女の顔は冷たい
川詩夕
氷のように冷たい体温の女の記憶
目が覚めると、見慣れた自分の部屋でベッドの上だった。
枕元に置いあるデジタル式置き時計に目をやると時刻は深夜二時。
隣で女が微かに寝息を立てて眠っている。
枕の位置から下側へとズレて眠っている為、顔は見えないが誰なのか理解はできる。
四年前に別れた女だ。
髪の質、身体の大きさ、吐息の音。
どれもこれも未だ鮮明に覚えている。
四年前に別れた女が寝返りをうつと、六年前に別れた女へと変わっていた。
髪型、体臭、身体の質感。
当時の記憶が瞬時に想起する。
女は眠りながら脚を絡ませてきた。
視線は移すと女の頭頂部が丸見えとなる。
髪に少しばかり白髪が混じっている。
六年前に別れた女が、現在付き合っている女へと変わっていた。
女の仕草に意識を移される度、隣で眠っている女に変化が生じている。
寝転がったままの状態で女の身体へ触れると氷のように冷たかった。
冷え切った女の体を抱き寄せて、両手で顔を挟み込むような形を取った。
首を強引に動かして目の焦点を自分の瞳へと無理矢理に合わせる。
現在付き合っている女が、昨日初めて会った夜に抱いた女へと変わっていた。
苦悶の表情で硬直した女を抱き寄せて接吻を交わす。
生きた女よりも、死んだ女の方が格段と美しく感じる。
首を絞めて殺害いしたのは正解だった。
女を殺したのはこれで四度目。
女の顔は冷たい 川詩夕 @kawashiyu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます