非モテ男子三人衆は美少女たちの好意に気づかない。
わをん
第1話 とにかくモテない
「なんで、俺たちってモテないんだろうなぁ」
ある日の昼休み、食堂にて。
俺はいつもの友人二人に両端を固められながらきつねうどんをすすっていると、左に座る高身長さっぱりイケメン、
なぜ「俺たち」と当たり前のように一括りにされているのか、疑問が出ないこともなかったけれど、モテないことに関してはまったくもってその通りなので何も言えないのがとても歯がゆい。
それはどうやら右側に座る『モテない』でひとくくりにされたもう一人の小柄な文系少年、
なにか、彼女持ちの男子高校生を合法的にムショにぶちこむ方法はないのだろうか。それさえあれば、きっと平和が近づくだろうに。主に俺たちの心の平和が。
「健太、なんで俺には彼女ができないんだと思う?」
俺こと
相変わらずの整った顔である、困り顔でも360度スキのないイケメンオーラで溢れているのだから、フツメンの俺たちには立つ瀬がない。率直に言って、鉄パイプで目が見えなくなるくらいぶん殴りたくなるような顔だ。
しかし、筈木は筈木自身が言った通りモテない。認めたくないが外面に関しては、モテ様子しかない男だ。ならば、モテないのはそれ以外が理由に決まっている。
要するに。
「性格だな」
当たり前のことを聞かれたので顔色一つ変えず俺は平然と答えた。
うん、だって。それしか考えつかないからな。
がたっ、トモは持っていた手鏡を落としてイケメンアイを驚愕に見開かせる。
「う、嘘・・・性格? 性格はそんな悪くはなくね?・・・悪いの?」
トモは何かに縋るような目になって俺を見てくる。なんだろう、男の上目遣いって無性に殴りたくなるな。一回、どさくさ紛れに殴ろうかな・・・じゃなくて。
どうやらトモは聞き間違いだったことに期待したいらしい。が、そんなものは知らないふりだ。現実を教えてやろう。
「悪いというか、気持ち悪い」
「はっ?」
俺は言葉を選ばず、トモの期待をバッサリと切り捨てた。
そう、こいつは内面が気持ち悪いのだ。美形という強力なアドバンテージを持っておきながら、それを超える圧倒的なディスアドバンテージ。
例えば、女子がいるときはキメ顔とポーズを決して崩さないところだったり、トイレに行くと必ず鏡を見て前髪をいじった後に出ていく癖だったり、毎日匂いのきつい香水をつけてきたり、上げだしたらきりがない。簡単に言えば、こいつは全身が性器なのだ。
どれだけきれいな川だって近くに腐敗液が流れるゴミステーションがあれば、川は汚れて魚は住めなくなる。こいつはそれを自身の身一つで体現しているのだ。感無量である。イケメンでありながら非モテとか童貞界の期待の星だ。どうかその星に一生取り残されていてほしい。
・・・しかし、改善案を出さずこのまま口を閉ざせばただの悪口になってしまうな。さすがにフォローのひとつでも・・・
いや、別にいいな。うん、悪口言って終わりでも全然いい。イケメンが苦しんでるのを見るのはとても気分がいいしね、心が洗われるようだ。
「お前女の子に対して下心むき出しすぎるんだよ。あと、普段からあふれ出す自分のことだい好きナルシストオーラが合わさって、お前はもう人間じゃない」
「人間じゃない?!」
「動物園に帰れ、万年発情期」
俺の現実的発言にトモは地面に膝をつき項垂れた。いつものイケメンオーラが陰鬱な雰囲気を帯びる姿は、爽快感がすごくて精神が寛大になっていくのを感じる。
今なら言える。カップルを無遠慮に牢にぶち込む必要はない。だって、カップルが誕生することは素晴らしいことで罪に問う必要なんてないよね・・・って。
今までにないくらいの望洋感に浸かっていると、トモはバッと立ち上がり、マルの両肩を掴んだ。マルを見つめるその瞳は揺れていて、最後の希望と言わんばかりだった。
「ま、まる? お前はそんなこと言わないよな? この腐れ外道とは違う意見だよな? 反対意見だよな?」
そこまで自分の性格に問題があることを認めたくないのだろうか。まったく、情けない男だ。優しいマルが元人間にとどめを刺すのは苦というものだろう。ここは俺がこの恋愛モラトリアム(元)人間に介錯をつけてやろう。
俺はうどんをすする手を止めて制裁を加えようと立ち上がるも、それよりもはやくにマルの口が開いた。
「え? いや同意見ではあるけど・・・」
「ぐふっ!」
かいしんのいちげき!
