1-15・やっと新部名と方向性が決まる

「あんたらの異世界でもミステリーとかあるの?」と、おれはクルミにまた聞いてみた。


「ミステリー、つまり謎と合理的な解決、ですか。ありますよ?」


 疑問形で回答をもらっても、どうも疑わしいのだが、確かにおれが知っている異世界ファンタジーでは確かに存在しているから、多分ほぼある、と解釈しても間違いないだろう。


 ただ、あまり日常系の謎、ってのは見かけないんだよね。


 なにしろ、世界が非日常だから、犯人は合理的に解決できる謎を残したりしない。


 アリバイなんてものも、時間遡行できる魔術師だったら容易に捏造できるし、密室でも壁越しに魔法で殺すこともできる。


 だから、扱っている謎が「世界はどうしてそのようになっているのか」とかみたいなものになる。


 どうしてドラゴンや神がいるのか、神々はダンジョンで我々になにをさせたいと思っているのか、みたいな。


「だったら、このリアル世界にミステリーっぽいものがあるのか、って私は聞きたいね」と、ミドリは言った。


「さあ。よくわからないけどあるんじゃないの。学校の備品がなくなったりとか、差出人のわからないラブレターとか」


 いまどきラブレターはないかな。SNSでの匿名のイジメとか、となりの女子が人気Vtuberだったり、は、ありきたりだけどあるだろうね。


「じゃ、茶道ミステリー部で、生徒会には届け出して置こうか。生徒会の依頼も受ければ活動実績になるし、この部室が今は、場所を知らないヒトには見えないようになってるんだったら、防護膜の外側に依頼受け付けポストでも立てておいて……」


「妖怪ポスト、でしたっけ。明日、近くのホームセンターで探してみることにします」と、ミナセは無駄なハッスルぶりをしめした。


 翌日、おれとミナセは一緒に、これオシャレっぽくないかな、おまえの部屋のドアに飾っておきたいな、とか、相手が嫌がりそうなドアプレートをお互いに選んだのち、妖怪ポストコーナー、じゃなくてただのポストコーナーでお目当てのものを買ってきた。


 これは余談であるので、話をもとに戻す。


 ちょっと待った、と、また部長であることをしょっちゅう忘れてしまうミロクが口をはさんだ。


 ちなみにミロクは、今まで花粉を取り除くために使っていたぺとぺとシートの代わりに、ミドリが魔力を付与した羽団扇で、いつもゴロゴロしていることにきめたソファをきれいに掃除していた。


 白い羽が、ひっそりと溜まっていたスギ花粉で薄く黄色くなるのを見て、お、いいねこれ、と、ミロクは感心していた。


「なんかその名前だと、うちらがミステリーみたいだろ」


「えーと、じゃあ……茶道犯人部?」


 すでにおわかりのとおり、疑問形で答えるキャラ設定はクルミ姫である。


「名探偵だよ、名探偵!」


「茶道名探偵部! 悪くないですね。でも、自分たちで名探偵っていうの、恥ずかしくないですか?」


「いいんだよ、コナンだって明智小五郎だって言ってるだろ」


 ここで正しい認識を持っていただきたいのは、そう言っているのは「作者」であり、「物語の登場人物」が自称しているわけではない。


 紆余曲折したあげく、新部名は次のように決まった。


【茶道 探偵部】(仮)


 「茶道」と「探偵部」の間が一字あいているのは「名」を取り除いたからで、とりあえず仮の名称だから最後に(仮)ってつけてみたんだけど、受領された部活名は次の通りだった。


 茶道 探偵部(仮)


 さて、これでうまいこと活動実績が作れるだろうか。茶道ボランティア部のほうが、わかりやすい活動実績は作れそうなんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る