シンヤの家でお泊まり会 前編(真昼視点)
*** 真昼視点 ***
今日は色んな事があった。
先ずはシンヤに会えた事。元々シンヤの実家に行く約束をしていたんだから当然なんだけど、やっぱり好きな人に会えると言うのは、それだけで嬉しくなる。
シンヤのお爺さんの話や、百瀬さんに会いに行った話の時、普段のシンヤからは想像出来ないくらい必死で物凄く可愛かった。
お家に着いてからは、お兄ちゃんを発揮したシンヤにときめきを感じた。
アルバムを見た時なんかはずっと幸せだった。無邪気に笑ってる子供時代のシンヤ。少しずつ今の貴方に近づいているシンヤなど、そこには私の知らない貴方がいっぱいいた。
けど、シンヤに抱き着く女の子については許せなかったから、みーちゃんと一緒にお説教をした。その時のシンヤは何だか小さくて、変な扉が開きそうになった。
その後は雪ちゃんと一緒にピクニックに出かけて、ご飯食べたり遊んだりと、とても楽しかった。親の気持ちってこんな感じなのかなって、16歳の女の子が何思ってるんだろうってなった。
そんな幸せな時間も、雪が降り始めてしまい終わってしまった。そうして急いで戻ったけど、その間、物凄い豪雪だった。
そのおかげで、電車が止まることになってしまい、どうしようかと不安に駆られてたけど、未来さんの1言によって、それまでの不安な気持ちなんて何処かに吹き飛んでしまった。
だって──。
「なら、皆でお泊りしましょうか」
その言葉を聞いて最初に出た言葉は驚愕でも驚きでも無かった。
「「良いんですか!?」」
どうやらみーちゃんも同じ気持ちだったらしい。だって、シンヤのお家でお泊りが出来る。そんなの、最高に決まってるんだから!
***
『あ、もしもし、ママ?』
『真昼!? 今、何処にいるの? もうこっちに戻ってきてる?』
ママに連絡すると、やっぱり心配してくれていた。
『ううん。まだシンヤの実家にいるわ。遊んでる最中に雪が降って、急いで戻ったんだけど、その時点でもう電車が止まってたの』
『……そう。でも無事で良かったわ。パパが車出すから、住所を教えて』
どうやら迎えに来てくれるようだけど、せっかくのお泊りのチャンス。それを見逃すなんて出来ないので、ママに未来さんから泊まったらどうかと言う話を伝えた。
『……なるほどね。じゃあ一度未来さんに代わってもらってもいい?』
『うん。ちょっと待っててね』
そう伝え、私は未来さんにスマホを渡すと、未来さんはママと話し始める。そして少ししてから未来さんからスマホを返してもらい、電話に出る。
『もしもし、ママ?』
『真昼、葉桜君に迷惑かけちゃダメよ』
『ありがとう、ママ!!』
それが何よりも嬉しい。シンヤとお泊り。もう今からワクワクとドキドキが止まらない。それはみーちゃんも同じで、『ありがとう、お父さん!』と聞こえてきた。
「ふふっ、シンヤのお家で初めてのお泊りだわ!」
「もうこれは、グイグイアタックするしかないね、まひる!」
「そうね、みーちゃん!」
勝負の結果まで、もう2週間しかない。それまで私は、シンヤの心を繋ぎ止めないといけないんだ。
(頑張るわ!)
そうやる気を出していたのだけど、シンヤから無情の1言が飛んできた。
「真昼とミミは客間を使ってくれ。少し狭いが、まぁ2人が寝るくらいなら大丈夫だろ」
「「へ?」」
え? てっきりシンヤも入れた3人で一緒に寝ると思ってたのに違うの?
