第1章 第2話:「特製ブレンド」
カウンターに腰掛ける彩花の前に、店主が一杯のコーヒーをそっと置いた。白いカップからは、湯気とともに濃厚な香りが立ち上る。
「どうぞ、星空ブレンドです。」
彼の低く穏やかな声が耳に心地よく響く。彩花は一瞬ためらいながらも、カップを手に取り、そっと口をつけた。
一口飲んだ瞬間、驚きが彼女の顔に浮かぶ。苦味と酸味が絶妙に調和し、ほのかな甘さが後から追いかけてくる。思わずもう一口飲むと、じんわりと体が温まるのを感じた。
「すごく美味しい……」思わず声に出してしまうと、店主は少しだけ微笑み、「疲れている時にぴったりの配合なんです」と答えた。
「こんなに美味しいコーヒー、久しぶりに飲みました。」
自然と会話が始まる。彩花は、彼の落ち着いた物腰に不思議と安心感を覚えた。名前も知らない相手なのに、この空間には重苦しい沈黙や無理な気遣いがない。ただ静かに、心地よい時間が流れている。
「こんな遅い時間まで営業してるんですね。」彩花がそう尋ねると、店主は星空のような天井を見上げながら答える。
「星が見える時間帯にだけ開けているんです。この場所が、誰かの癒しになればと思って。」
その言葉に、彩花は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます