シンヤの家でお泊まり会 後編(真昼視点)

*** 真昼視点 ***


「2人して、随分と長風呂を楽しんだ様だな……」

「「あははは、……ごめんなさい」」


 あれから1時間ちょっと、私たちはシンヤのお家に居ることも忘れ、湯船に浸かりながら盛り上がってしまった。


 女の子のお風呂は長いとは言え、流石に入り過ぎたので、慌ててお風呂から出て、着替えたのは良いのだけど、リビングにはニッコリしながら仁王立ちしているシンヤがいた。


「はぁ……、まぁいい。その様子だと、サッパリした様だしな」

「もう、バッチリと!」

「えぇと、……えへっ!」


 可愛く言ってみたけど、ペチンとみーちゃんと私にデコピンが飛んできた。とても痛いけど、シンヤからやられたと思ったら、何だかいい気になる。



「取り敢えず、風呂の水、入れ替えるか……」

「私たちの湯で──、待って待って! デコピンはもう十分だから! あいたぁぁっ!!」


 みーちゃんは学習しないのかしら。それよりも、みーちゃんはシンヤに何を言おうとしたのかしら。……ゆで? 分からないわ。


「真昼はそのままでいてくれ、頼むから……」

「シンヤとみーちゃんだけ分かるのは不公平よ」

「まひる、知りたい? さっきのは──、ごめんなさい! ごめんなさい! もうデコピンはいやぁ! あいたぁぁっ!」

「反省しろぉぉ!」


 全く反省していなかった。


「真夜、ほんとお前、爺さんそっくりだよ」

「マジでやめてくれ!」

「真夜、女の子にそう何度もデコピンはダメよ。せめて頬を引っ張るくらいにしなさい」

「なるほど……、それもそうだな」


 それはそれでみーちゃんは喜びそうだ。私もやられたら喜んじゃうと思う。


「まぁいいや。それより俺の寝間着、中々に似合ってるな」

「え、ほんと? えへへへ、真夜君の匂いはしないけど、ぶかぶかのモコモコで可愛いよね」

「そうね、まさかシンヤにこんな趣味があったなんてね」


 私たちが着てるのはクマさんのモコモコした寝間着だった。こんなのを昔使ってたなんて、シンヤが可愛すぎるわ!


「一時、雫に触発されて買ってたんだよ。よく3人でお泊まり会してたからな」

「なるほどね」

「お姉ちゃんたち、可愛いよね。お兄ちゃん!」

「そうだな」

「「可愛い……」」


 シンヤからそう思われてるだけで、ヤバい。ドキドキが止まらない。そもそも彼シャツならぬ、彼寝間着の時点でもう幸せ。



(私、この後死んでもいいわね……)



***



「お兄ちゃん、頭洗ってー」

「いいけど、ちゃんと目をつむるんだぞ」

「わぁぁぁい」


 ソファでみーちゃんと寛いでいると、そんな声が浴室から聞こえて来る。よくよく考えてみると、あのドアの向こうには裸のシンヤがいるのよね。それと、さっきまで私たちも裸で……。