「俺は自分の部屋で寝る。年頃の女の子と一緒には寝られないからな」
「酷いよ、真夜君! それはあんまりだよぉぉ」
みーちゃんがそう言うのも分かる。だって、私も同じ事を思ってるんだから。だから私も加勢する事にした。
「シンヤ、流石に酷いわ。こんな機会滅多にないのよ?」
「親しき仲にも礼儀あり、だ」
うっ、それを言われたら返す言葉が見つからない。
(シンヤと寝れるチャンスだったのに……)
2人で意気消沈していると、シンヤを見て呆れている未来さんが助け舟を出してくれた。
「真夜、意地を張るのは辞めなさい。真昼ちゃんたちが可哀想でしょ」
「いや、だけど……」
「あんたの部屋なら3人一緒でも寝れるだけの広さがあるんだから。……これは親からの命令よ」
そう告げた未来さんは私たちに向けてウインクをしてくれた。それが物凄く嬉しかった。けど、シンヤはまだ抵抗しており、徹さんの協力を得ようとしていた。
「親父! 母さんに何か言ってくれ」
「真夜、増々爺さんの様になってきたな」
「ふざけんなよ、このクソ親父! ぜってぇ晩酌作らねぇ」
「何!? それは困る。未来、真夜もこう言ってるんだ。ここは穏便に……」
「あなた?」
「……すまん、諦めてくれ。俺も諦めるから……」
普段のシンヤからはありえない暴言が飛んで、びっくりした。でも、それが何だか可愛い。それと、何となくだけど葉桜家のパワーバランスが見えた気がする。
まぁそれは置いといて、ここまで拒絶されるのは、かなり辛いので、奥の手を出す事にした。
「シンヤ」
「……何だ?」
「私の事、嫌い?」
「ぐはぁっ!」
「真夜君、どうしてもダメ?」
「ぐふぅ……」
ふふっ、私たちの情に訴える作戦よ。これでもダメなら体を張るしかないけど、それはまだ……、恥ずかしい。
そうして少ししてから、シンヤが深い溜息と共に『分かった』と1言だけ呟いた。
「「やったぁ!」」
私たちはハイタッチをして喜ぶ。シンヤと一緒に寝れるだなんて、夢にも思わなかっただけに物凄く嬉しい。これだけで、もう幸せだ。
***
そうして、落ち着いた頃、私たちは未来さんの作ったご飯を6人で食べている。ママや、シンヤとはまた違う味付けでとても美味しい。どうやらシンヤの味の趣向はお母さんとは違うらしい。
「雪、夕飯食べ終わったらお兄ちゃんとお風呂に入るか?」
「入るー!」
「いいなぁ」
「真昼たちはそれぞれで入ってくれ」
「えー、そんな事言って、本当は真夜君も……、ごめんなさい、ごめんなさい! 何言おうとしてるか分かるから、睨まないでよぉ」
最近、みーちゃんとシンヤの間で、このやり取りが増えた気がする。なんというか、みーちゃんの構って欲しいアピールが留まる所を知らない。
「真夜、お前……」
「おい。何言おうとしてるか、分かるからな?」
「シンヤ、私には睨んでくれないの?」
「お願いだから、真昼は今のままでいてくれ……」
そこには私たちや、親友の月城君、雫ちゃんにも見せない様なシンヤがいた。暴言もそうだけど、何もかも遠慮のない言葉、その全部がとても新鮮で、好きになる要素しかなかった。
***
「それじゃ、先に真昼かミミ、どっちかから入ってくれ。それか2人一緒にだな。うちの風呂、それなりに広いから2人くらいなら余裕だ」
夕飯を食べ終え、皆でゆっくりしていると、シンヤがそう告げた。そういえば、みーちゃんと一緒にお風呂に入ったのって、中学の修学旅行の時だけだ。
「みーちゃん。せっかくだし、一緒に入りましょ」
「いいね、それ! あ、でも私たち、着替え……。それに、えと……」
「あ」
そうだわ。お泊りではしゃいでたけど、そもそも私たち、替えの洋服もなければ、その、下着もない。
(ど、どうしよう。流石に下着無しでシンヤと寝るなんて出来っこないわ)
そんな事をしたら死んじゃう。でも、流石にそこはお見通しだったようで、未来さんが替えの下着をドンキから買ってきてくれたらしい。
「着替えについては俺が昔使ってた寝間着を貸す。かなりぶかぶかだと思うが、許してくれ」
(それってつまり、彼シャツみたいなものよね!?)
