第22話 Holiday 5
賑やかな街のことは、正直詳しくないので、どう動くかは、マイに委ねている。ルート取りなども驚くほどスムーズで、ひとの流れがいいところをちゃんと分かっているのが、俺でも分かるくらいだ。何だか楽をしているようなのが、少し心苦しい気もする。
因みに、カフェをでてから俺とマイはずっと手を繋いでいた。だから、俺はただ彼女と歩いているだけだった。時々彼女の手を掴む力が強くなってしまって、俺は少し力を抜こうとすると、彼女は、その度に、
「大丈夫だよ。気にしないで。」
と言い、むしろ彼女のほうが俺の手を強く掴んできた。もう、緊張で手に汗をかいていたことさえ、いつの間にか気にならなくなっていた。
こうしてやってきたのは、駅前のデパートだった。駅前の人波は電車で到着した時より勢いがましていた。二人でつなぐ手に、いやでも力が入った。
エスカレーターでいくつかフロアを上がり、着いたところは雑貨を扱う売り場があるところだった。
「こういうとこ結構来るの?」
俺がマイに尋ねる。
「ぶっちゃけ、服屋さんとかよりも、こっちの方が来てるかも。」
流石に、バイトはしているとはいえ、好きなだけお金を使えるわけではないし、話に時々聞くが、それなりに倹約とかもしていて、金銭感覚は人並みだから、街に出る度服を買うわけにもいかないのだろう。
「雑貨とかお手頃価格のコスメとか見るのも好きなんだー。」
買いやすい化粧品の類なら、地元でも手に入るのだろうが、種類とかが恐らく豊富なんだろう。このフロアは様々なジャンルの商品が並んでいて、見てて俺も少し楽しかった。で、目的を見失いかける。
思い出した。
「いけね、財布見に来たんだった。」
「そうだったね、じゃあこっち。」
俺は再びマイに手を掴まれ、軽く引っ張られるように移動した。
財布のあるコーナーに到着した。シンプルなデザインで、俺にでもお求めやすい価格のものばかりだった。いくつか手にとって見ていると、その中の二種類が特に魅力的に思えてきた。見た目や使いやすそうな感じ、あと価格なども考えた。
「うーん。」
俺の唸り声に、マイが気がつき、そばに来ると、二つの財布を見比べて、少し考えていたようだったが、
「じゃ、これかな?」
そう言って、一つを指さした。俺は彼女のセンスを信じ、それを買うことに決めた。
俺がレジに向かうと、マイも着いてきて、
「今日は、アタシが払うよ。」
と言うので、
「いやあ、さすがにこれは自分で……。」
払おうとしたのだが、
「今日は結構付き合ってもらったし、ここまで、引きずり回しちゃったから、お礼とお詫び。だから、ね。」
「でも……。」
気遣いのできる彼女だが、こういうところでちょっと頑固なところがあるみたいだ。
「それに、今日は予定よりお金使ってないし。このくらい大丈夫だよ。」
俺は、これ以上の抵抗は無駄だと思い、彼女の提案を受け入れることにした。
「わかったよ。そのかわり、昼メシは俺が奢らせて欲しいんだけど。」
と、言うと、
「ま、いいよ。アタシに払わせてばっかりみたいで、申し訳ないって思っちゃうんだね。」
俺の気持ちを分かってくれたようだ。でも、続けて彼女は言う。
「デート代は必ず男の子が持つって、決まりなんかないと、アタシは思うんだけどね。」
マイは想像以上に賢く、自分の意志をしっかり持っている人だと思った。
まあ、正直なことをいえば、俺は、お金払いは公平なのがいいと思っていただけなのだが。
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