誤認逮捕 発覚?!
「松本翔が犯人で間違いないな。」
ホワイトボードには中年の男性の写真が一枚。
写真の下には『松本翔』の文字。
矢印が引っ張られて、その先には一人の女性の写真。
こちらの写真には、肩口まで伸びた栗色の髪の女性が笑顔を浮かべていた。女性の下には『被害者 篠崎彩香』の文字が綴られていた。
すぐ隣にもう一枚の写真も貼られていた。栗色の髪が朝露に濡れてアスファルトに張り付いている。瞼は半開き、虚ろな瞳が覗いている。隣の笑顔の女性と同一人物とは思えないほど、その顔は哀しみに染まっていた。
その遺体が発見されたのは週末明けの月曜日の早朝。ホームレスの男性が発見し、近くを散歩する老夫婦に伝え、警察に通報。
警視庁捜査一課に捜査本部が設けられ、早一週間が過ぎようとしていた。
本事件の担当にあたるのは若手捜査官三名である。
「松本はガイシャの元同僚です。」
「確か、ガイシャの友人女性からの証言では、松本はガイシャへの恋心を拗らせ、ストーカーまがいの行為も行っていたんだろ?」
「あぁ。それに被害者女性のつけ爪から、松本のDNAも検出されている。」
「決まりだな。」
捜査官たちの声が室内に響く。
「どう思う?」
「どう、とは?」
マジックミラー越し、三人の男の影が揺れる。
清水の問いかけに、神童は「何のこと?」と、白々しく小首を傾げてみせた。それでも、清水は静かに神童を見つめる。
はぁ、、、と神童は小さな溜息を漏らしながら、「そうですねぇ。このまま行けば、彼らは間違いなく松本の令状を取ってくるでしょう。もれなく松本は逮捕。本人は無罪を主張。ですが、証拠は十分揃っています。最高裁まで行くでしょうが、判定は覆らず、松本は刑務所。数十年後に警察誤認逮捕発覚!だなんて騒動にならないことを祈りましょう。」
「祈るな。」
「え、祈っちゃダメなんですか?!誤認逮捕だなんて、警察の信用ガタ落ちですよ?」
「その誤認逮捕を防げと言っている。」
「えぇー。それ、僕の仕事ですか?」
「お前の仕事だから、今ここにお前がいるんだろう。」
「僕、清水さんにいきなり引っ張って連れてこられただけなんですけど💦」
清水の言葉に神童はわざとらしく肩を落とした。
「もう...清水さんがそう言うなら仕方ないですね。」
んーっと背伸びをしながら目を閉じる。
そしてゆっくりと瞼を開いた。
「志葉、頼む。俺は神童ではなく捜査協力者の霧野 友哉だ。」
「承知致しました。」
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