間が考える幸せなんて誰かに責任をおしつけ
こんなひどい実験までして。
「チラシ
そこまで打ち明けても彼女はあのバイトを続けるかもしれない。
せっかく俺のファンが出来て、しかも女子高生。こうして相談までしてくれているのに!
誰かの視線が気になるほど自分がもうこの世界では怪人なのだとウワサされている気がした。
半年間の回復は奇跡的なものではなくてただの計画。
チラシ子として何か行動をすれば俺は
少ししか話していなくて覚えている記憶も少ないな仲間達でさえも。
「俺がチラシ
チラシ
俺もその一人というわけか。
まさか上京してこんな事件に巻き込まれるなんて。
人間としての
──弟はつらいよ
ほぼ行方不明になった双子の兄、
クモびとはフィクション……
ケガの治療から帰ってきた
それから行方をくらませていて、警察だけじゃ人手が足りず探偵にまで助けを求められていた。
クモびと事件が認識された2024年10月から12月現在。
他の情報屋から目をつけられているインターネットで活動を続けている
そして半年前から連絡がない兄・
「絶対関係ないって確信持つまでお前の無実を証明するからな! 俺たち仲は良い双子のはずだからさ」
頼む。
神や仏なんていないならそれでいい。
でも神や仏が元人間なら俺の予感を外してくれ!
2話へ続く。
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