「あぅぅ……」

「ありゃ、まひるの脳内キャパが超えちゃったね」

「みーちゃんは何で大丈夫なのよ……」

「そりゃ毎日、妄想してるから!」

「そ、そう……」


 みーちゃんって恋愛事になるとおバカさんになるのね。初めて知ったわ。でもこの場合、脳内ピンクの方が合ってるかも。


「本当に2人は、真夜の事が好きなんだな」

「えと、……はい。大好きです」

「真夜君なしは考えられない位には好きですね」



 でも、そんな幸せな時間ももうすぐ終わってしまう。それが怖い。



「ふふっ、真夜は幸せね。こんな素敵な女の子2人から好意を持ってもらえてるんだから」

「でも、それもそろそろ終わっちゃいますけどね」

「みーちゃん……」

「そう……。2人とも後悔しないようにしないとね」「「はい」」


 未来さんはやっぱりシンヤのお母さんだ。何処となく安心出来る。



***



「サッパリー」

「ふぅ、……悪い、少し長くなった。さっき沸かし直したから入って良いぞ」

「「────」」


 お風呂から上がったシンヤは、髪が少し濡れてて、頰も火照ってる感じでとても色っぽい。と言うか、色気がありすぎて鼻血が出そうだった。


「見惚れるな」

「無理、見惚れちゃうよ。真夜君、抱き締めて」

「断る」

「シンヤ、私にはしてくれるよね?」

「再度断る!」


 シンヤは何処までもシンヤで、ケチだった。



***



「そっち、布団を敷いてくれ」

「は~い」

「真昼、雪も降ってて夜は冷え込むと思う。隣の部屋から毛布を持ってくるのを手伝ってほしい」

「分かったわ」


 現在、私たちは寝る準備として、お布団を敷いている所だ。未来さんの手助けもあってシンヤと一緒に寝れると思うと、早く一緒に寝たいと言う欲求に駆られる。


「それにしても、凄い雪だね。まだ降ってるよ」

「本当だわ。……明日、1面真っ白ね」

「明日には止んでるだろうし、帰る前に雪だるまとか作るか」

「いいわね、それ!」

「私、かまくらがいいなぁ」

「作れるだけの雪が積もってればな」



 そんな話しをしながら、私たちはお布団を敷き終え、今は誰が何処に寝るかで話し合っている。正確には2対1でシンヤが押され気味だ。


「だから、何で俺が真ん中なんだ……」

「じゃないと、2人とも真夜君を堪能出来ないから」

「そうよ、シンヤ。諦めなさい。2対1なのよ」

「はぁ……。こういう時の女の子は強いよな……」


 シンヤの根負けとなり、シンヤが真ん中で両サイドを私とみーちゃんが寝ると言う陣形に落ち着いた。



***



「それじゃ、俺たちは部屋に行くから」

「「おやすみなさい」」

「お兄ちゃん……、おやすみぃ……」

「あぁ、雪もちゃんと寝るんだぞ」

「うん……」


 もう夜も遅い。雪ちゃんは眠たそうに目を擦っていた。それでもシンヤにおやすみを言うために起きてるのだから、本当に好きなんだと言うのが伝わってくる。


「真夜、分かってると思うが……」

「信じてるわ」

「はぁ……」


 未来さんたちは多分私たちに手を出すなと念を押しているようだった。確かに私たちはまだお付き合いをしていない。そ、そういうのは段階を踏んでほしいのは正直な所でもある。


 けど──。


(ちょっとだけ、え、エッチな事されても、私は別にいいんだけどね……)


 こんなピンク脳をシンヤには知られたくはないけど、思っちゃうんだから仕方ない。それはきっとみーちゃんも同じだ。……むしろ、みーちゃんの方が真っピンクだと思う。



「電気、消すぞ」

「えー、このままもう少し喋ろうよー」

「消した後でも喋れるだろ」

「そうだけどぉ」

「ふふっ、まるで修学旅行の1幕ね」

「男女混合の部屋があってたまるか」


 そう言って、シンヤは部屋の電気を消す。窓のカーテンだけは閉めてないから、街灯の光だけが部屋を満たす。それがなんだか幻想的で、今こうして3人でいるのが奇跡なんじゃないのかと思えてしまう。


「なんだか、街灯の光だけってのもいいね」

「手の平クルクルだな、全く……」

「ふふっ、良いじゃないたまには」

「たまにはじゃないんだけどな」


 体の向きをシンヤの方に向けると、シンヤの顔は天井を眺めていた。ゴソゴソとみーちゃんの方から音が聞こえるので、きっとみーちゃんも体の向きを変えたんだろうね。


「2人の視線を感じるんだが……」

「そりゃ、真夜君を見てるからね」

「そうね。シンヤを見ているわ。……シンヤは見てくれないの?」

「……そうだな。それは、2人っきりの時に取っておくよ」

「「え」」


 それってつまり、恋人になってからって事よね? シンヤはもう、決めてるの?


「し、真夜君、それって……」

言わんぞ。だが、そうだな……。近々2人にがあるとだけ伝えておく。あぁ、告白の返事じゃないから安心してくれ。約束を破るつもりは無いからな」


 大切な話、一体なんなんだろう。それが無性に気になる。


「分かったわ。いつ、話してくれるの?」

「そうだな……。優花ちゃんの合否発表の日にするか」

「ホワイトデー間近じゃん。それでいいの?」

「あぁ。それくらいが丁度いいんだ」

「まひる」

「分かってるわ、みーちゃん」


 なら、それまでは待とう。シンヤがそうまで言うって事はそれだけ大切な事なんだと思うから。



 シンヤからそんな話が告げられた後は、3人で色々な事を話してたんだけど、徐々に眠気が襲ってきた。


「そろそろ、寝る時間だ。慣れない環境なんだから、ゆっくり寝ておけ」

「うん。そうするわね」

「は~い。真夜君、おやすみなさい」

「おやすみ、シンヤ……」


 こんなに楽しかったお泊まり会はそうそうない。アクシデントはあったけど、そのおかげでこうして一緒に寝れるんだ。今、私はとっても幸せだ。そう思いつつ目を瞑れば、一気に意識は夢の中へ落ちていった。

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