シンヤへのプレゼント選び(真昼&美美子視点)

*** 真昼&美美子視点 ***


「あ、みーちゃん、雫ちゃん来たよ!」

「ほんとだね、おーい、雫ちゃん!」

「ごめんねぇ、待たせちゃった!」


 その週の土曜日、私たちはシンヤへのクリスマスプレゼントを買う為に新宿の駅にいた。と言うのも今日はみーちゃんと雫ちゃんの3人でクリスマス用のプレゼントを買うので、待ち合わせをしている。勿論私の場合、シンヤの他に健斗の分もあるから予算が色々怖いのよね。


「みんな、今日の私服可愛いねー」

「雫ちゃんの方が、可愛いよ! ね、まひる」

「えぇそうね。雫ちゃんの方が可愛いわ」

「えーそうかなぁ」


 女の子なので、やっぱり皆、服装を見ちゃうのよね。常日頃からおしゃれは欠かせないのだ。それにしてもやっぱり雫ちゃんはスタイルが良くって羨ましいわ。


「今日は女子3人でのお買い物だから、変な男どもは無視しないとだね!」

「そうだね! ガンガン無視していこー」

「ふふふ、そうね!」


 私たちはそう宣言して、先ずは雫ちゃんの月城君へのプレゼント選びに付き添うことにしたんだけど、雫ちゃんはどういったのを選ぶんだろう。それが気になったので、尋ねてみることにした。


「ねぇねぇ、雫ちゃんって、月城君に何をプレゼントするの?」

「そうだねぇ。裕也はきっとネックレスにしてくれそうな気がするから、私もネックレスかなぁ」

「え、なんで分かるの!?」

「そりゃあ、私の愛しの彼氏だもん。それくらい分かって当然だよ!」


 雫ちゃんはエッヘンと豪語する。


(うわぁこれがバカップルなのかぁ……。想いが通じ合ってる)


「雫ちゃんはよく分かるわよね。私なんて健斗の事、あまり分からないわ」


 まひるは高橋君のプレゼント選びには毎度のことながら苦労しているのは知ってる。


 その年ごとに彼の中のトレンドが変わるので大変だと、雫ちゃんにぼやいていた。


「あははは。男の子はそんなもんだよ! 裕也や真夜が特殊なんだよね」

「そうなの?」

「特に真夜は、割と好きなものが固定化されてるね。アクセはシンプルな方が好きだし、日用品も実用性が高いものを好んでたりね。後はピアスみたいに体に傷をつける物は嫌いだねぇ」


 雫ちゃんはシンヤの好きなもの嫌いなものを簡単に言うけど、私は全然知らなかった。そういえば、彼とは趣味の話とかはするけど、アクセや日用品みたいな話ってあまりしていなかったのを思い出した。


(私、そう思うと、シンヤの事を知ってるようで知らないのね……)


「へぇ、真夜君ってそういうの拘りがあるんだね」

「あるある。じゃないとコスプレコンとかそういうの積極的にやらないよ」

「あははは。確かにー!」


 雫ちゃんとシンヤの話で盛り上がりながら私たちはアクセサリーショップに入り、月城君のプレゼント選びに参加した。



***



「いやぁ、良いものが買えてよかったよ。ありがとうね、真昼ちゃん、美美子ちゃん!」

「ふふふ。よかったわ」

「とってもいいよね、それ!」


 雫ちゃんがプレゼントとして買ったのは、ティアドロップのネックレス。雫ちゃんの名前と同じネックレスだ。店員さんが言うにはよく恋人がプレゼントとして贈るものらしい。みーちゃんとスマホで調べてみたけど、これは2人にピッタリだと思った。


「次は真夜のプレゼントだね! 2人は何にするの?」

「うーん、それが全然思いつかないんだよね」

「えぇ、私もなのよ……。こんなことならシンヤからどういうのが好きなのか聞いておくべきだったわ」


 まひるも真夜君に贈る物が中々決まらないらしい。真夜君って、あまり指輪とかもしてないから、どういうのが良いのかが全然分からないんだよね。だからこそ、まひると相談して雫ちゃんに来てもらったんだから。


「こういうのは、2人が何を贈りたいのかが一番だと思うよ! きっと真夜も今頃、2人の事を想いながら選んでるだろうし……」

「「私が贈りたいもの……」」



 普段の真夜君を思い出してみて、そこで1つ思いついたものがあったので、雫ちゃんに尋ねてみることにした。



「ねぇねぇ、雫ちゃん。真夜君が今使ってるお財布っていつから使ってるの?」

「あぁ、あれね。確か中学の入学祝でお父さんから買ってもらったものだよ」


 つまり、真夜君は中学からのお財布をずっと愛用していることになる。黒でカッコいい感じの長財布だけど、真夜君には二つ折りの方が似合うと前々から思っていた。



(なら、私が贈るとしたら……)



 そんな考えをしていると、雫ちゃんはニヤニヤしながら『決まった感じだね』と尋ねてきた。


「うん。私はお財布にしようと思う!」

「おー、いいね! 真夜、そろそろ別のにしようかって考えてたからアリだと思うよ」

「本当!?」


 なら俄然それしかないと思った。私がお財布をプレゼントして、真夜君が嬉しそうな表情を浮かべたところを想像するだけでも胸がドキドキしてくる。


「ふふふ、まさに恋する乙女だね」

「ふぇ!?」


 雫ちゃんはまひるには聞こえないよう、私の耳元でそう呟くので、思わず驚いてしまった。チラッとまひるに視線を移してみるけど、どうやらまだ考えているようで、こっちには気づいていなかった。



