第2章 第6話:「変わり始めた日々」

月夜が続くある晩、彩花は星空カフェに到着すると、いつものように静かな空気が迎えてくれた。店内には数組の客がいて、みんなそれぞれにリラックスした時間を楽しんでいる様子だった。だが、彩花はどこか心が落ち着かない。最近、自分の中で何かが変わり始めていることに気づいていたからだ。


「こんばんは。」

店主が明るく声をかけてきた。


「こんばんは。」

彩花は笑顔を返し、カウンター席に腰を下ろした。店主はすぐに星空ブレンドを用意してくれるが、その日は何となく違う空気が流れていた。


「最近、どうですか?」

店主が静かに尋ねてきた。その声には、普段よりも少し優しさが込められているように感じた。


「ええ、少しずつ変わってきている気がします。」

彩花は少しだけ言葉を選びながら答えた。最近、仕事もプライベートも少しずつうまくいくようになってきたが、それと同時に心の中で何かが大きく動いていることを感じていた。


「それは良かったですね。」

店主がにっこりと笑う。その笑顔には、ただのカフェの店主以上の何かが感じられる。


その時、隣の席に座っていた尚人が声をかけてきた。

「彩花さん、最近よく笑っている気がしますね。」


「本当ですか?」

彩花は少し驚きながらも、心のどこかでその言葉に少しホッとする自分がいた。


「ええ、そうですよ。何かいいことでもあったんですか?」

尚人は優しく微笑んだ。その笑顔には、何かあたたかいものが込められていて、彩花は思わず胸が温かくなるのを感じた。


「実は……」

彩花は言葉を選びながら、少しだけ心の中にある変化について話し始めた。星空カフェに来るたびに感じる心の軽さ、それが自分を少しずつ変えているのかもしれないと思うようになったこと。


尚人は静かに聞いてくれて、時折うなずきながら、最後に言った。

「それが、星空カフェの力かもしれませんね。自分に素直になれる場所、そういう場所があると、日々がもっと輝きますよ。」


その言葉に、彩花は心がじんわりと温かくなるのを感じた。これからの自分が、もっと素直に、もっと前向きに生きていける予感がした。


「ありがとうございます。」

彩花は静かに言い、空を見上げた。今、彼女の心には確かに変化が訪れている。それは小さな一歩かもしれないが、このカフェで過ごす時間が、彩花にとってどれほど大切なものになっていくのか、まだ彼女は知らなかった。


ただ、確かなことはひとつだけ。


星空カフェで過ごす時間が、これからの自分にとって欠かせないものになるということだった。


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