THIS TIME!!~チートスキル【根源】を得た俺は異世界で無双ハーレムを繰り広げる。

四季 訪

第1話

 「やぁ!元気かい!?」


 うるさい声に目が覚めた。


 は?なんだここ


 俺が起きたのは真っ白な何もない空間。


 俺の部屋ではなかった。


 そして目の前にはこれまた真っ白な人型のシルエット。


 え?保護色やめて?


 見失いそう


 「あぁ、ごめんね。影の薄い人間で……」


 白い影がしょんぼりとした。


 いや、別にそこまで言ってないけど。


 てか、心読まれてる?


 「ここは私の特別な空間だからね。そのくらい可能さ」


 とんでもない事を言い始める影に俺がうげっと顔を顰めた。


 プライバシーもあったもんじゃない。


 あっ、でもしゃべらなくていいの楽かも。


 「……君も中々肝が据わってるね」


 どうも。


 それでなんのよう?


 「ナチュラルに心で会話しようとするじゃないか……だがそれも面白い!!」


 なんだこいつ。


 さっさと要件言えよ。


 「早速だけど、君にお願いがあるんだ」


 お願い?


 「そう!今から君には異世界に行ってその世界を救ってほしいんだ!!」


 テンプレ乙。


 俺も遂にこんなくだらない夢を見るようになったのか。


 自分の欲求不満さ加減に嫌気が差してくる。


 俺がそう思っていると目の前の影がノンノンと言った感じに指を振ってくる。


 なんかうざい。


 「これは夢なんかじゃないさ……明日ぬくい 蓮君」


 な、なんで俺の名前を!!


 って、まぁ俺の夢なら当然か。


 びっくりした。


 「夢じゃないんだけどなぁ。まぁいいや。夢だと思うならそう思って貰っていても大丈夫だ」


 ふわぁ、眠い。


 あれ?寝てるのに?


 まるで寝起きのような感覚に一瞬戸惑うも、まぁ、これも夢かと自分を納得させた。


 で?そのまま異世界に行けって言うの?ただの凡人の俺に?


 自慢じゃないが俺は別になにか特異なことがあるわけでもなし、普通の地球の一般人だ。


 自分の世界の中でも人と比べて優れたものがあるわけでもないのに、異世界を救えと言われてもハードモードすぎる。


 それなら死にゲー初見ノーデスクリア配信の方が望みがありそうだ。


 「安心してよ。君には特別な才能がある」


 「才能?」


 初めて声が出た。


 それは俺がこれまで望んできた言葉だからだ。


 なにかをやり始めても自分にはその才能が感じられず、何も長続きしない。


 結果的に何か得意なことも、人より優れたなにかを得られずにこれまで生きて来た。


 無意識に自分と誰かを比較して、自分が劣っていると自覚して。


 特別になりたいと心の中に秘めていても、比べられるのが怖くて、自分は普通の人間だと口にして、その枠組みの中に逃げ込んだ。


 その枠組みの中にいれば、特別な才能も必要なく、特別な努力も必要ない。


 無駄に自尊心を傷つけられずに済むそこの居心地はとても良くて……劣等感に苛まれ続けた。


 心の中ではそこから脱却したくて、何かを始めては自分の才能に手応えを感じることが出来ずにまた戻る。


その繰り返しの中にあった俺の人生。


 これが夢の中であっても、心にじーんと来るものがあった。


 「嬉しそうだね。喜んでもらえて嬉しいよ」


 ま、夢でもそう言って貰えて嬉しいよ。ありがとな俺。


 「そこは私じゃないの?」


 俺の夢なんだから俺に礼を言うのは当然じゃない?


 それか俺の欲求不満に?


 「はははっ。確かに言われてみればその通りだ。存外面白いね、君」


 そりゃどうも。


 「まぁ、これが本当に夢じゃないってことを後から知って私に感謝したくなるさ」


 まだいうか。


 ラノベやネット小説を良く読む俺でも現実と妄想くらいの区別はつく。


 こんなとんでも空間、現実では有り得ないし、テンプレすぎる。


 ここまでこてこてのテンプレなら、俺の読んできた小説の影響って考えるのが妥当だろ。


 「まぁ、それは私があえて……まぁいいや。それで」


 夢だとは理解しているが、それでも俺はこの状況を楽しまないほど無粋じゃない。


 「聞かせてくれよ。俺の才能を」


 「お、ノリがいいね。嫌いじゃないよ。そういうの」


 いいから言えよ。


 「せっかちだなぁ。おっほん」


 影がわざとらしく咳払いをしつつ話を続ける。


 「君にはスキルを受け入れることの出来る才能がある。それも特別大きなスキルをね」


 スキルキターーーーー!!


 やっぱりテンプレ最高っすわ。


 だって分かりやすいもん。


 「君に授けるのはスキル──【根源】」


 【根源】?


 なにその厨二ワード。


 好き。


 「私もこういうの好き」


 いいよお前のは。


 どうせ俺の妄想なんだから、そう言うだろお前も。


 「はぁ、人格の否定。酷いなぁ」


 ごめん。


 それで?


 そのスキルの説明を求む。


 「このスキルは無限の力でスキルを次々と開発、発展させていく、複合型のスキルツリー系のスキルさ!」


 なにそれ最高過ぎるんだけど。


 「でしょ?無限の可能性を秘めたスキルさ。まぁぶっちゃけチートスキル。君凄いよ」


 まじっすか。


 なんか照れるな。


 まさか俺にこれだけの才能が秘められていたなんて。


 これが夢じゃなければ最高だったのに。


 「直に本当の悦びに変わるさ。明日ぬくい 蓮」


 白い影が両手を広げる。


 そして自分の中にじんわりと広がっていく不思議な熱。


 「さぁ!君の英雄としての門出だ!その力を思う存分異奮い世界をすくってみせるのだ!!──────────────」


 大きな声を張り上げる白い影。


 その声がだんだんと遠ざかっていくのを感じて、俺はこの楽しい夢の終わりを感じ取った。


 「──────────────さぁ、いってらっしゃい。明日 蓮。私に君の活躍を、物語を見せてほしい!楽しみにしているよ。私の─」


 声は途切れ、俺の意識もそこで途絶えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る