「や、やっぱり、……気付い、ちゃう?」

「そりゃあね! 前々から好意があるのは知ってたけど、とうとう自覚しちゃった?」

「その、…………はい」


 口にするだけでも顔が熱くなる。けど、もう自覚してしまった以上はどうしようもない。


「真夜君はまひるが好きなのに、何で好きなっちゃうんだろう」

「好きに理由はないもん! だから、美美子ちゃんは後悔しない選択をしないと。それに今は真昼ちゃんの事が好きでも、これから美美子ちゃんに好意が向くかもよ?」

「う。そ、それは……」


 それについては、実は何度も考えていた。いっぱいアピールすれば、真夜君はまひるじゃなくて、私の事を好きになってくれるんじゃないのかなって。


 でも、いいのかな……。


「いいんだよ、美美子ちゃん。恋愛事に遠慮なんていらないんだから」


 雫ちゃんはそんな私の思考を読んだのか、そう励ましてくれた。


(遠慮はいらない……)


 なんでか、その言葉を聞くと、自分が悪い子になった気になる。けど……


「うん。頑張ってみる!」

「ふふふ、その意気だよ!」


 本当に恋愛事に遠慮がいらないなら、まひるにだって負けない。私が真夜君の心を奪ってみせると、ひっそり心の中で宣言する。



***



「雫ちゃん、アドバイスありがとう!」

「いいんだよ。良いの買えてよかったね」

「うん!」


 私が買ったのは紺色の二つ折りのお財布だ。雫ちゃん曰く、黒とか青とかが好きとの事だったので、見た瞬間コレだと思ったんだ。


「よかったね、みーちゃん」

「後は、まひるだけだね」

「そうね……」


 みーちゃんはシンヤにお財布をプレゼントすることにしたようだけど、私は何が良いんだろう。


 シンヤは私の事が好き。私も少なからずシンヤに惹かれているのは分かった。だから少しでも彼のために何かを贈りたいんだけど、全然思いつかない。



(私、いつも健斗の事ばっかりで、彼の事なんて全然考えてなかったのね……)



 今更になってそれを悔やむ。思えばいつだって彼と話すとき、健斗の話題が出ていた。最近は彼に甘えたりしていたと思うけど、そんなのは付け焼き刃に過ぎない。


 私よりもみーちゃんの方がシンヤの事をよく見ていると思う。


「真昼ちゃん、大丈夫?」

「え? え、ええ、大丈夫よ……」


 雫ちゃんは心配して声をかけてくれるけど、本当に何も思い浮かばない。彼の顔も行動といったのは思い浮かぶけど、プレゼントしたいものになると何も浮かばない。



(私、本当にシンヤの事、惹かれてるのかな……)


 だんだんとそんな思考に陥っていく。


「ま・ひ・る!」

「ひゃん! にゃ、にゃに!?」


 みーちゃんが突然冷たい缶ジュースを私の頬に当ててきたから、思わず変な声が出ちゃった!


「ど、どうしたの、みーちゃん?」

「難しく考えなくていいんじゃない?」

「え?」

「まひるは真夜君にどう喜んで欲しいの?」

「え? そ、それは、普通に喜んで欲しいって……」

「じゃあ、まひるにとって真夜君が喜びそうなのって何?」

「私にとって?」


 私にとって、シンヤが喜んでくれると思うもの……。


 その言葉を聞き、これまでにシンヤと過ごした記憶を私は掘り起こした。目新しいことから些細なことまで。そうして思うのは、何も知らないと思ってたけど、振り返ればいっぱい意外と知っている事が多かったと言う事実。


 そして、その中で私だけが知ってる彼の秘密の事を思い出し、そこから芋づる式に、とあるものに行きついた。


(あ、そうだ、1つだけある! 私でも彼に贈れるもの……)


「まひる、何か思いついた感じだね!」

「うん! みーちゃんのおかげで、1つ良いものを思いついたわ」

「真昼ちゃん、それって何?」

「それはね──」







「おぉ、いいじゃん! 確かに真夜が普段使ってる奴だと、一番使い古した奴だったかも」

「あー、それがあったね。それなら喜んでくれるよ、きっと!」

「えぇ、そうだと嬉しいわ」


 みーちゃんたちに感謝の言葉を伝えて、私たちは近くにあるブランド店に入り、そこで店員さんとも相談し、満足のいく物を買うことが出来た。


「ありがとう、2人とも!」

「いいんだよ。まひるが嬉しそうでよかった。高橋君のはどうするの?」

「健斗のは明日買いに行くわ。もう何にするかは決めてるから」

「そっか、じゃあこの後は真夜たちと合流しよっか!」

「「えぇ!?」」

「それじゃ、レッツゴー!」


 雫ちゃんはそれだけ言って、先に行ってしまったので、慌てて私たちも付いていくことになった。そしてその後、シンヤたちと本当に合流したので、そこからは皆で遊んだのは言うまでもないわ。

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