貴方達の仕事

「この遺体には不可解な点があります。ひとつはこのサイズの合っていないつけ爪。ふたつ目はこの首の痕。皆さん警察官なら見たことだってあるでしょう?首吊り自殺を図った遺体の首を。この痕、それにそっくりだと思いません?」

「自殺……?」

「第一、可笑しいでしょう?この痕を付けるには被害者の首に紐を通して、後ろ側から紐を引っ張る。現場は外だから吊るすものはないので、被害者を座らせるかしないとですね。ある程度の高低差がないとこんな風な痕にはなりません。」

「それの何が可笑しいっていうんだ?」

「どうして大人しく座ったんですか?爪に皮膚が付着するぐらい抵抗していたのに。」

「気を失ったんじゃないか?」

「どうやって?スタンガンの痕はなし。傷もなし。じゃあ、薬品?それもなし。検死結果を皆さんはご存じでしょう。じゃあ力技?それもどうでしょうか。松本さんは過去に柔道や空手等の武闘系の習い事などはしてないでしょう?一般人が何も使わずに一人の大人の意識を奪うなんて芸当、本気で出来るとでも?」

「それは……。」

「じゃあ、松本が犯人じゃないなら誰が犯人だっていうんだ!!」

 霧野は呆れた目で食って掛かる男を見る。


「それを見つけるのが貴方達の仕事でしょう?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る