第3話 ベアトのライバル?アイス登場

神話の時代、竜族をまとめ、世界を喰らい尽くそうとした一匹のドラゴンがいた


ドラゴンの名前は『混沌を喰らうもの(カオスイーター)ラーフケートウ』


しかし、ドラゴンの前には選ばれし二人の勇者が立ちはだかる


一人は竜を切り裂く剣を持つ戦士


一人は異世界の神の力を借りることができる魔術師だった


神々の力を借りた勇者たちはラーフケートウの体を八つに引き裂き、各地に封印したという



僕たちはシグル山に向かって旅路をのんびり歩いていた


森の道は木々の匂いがこもった空気が湿気と共に鼻に入ってくる


幼い頃から山の中で修行をした僕はこう言う、慣れ親しんだ木の匂いが好きだった


「シグル山には八つに分けられたラーフケートウの一部が封印されているという。その一部を素材として使えば、さらに強力な剣が作れるという寸法さ」


と、シェーシャさんは言うんだけど、


「なんかそれ危なくない?」


混沌を喰らうもの(カオスイーター)と呼ばれた存在に手を出すなんて危険すぎるだろ、常識的に考えて


「なんでだい?相手は封印されているんだよ?」


キョトンとするシェーシャさん


「なんか封印解けて世界が崩壊する未来しか見えないんですが」


それが世界のお約束だし


「あなたが案ずる必要はありませんわ。かの魔王竜が封印から目覚めたとしても私が倒して見せます。こう言う風にね」


キン


ベアトが新しい刀『堕天白露』の鯉口を切って抜刀する


一振りで大木が両断された


はっきり言って僕の瞳にその剣筋が映らない


剣速もさることながら、堕天白露の切れ味も、間違いなくS級レアレベルのものだろう


さすがはシェーシャさんが作った刀だけはあると言うことか


「おやおや、十六夜君」


シェーシャさんは悪戯っぽく笑う


こう言う時の彼女はまるで子猫のように見える


「僕の作った刀に興味津々なようだね。僕に惚れ直したかい」


「シェーシャ。何を言っているのかしら?十六夜が惚れ直したのは私の剣技にでしてよ」


ははは・・・


どちらも凄すぎて甲乙つけ難いよ


「あなたたち、何を勝手に言っているんですか!」


頭の上から聞こ覚えのあるよく通る高い声がして僕たちは振り返った


木の上にはグラマーなボディラインがくっきりと見える黒い魔導服を着た黒髪の女性が立っていた


僕たちは彼女をよく知っている


「アイス!」


ベアトはその名前を呼んだ


「おほほほほ、十六夜様争奪戦にこの私だけ除け者にしようなんてそうはいきませんよ!とう!」


大きな双乳をブルンと震わせて彼女は木から飛び降りる


そして、地面に頭から激突した


「いたーい!」


彼女はそう言って鼻血を流しながら、ふぇーんと泣き出した


「大丈夫か?『琵琶を持ちて奏で癒すは弁財天』」


癒しの異神魔術を詠唱すると、彼女の傷は一瞬で癒えてゆく


傷が癒えたと同時に彼女は僕に激しく抱きついてきた


僕の胸に彼女の弾む大きな双乳が押し付けられる


柔らかくて、いい匂いがする・・・


「さすがです!十六夜様の異神魔術は素晴らしいです!」


「いつまで、十六夜に抱きついているのかしら?」


ベアトはジト目でアイスちゃんを睨みつける


「ふん、筋肉質のあなたより、私の柔らかい体の方が十六夜様は好きに決まっています」


「へえ、私、いつでも喧嘩は受けて立ちますわよ」


二人の目にバチバチと火花が散る


「あ、あの、アイスちゃん」


「はい、十六夜様」


「そろそろ、離れてくれないかな?」


「名残惜しいですわ」


アイスちゃんが残念そうに僕から離れる


気持ちいいんだけど、抱きしめられたままだと僕がドキドキして話ができなくなる


アイスちゃんことアイス=ラーズグリーズは魔術師の名家ラーズグリーズ家のお嬢様で氷結系の魔法にかけては国中でも右に出るものはいない稀代の天才魔術師だ


「僕たち、これから、シグル山まで行くんだけど」


「ええ、聞いていますよ」


「え、誰から聞いたの?」


「十六夜様のお母様からですよ」


「母さんかあ」


僕の母さんはベアト、シェーシャさん、アイスちゃんと僕の関係を見て面白がっているのだ


だからこの旅にアイスちゃんも同行させたかったのに違いない


ーー早く、孫の顔を見せてね


母の悪戯っぽい笑顔が目に浮かぶ


「早くお帰りなさい。アイス。正直、この戦いはひ弱なあなたにはついていけませんわ」


「いやです!ベアト、あなたにだけは抜け駆けなんてさせませんから!」


「やれやれ(まっ、十六夜君は僕に惚れているんだけどね)」


「三人とも〜、早く行くよ」


僕たちは、こうしてシグル山へいつものパーティーで旅をすることになった

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