帰宅
畑病院に戻り、再び藤丸の診察室へと赴いた。
藤丸は俺が帰ってくる前に患者の診察をある程度終えていた。
「どうだった?……と聞かなくてもいいか。どうやら無理難題叩きつけられたらしいな。さっきより顔が暗い」
「ああ、存在するかも曖昧な珍品を探し回ってる俺だが、流石に[黒鉄の丸薬]はな……」
「硯の伝記に書かれている天然の万能薬だったか。そりゃあ無理難題だ」
「しかし、頼まれて引き受けた以上はやってのけなければな。とりあえず情報を集めてみるさ。一度家に帰って書物をあさってみる」
「わかった。では、この鍵を返しておく」
藤丸には俺のいない間、家の納屋の鍵を預かって貰っている。というのも昔旅の最中に一度鍵を無くしたことがある。
納屋には元々農機具を置いていたのだが、現在は珍品の収納場所にしている。あの時は無理やり扉を突き破ることになり無駄な出費をしてしまったということがあるのだ。
「いつも悪いな」
「気にしないで良い。家に帰ったら墓参りには行っておけよ」
「わかっているさ。じゃあまた来る」
畑病院を後にして中心街へ続く道を進んでいくと途中で丁字路がある。直進すると中心街だが、そこを左の山手に向かう。
坂を登って行くとだんだん民家がなくなっていく。
俺の家に着いた時にはあたりには民家がなかなってしまう。
家はごく普通の平家に大きめの納屋が隣接している。
家の前には広大な農地が広がっているが、現在手入れをしていないから荒れ放題になっている。
家の裏手にはカミノマ家の墓がある。
家に荷物を置いて、まずは墓参りをすることとした。桶に水を入れて、手拭いを持った。
墓は苔が生えて少々汚れている。何年も家に帰っていなかったのだから仕方がない。
墓参りを終えると今度は家の掃除に取り掛かる。埃まみれの家に滞在する気は起きない。
「さて、やっていくかね」
恐らくこの家の掃除をしていたら日が暮れてしまうだろう。
今回の依頼はそう簡単に終わるものではない。やる気はまるで起きないがせめて長期間生活できるようにはしておかなければならない。
やる気がないなりに掃除道具をもってきて掃除を始めた。
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