そんなの着たいに決まってる。今からどんな服なのかが楽しみだわ。
***
「ふひぃぃ、いいお湯ー」
「ふふっ、みーちゃん、おじさんみたいよ」
「えー、だって湯船に浸かってるんだよぉ」
「それもそうね」
髪と体を丁寧に洗い、私も湯船に浸かる。湯加減は最高の1言だった。
「はぁぁ、いいお湯……」
「あははは! まひるもおじさんじゃん!」
「この気持ち良さには抗えなかったわ。……それにしてもみーちゃんの肌、綺麗よね」
「それを言ったらまひるもだよ。髪なんてツヤツヤ」
「そう言えば、みーちゃんってシンヤに色仕掛けしたのよね? ……大きい胸が羨ましいわ。私なんて、身長と同じで、胸も小さいから」
「これでも平均くらいだけどね。でも、まひるも気にするんだね。なんか意外」
「私だって女の子よ。いっぱい気にしちゃうわよ」
「じゃあ、私が揉んであげるよ。揉むと大きくなるって言うし。…………それっ」
「きゃっ! も、もう。……お返しよ!」
「うひゃ! やったなぁ」
「「あははは」」
たまの女子トークを湯船に浸かりながらするのって、とても新鮮で楽しい。その相手がみーちゃんともなれば尚更だ。
その後もみーちゃんと湯船に浸かりながら話していると、ある事を聞いてきた。
「まひるはさぁ、真夜君のどういう所が好きになって、恋したの?」
私たちは同じ人を好きになって、恋をした。だけど、その理由について語った事は一度もない。
きっと、湯船に浸かって、色々緩んだ結果ね。
「そう言えば、話した事なかったわね。……きっかけは、初めてシンヤの素顔を見た時で、それから意識し始めたの」
「シンヤはね、私の事をずっと見てくれてた。どんな時でも歩幅を合わせて、一緒に歩いてくれる。自分が傷付くと分かっていながらも、私の想いを尊重してくれて、守ってくれた」
「そうして気付いたの、健斗との繋がりは積み重ねた時間だけだったけど、シンヤとは時間も想いも、信頼も全部があった。……この人となら、ずっと同じ道を歩めると、そう思えた。そんなシンヤだからこそ、私は始めて恋する事が出来たの」
そう、そんな貴方だったから、私は新しい自分を受け入れる事が出来た。
「みーちゃんは?」
「私、初めて真夜君と話した時にね、目が綺麗だなって思ったの。そして、そのままお友達になった時に見せた笑顔がとても眩しかった。多分、一目惚れしたんだと思う」
「それからは、どんどん真夜君を目で追っていく頻度が増えてった。彼の1つ1つの所作、笑顔、言葉遣い、その全部が私にとっての理想だった」
「……でも極めつけはやっぱり、コスプレで着た執事様とまひるだけに向けたあの優しい笑みだね。あれがなかったらここまで恋する事はなかったよ。………ごめん嘘。それが無くても、同じくらい恋してたと思う。ううん、絶対にしてた。きっと、遅いか早いかの違いだ」
「そっか」
私たち2人共、好きなった理由は違うけど、シンヤに対する想いの強さは同じだった。
「ふふっ、私たち、シンヤにメロメロね」
「そりゃね。だって真夜君だから」
「そうだったわね。シンヤだもんね」
「「あはははは!」」
それからも私たちはのんびり湯船に浸かりつつ、シンヤの家に居ることも忘れて、シンヤの話で盛り上がっていった。
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