シンヤとの初めての放課後デート(真昼視点)
*** 真昼視点 ***
「まひるー、今日も一緒に帰る?」
金曜日のお昼、私は仲良しグループの皆でご飯を食べていると、今日の帰りについて、みーちゃんは聞いてきた。今週はずっとみーちゃんと一緒に帰っていたから、今日も帰ると思っているんだと思う。
けど、今日は──。
「ごめんね、みーちゃん。今日はその、一緒に帰れないの」
「ありゃ、そうなの? と言う事は他の誰かと帰る感じ?」
「う、うん……」
「と言うことは、葉桜君ですね? ふふふ、順調そうで何よりね」
「咲さん、他人の恋愛を楽しむのもいいですけど、来月はアレですよ? どうするんですか?」
「小町さん、それは言わないで! 私は王子様以外に本命を渡すつもりはないわ」
「その前に咲ちゃんは、その王子様を見つけないと、だよねぇ」
「だって! 理想の王子様が現れてくれないんだもん!!」
いつの間にか皆、来月のアレについて話し始めた。
(私も準備しないといけないのよね。そうなると私が渡したい相手は……)
「まぁそれよりも、今はまひるでしょ。まひる、今日は真夜君と帰るの?」
「か、帰るというより、その……、シンヤに何処か一緒に行かないかって誘ってて……」
「「デートですか!?」」
村田さんと小町さんは目を輝かせながら私の発言に反応した。みーちゃんだけは一瞬暗い顔をしたけど、直ぐに普段の顔に戻った。
「へぇ、ついにまひるから誘ったんだぁ」
「う、うん……。と言っても同じタイミングでシンヤからも誘われたんだけどね。……ダメ、だったかな」
「全然! むしろ、ようやくって感じだね。あははは、感想教えてよねー」
「はぁ、真昼ちゃんがいつも以上に可愛いわ」
多分、今の私は顔が真っ赤なんだと思う。そしてシンヤの方に視線を移せば、この間、健斗と何かあったと思うけど、変わらず3人でご飯を食べている。
そんな私の視界にはシンヤしか映らず、健斗の事は脳内から消えていた。
***
「それじゃ、まひる。また来週ね!」
「うん。また来週ね、みーちゃん」
放課後、教室で私はみーちゃんと挨拶を交わしていた。この後、私はシンヤとデートをする。毎日、それを思う度にドキドキした。
だけど同時に、健斗との1件がフラッシュバックして、私の心にブレーキをかける。
そして、みーちゃんは別れ際、そっと小声で私に耳打ちする。
「これでようやく、恋のライバルになれるかな?」
「っ!?」
「あははは、じゃあね! まひる!!」
そう笑顔で帰って行くみーちゃんを見て、ただただ、茫然とすることしかできなかった。
「ミミは帰ったのか?」
「ひゃ!?」
突然、後ろからシンヤに声をかけられて、思わず変な声が出てしまった。
「すまん。驚かすつもりはなかったんだが……」
「う、うぅん。大丈夫よ。それより、健斗は?」
「とっくに部活しに教室を出たよ。あいつも中々強情だな」
「そう……」
「気になるか?」
(気になるかと問われたら、気になる。けど、それをシンヤに言ってもいいのかな……)
そんなことを考えていたんだけど、シンヤからは『気にするな。素直に言うべきだ』と言われる。どんな時でも、シンヤは私が何を考えてるのか分かってるような気がした。
「ちょっとだけ気になるかな。今までずっと一緒に居たから……」
「それが普通だ。特に真昼の場合、高橋とは幼少からの幼馴染な訳なんだし、好きでもあるんだからな」
違う。健斗の事が好きなのはそうかもしれないけど、今はもう、その意味が違うと言い切れる。
「…………もう、違うよ」
「何か言ったか?」
「ううん」
「そうか? まぁいいか。それで、どこから行く? 真昼は行きたい所とかあるのか?」
シンヤからそう尋ねられた。今日はこれから初めてシンヤとデートをする。今までも何度か2人で遊んだり、会ったりした事はあったけど、こうしてはっきりとデートとして出かけるのは初めてだ。
だから私も、どこに行こうかと沢山悩んだんだけど、一向に決まらなかった。
「その、中々決まらなくって……」
「何というか、今週はずっとそんな感じだな。まだ元気が無さそうだ」