トモは今度こそKO.され地面に倒れ伏した。希望を持っていたからこそ裏切られた絶望が大きいのだろう、トモの瞳からは生気が失われていた。血は見えないが間違いなく流血している・・・。
なんてこった、ついにマルがやりやがった。トモの息の根を止めたっ!
俺はマルの肩にぽんっと手を置いた。
「マル・・・よくやった。これで奴は二度と立ち直れないだろう」
「えっ、あっごめん! そんなつもりはなくてっ!」
マルは死に体のトモを励まそうと近寄る。だが、俺は進む足を手で制した。
「いいんだよ、マルこれで。現実を見ずに反省しないより、無理やりにでも現実を見せて反省をできるようにしたんだ。なにがなんでもモテたいこいつにとっては本望だろ」
「そう・・・なのかな?」
「あぁ、俺だって本当はこんな残酷なこと言いたくねぇよ・・・」
「そのわりにはとても楽しそうだったけど」
「そんなわけないだろ、俺・・・今にも泣いちゃいそうっていうか。自分が嫌いになりそうだ・・・俺は友達になんてことを・・・」
トモの本意に報いるためにしていることとはいえ、心が苦しくてしょうがない。
すると、急にトモがぬらりとまるでゾンビのように立ち上がった。
「ぐっふ」
「あれ? まだ息があるのか」
「友達にかける言葉じゃない」
トモがギラリと刃物のように鋭い目で俺をにらみつけた。
「あぁ、そうさ。俺はモテない。顔は完璧だが顔以外が足を引っ張っていることも認める・・・」
顔の自信に関してはまったく揺るぎないな、こいつ。
「でもな、健太ぁ。お前も俺と同じ穴のムジナ・・・知ってるぞ」
「知ってる・・・? 自分の命日をか?」
「健太・・・本当は自己嫌悪とかしてないでしょ? ノリノリでしょ?」
俺が・・・トモと一緒? ふざけたことを。俺は別にモテないわけではない。
根拠として、俺は女子にトモのように距離を置かれていないし、むしろ、頼りにされることが多い。正直、この三人の中では一番モテているといっても過言じゃない。
「お前クラスの女子全員から恋愛対象外って言われたことあるんだってな」
「―――がっはっ!!」
俺は見えない血を吐き出し、地面に膝をついた。
こ、こいつどこでそのことを知りあがった・・・っ!
トモは気持ち悪い笑いを張り付けながら続ける。
「いやー傑作だよな。中学の修学旅行。恋愛に花を咲かしていた女子たちの話を盗み聞きして、唯一聞けたことが『柳川君だけは付き合うの絶対無理』なんだもんなぁ」
「――――――っ」
「まぁ? 見方を変えれば、無意味な恋愛をする前にあきらめられる理由ができたんだから、よかったじゃないデスカ! よっ、玉砕確率百パーセントの色なし漢!」
いちげきひっさつ!
俺は肺腑をぼろぼろにされ、穴という穴から出血し、地面に倒れ伏した。止まらないあの時のフラッシュバック。沸き上がる絶望。二年も前のことだというのに、昨日のことのようにその時覚えた感情が精神を支配してくる。
ぐ、ぐががががっががg・・・っ、だ、誰かあの時の記憶を消してくれぇええ!
「貴様なぜそれを知っている・・・?」
♪♪♪
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