オーバードクター4
ひとまず研究室に稲沢を連れてきたはいいが、どうしたものだろうか。何か食べさせなくては多分また行き倒れると思う。だから料理でもしようかとは思ったのだが……。
「あの、稲沢さん。何か食べたいものはありますか?」
一応本人の希望を聞いてみなくてはいけないと思いたずねるが、すぐに作れるものだろうか?
「唐揚げ! ハンバーグ!!」
うーん……。空腹なので色々思い浮かぶのだろう。歩は少し考えたが、揚げ物やハンバーグを作るのは手間がかかってしまう。それに、肉類の用意が大変だ。唐揚げは材料があれば揚げるだけなのだが、ハンバーグは少々玉ねぎを炒めたりする。そんな準備をしている間に、稲沢は空腹でまた倒れてしまうのではないだろうか。
「もっと手軽に食べられるものがいいのでは? ガッツリ系のものを食べたい気持ちはわかるんですけども……」
歩がそう言うと、桜子さんは聞いた。
「稲沢さん、理工学部は忙しくてろくに食べていないって聞いたんですけども、きちんと三食食べていましたか?」
「……三日ほど絶食している」
「あの、人間ってそんな期間絶食できないですよ」
歩が当たり前のことを言うと、稲沢もうなずいた。
「……だよね。ともかく腹が空きまくっているんだ。何か食べさせてくれ」
空腹にも関わらず、財布を家から持って出ないところは判断力が低下しているのだと思う。
「すぐ食べられるものがいいよね。桜子さん、研究室に食材ってお米だけ?」
「そうですね。研究費をもらってから食材の買い出しをしないといけないなと思っていたので」
「そりゃそうか。じゃあ、研究室に食材はないのか……どうしよう?」
少し考える。研究費を申請してから承認するまで費用はない。だが、すぐにあることに思いついた。
「特任教授って大学の講義は受け放題なら、設備も使い放題?」
「はい!」
ということは、今から学食へ行って何か食材をくれと言えばもらえるのではないだろうか。食材を買うお金はないけども、学校の『設備』は使い放題なのである。学食の食材もある意味『設備』と言えなくはないだろう。
「学食に行って、何か余った食材をもらってこよう。できれば手軽に加工できる食材がいいんだけど……」
「何かありますかね?」
「行ってみないとわからないかな。稲沢さんはここで待っていてくれますか?」
「うん。あー……腹減ったぁ……」
「できるだけ早く戻ってきますね」
早めに何か食べさせたいところではあるけども、いきなり大量にガッツリ食べさせても多分体に負担がかかるだろう。多分ではあるけども、揚げ物だと油っぽいし、もっと胃にあまり負担のかからなさそうなものがいいだろう。
桜子さんを連れて、歩は学食へと急いだ。
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