幼馴染の選択(健斗視点)

*** 健斗視点 ***


「ね、ねぇ、健斗……」

「ん? どうしたんだ? 真昼」


 とある日の木曜日の放課後、俺は真昼に呼び止められた。今週は何だか皆の様子がおかしかった。普段なら5人で食べている昼も、何故か火曜日以降は真昼と2人っきりだし、……まるで真夜が転校してくる前の状態に戻ったようだった。


 そして、そんな真夜は何だか調子が悪いのか、火曜から元気が無い。柊や山口に聞いてみたが、『高橋が気にする事じゃない』や、『気にしなくても、真夜君は大丈夫だよ』と言うだけで、一体全体何が起きてるのか、全く分からなかった。


 だがまぁ、ひとまず、真夜の事は置いといて、真昼の言葉を聞くことにした。


「あの、明日って確か部活休みだったわよね?」

「そうだけど、それがどうした?」


 何故か、あいつらが俺たちをただただ無言でジッと見つめている。山口だけは真夜の方にもチラチラと視線を移しながら、何とも言えない表情になっているのだが、それも意味が分からない。



 そして──。



「明日の放課後、屋上に来て欲しいの」

「明日? 屋上? 何でだ?」

「そ、その……、どうしても健斗に伝えたい事があって……、だ、ダメかな?」


 それを聞いた時、最初何を話したいのかが分からなかった。だけど真昼の表情は真剣そのもので、それでいて頬が少し、ピンク色になっていることに気がついた。そして、真昼が何を言おうとしているのか朧げながら理解した。してしまった。


 理解したという事はだ。恐らくそういう事で、心臓がドキドキしてきたし、顔が熱くなっていくのを感じる。きっと今は少しだけ、顔が赤いはずだ。


「ま、真昼? それって……」

「それで、ダメかな?」

「……わ、分かった。明日の放課後、屋上だな」

「う、うん! じゃあ、待ってるから!」


 そう伝えると、真昼は嬉しそうな表情を浮かべながら、走って1人で帰ってしまった。



(え? マジで? 真昼、俺の事……)



 それからの事はあまり覚えてないが、とりあえず自分の部屋に戻って来れたらしく、ベッドの上に座っていた。


「明日、俺、真昼から告白されるって事、だよな?」


 さっきからそればっかりが頭の中でぐるぐるしている。だって放課後の屋上、それも伝えたい事があるだなんて、考えられるのは告白しかないだろ。


(つまり、真昼は真夜じゃなくて、俺を選んだって事だよな?)


 実際、確信がある訳じゃないんだ。真夜が真昼の事が好きで、実はアピールしてたという事実は今のところ見つかっていない。柊や山口にこっそり聞いた時も『そうなの?』みたいな表情だったしな。


 そう考えると、今週のあいつらの行動にも納得が出来る。あいつらは真昼が俺に告白する事を前もって知ってたから、敢えて俺たち2人だけにしてくれたんだろうな。


(だとしたら、めちゃくちゃ嬉しいな)


 幼少の頃からずっと好きだった真昼。その恋がようやく実ろうとしている事実に、今最高に興奮している。そして、そうなれば、必然的に恋人になった後の事を考える訳で──。


「恋人の状態でクリスマスかぁ、それもいいな」


 部活友達にも相談し、当初の予定通り、クリスマスの日に真昼へ告白を決行。そうして晴れて恋人同士になる事で、最高の思い出として残そうと考えていた。だが、既に恋人同士でのクリスマスと言うのも全然アリだなと思えた。



 だけど、そこでふと、思った。



「……真昼からしたら、明日告白して恋人になるのが最高の思い出になって、クリスマスは恋人としての甘い思い出と言った感じか? うーん、俺の案と、どっちが最高の思い出として残るんだ、この場合」


 正直、真昼からの告白と言うのも、悪くないと思う。俺だってそんな甘い思い出も良いなと思うしな。……でももし、最高の思い出と、甘い思い出、それが同時に演出出来たら、それこそが1番なんじゃないのかと思える。


(例えば、クリスマスプレゼントとして、指輪を贈ってからの告白とか最高じゃないか? そしてそのまま……)


 それならきっと指輪と言う、ある意味プロポーズとも取れる贈り物をしたら、甘い思い出としても残りそうだと思った。それかネックレスも、婚約ネックレスみたいな言葉もあるらしいし、十分ありだなと思った。



 何故なら俺たちは昔、をしているからだ。



「さて、どっちが真昼に喜んでくれるものか……」


 既に俺の意識は明日の真昼からの告白という一大イベントよりも、両想いと分かった真昼の為に、何をどうしたら告白という演出を行うことで、真昼に1番喜んで貰えるかという趣旨に変わっていた。



「やっぱり、俺からクリスマスに告白する方が真昼も喜ぶよな。だってそっちの方が男らしいし、明日屋上で告白ってのも、ただの学生がやる事だもんな!」



 俺たちは昔、結婚の約束をしている幼馴染。つまり、そこらの学生とは立場が違うんだ。故に俺たちにしか出来ないやり方の方が絶対に喜んでくれると思う。


(真昼には悪いけど、明日は必ずクリスマスに告白するという事だけ伝えて、終わりにしよう)


 きっと真昼の事だ。俺のそんな意図を汲んで、理解してくれると思う。そして、それまでの期間は言わば焦らしで、こうドキドキ感が高まる筈だ。


「あははは。俺にしては最高のプランだな!」


(それに、そういう約束にしてしまえば、真昼も真夜の事に意識なんてしないだろうしな)



 そう考えていると、ふと思った。真夜が同じ立場ならどうするのかと……。



(あいつの場合、女子からの告白も全然アリとか言いそうだな。……と言うか、お互いに好意があると分かった時点で告白するかもしれねぇ)


 だとしたら本当に真夜は真昼には好意が無いのかもしれない。ただ無意識的にタラシみたいな行動をしているだけで、真昼にはそんな気はないかもしれないと思えた。


 何故ならあいつの初恋相手は関根さんだ。真昼も十分可愛いが、関根さんは正真正銘の美少女と言って差し支えない。そんな人が初恋なんだから、次の恋も似たような人になる気がする。


 だとしたら山口も大変だなと思えた。あいつは真夜に気がある素振りが真昼以上にあるからだ。と言うか、もう好きだろ、絶対。


「ま、あいつらの事は今はどうでもいいや。それよりも明日が楽しみだな。きっと真昼なら喜んでくれる」


 この行動に真昼が喜んでくれると、何一つ疑っていないし、疑問も抱いていない。明日、俺たちにとって印象に残る出来事になるだろうなと言う予感を感じつつ、夕飯の為に下に降りていった。

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