第45話 Reason

喫茶店を後にした俺たちは、これからどう過ごそうかを考えていた。しかし、時間は余りなく、俺は、悲しいかな、ここはマイの地元であるから、あたりの事情に正直疎く、答えを出せずにいた。でも、今日は最終的に解散しなくてはならない。そうなると、ここから近い駅に徐々にむかっていくのがよさそうな気はした。そうしているうちに歩きながら話し始める。

「そういや、マイって、ずっとこの街に住んでるの?」

「生まれたのは、ママの実家があるところで、その後ここに引っ越してきたらしいよ。あんまり覚えてないけど。」

「この街の事は詳しそうだね。」

「でもねー、余り遊び歩いてはいないんだあ。」

「どうして?」

「アタシは、今でこそこうだけど、以前は他の子たちと似たような格好してたし。でも、そのころから、ちょっと浮いてたし、何よりも同じ学校の人とは会いたくなくて、ちょっと離れたところを、彷徨ってるような感じだった。」

マイは少し遠い目をしながら話しだした。

「そんな中で、街なかまで行ったら、色んな人がいて、そんなのをみるのが楽しかった。それから、地元では、すぐ誰かに気づかれそうになったけど、ここでは、アタシは歩いてても、誰にも気に留められることもなくて、凄く気が楽だった。」

「そっか、地元で、あんまり過ごしてないんだ。」

「そ、そゆこと。で、夜はあまりおそくならないように家に帰ってくるって感じ。」

「真面目じゃん。」

「根はそうなのかも。で、街を歩いてるときにギャルを見たんだ。」

「そう来たか。」

「それが、余りにも格好良く見えて、物凄く憧れちゃった。その人は人混みの中でも、まっすぐ目的地に向かってる感じがした。周りを気にもせず、迷いもなさそうで、いいなあ、アタシもあんなふうになりたいって思うようになったんだ。」

彼女にとってのギャルは、生き方のようなものだったらしい。

「で、進学したらデビューするぞと、意気込んできたら……。」

「浮いちゃったのね。でも、やめなかったんだね。」

「確かに、学校では浮いたけど、かえって変なのは寄ってこなくなったし。道さえ外れなきゃ、このままでもいいかも、ってなった。」

「先生からは、怒られなかったの?」

「明るく元気で、それでいても、揉め事は起こさないように気をつけてた。ママに心配は掛けたくないし。」

やっぱり、マイは真面目な子だと思った。

「一度ママに聞いたよ。先生から連絡とかないの?って。」

「その辺ちょっと不安だったの?」

「ちょっとだけね。そしたら、『あったら言うし、何ならしばくよ。』っていってた。ちょっと成績が、ってくらいで、だって。」

マイは見た目ギャルの優等生なのだと思った。で、その後彼女はしみじみ言った。

「でも、ギャルっぽくしてなかったら、はーくんに近づいたり、話しかけたりはできなかったかも。意外に度胸みたいなのはついたね。」

俺たちがこうしていられるのは彼女がこうして、行動や考え方をうまく変えることができたからなんだと思うと。形から入るのも悪くはないかも、とは思えた。

気がつくと俺たちは、もう駅近くまで来ていた。周囲はかなり賑やかで、人もそこそこいる感じだった。

「そろそろ解散しようか。」

俺は言った。今まで一番この言葉を言うことが心からさみしく思えた。

「うん、わかった。」

マイも何だか名残り惜しそうな表情だった。

「また、学校で会おうよ。後メッセージも送るから。」

「絶対だよ。待ってるから。」

その後俺は、物陰になりそうなところへ彼女を促すと、彼女はすぐに理解したようについてきた。

周りを確認し、俺は彼女を抱きしめた。軽く口づけを交わすと、マイは言った。

「はーくん、かっこよすぎる。大好き。」

「俺も好きだよ、マイは可愛いなぁ。」

「やだー。」

彼女は赤面しながら笑っていた。そして俺たちは体を離すと、俺は彼女に手を振りながら。俺は改札を抜け、ホームへと向かった。時々振り返ると、彼女がずっと手を振っているのが見えていた。多分、俺の姿が見えなくなるまで彼女は手を振っていたんだと思う。

ホームに着いたら、俺は、物凄く強烈な寂しいに襲われ、目頭が何故か熱くなってしまっていた。



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