「ごめんね。せっかくシンヤからも誘ってくれたのに……」
「気にするな。なら、真昼は今、何が食べたい? こういう時は、軽めに何か食べる所から始めよう」
そう言ってシンヤは方向性を決めてくれた。その気遣いが嬉しい。
「なら、クレープがいい」
「よし来た。ちょうど俺が行きたい所の近くにもクレープがあるから、そこに行くか」
「行きたい所?」
そうシンヤは呟いた。シンヤが行きたい所、それがどこなのかが気になった。
「それは行ってからのお楽しみと言うことで。ほら、せっかくの放課後デートなんだ。楽しもうぜ」
ニカッと笑うシンヤの笑顔がとても眩しかった。胸の奥が温かい。
そして、シンヤが先に教室を出るので私もついて行った。どうしてだろう、2人で何処かに行く。ただそれだけの筈なのに、ドキドキが止まらない。
***
「池袋?」
「そう」
そして今、私たちは池袋の駅にいる。シンヤが行きたい所はどうやら池袋だったらしい。そうして2人で歩き、サンシャイン通りにあるクレープ屋さんに到着した。
「真昼は何にするんだ?」
「そう言うシンヤは何にするの?」
「俺か? 王道もいいんだが、今日はアップルクリームにしようと思う」
「なら、私はいちごチョコクリームにしようかな」
食べるものが決まり、シンヤが注文しに行くので、私もついて行く事にした。シンヤと少しでも長く居たかったからだ。
「美味しい」
「リンゴとクリームの甘さがいいな」
そう言ってシンヤは美味しそうにクレープを食べている。シンヤはいつも美味しい物を食べてる時は子供のように笑顔になる。
そんなシンヤを見つめていたからなのか、シンヤはおもむろに自分が食べていたクレープを私の口元に運んできた。
「え、えぇ!?」
「ん? 食べたくて、俺を見てたんじゃないのか?」
「ち、違うわ! 私、そんなに食い意地張ってないわよ!!」
「あははは。それにしてはこの前、動物園に行った時は俺の今川焼きを食べたそうに見てたじゃないか」
「そ、それは……」
物凄く恥ずかしい。私ってシンヤからそんな風に思われていたのかしら。で、でも……。
(ちょっとだけ、美味しそう。そ、それに……)
それに、シンヤの食べかけでもあるから、これって間接キスになるんじゃと思った。なんでシンヤはそんな恥ずかしい事を平然と出来るんだろう。いつも私だけがドキドキする。
でも、こんな機会なんて、そうそうない。だからこそ、そんな欲求に負けて、結局シンヤのクレープをパクリと、一口食べることにした。
「結局食べるんじゃないか。それで、旨いか?」
「とっても甘くて、美味しい、……です」
「そりゃよかった」
シンヤの言う通り、リンゴとクリームの甘さがマッチしていて美味しい。でもそれ以上に、間接キスをしたと言う事実の方が私にとっては重要で、より一層美味しく感じてしまった。
(バカシンヤ……)
でも、せっかくの間接キスだったのに、シンヤだけが平然としているのは、なんだか悔しい。だから私も、お返しとして自分のクレープを彼の口元に運んでみた。
「真昼、これは?」
「お、お返し……。シンヤだけ、平然としてるのが悔しいから」
「悔しい? 一体何に……、あ」
どうやらシンヤは無自覚にやっていたらしい。それがタラシだと言われる一因だと思うのよね。
そして、今さっき自分がやった行動について自覚したのか、顔が赤くなっていく。そんな彼が可愛くって、愛おしく思う。
「あぁ……、俺はまたしても」
「だ、だから、シンヤにも食べて欲しい……」
そう伝えてみれば、シンヤは顔を赤くしながらも、私のクレープをパクリと一口食べた。意外とシンヤの一口は大きかった。ちょっと面白い。
「美味しい?」
「……甘くて、旨い」
「ふふふ、そっか!」
こんなやり取り、今までシンヤとした事なかったけど、とても楽しい。今日まで先週の事を引きずって、暗かった気持ちも、シンヤと一緒に居たら消えてしまいそうだ。
そうして私とシンヤの、初めての放課後デートが幕を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます