第15話 覚醒と死闘
アレンたちが絶望の淵に立たされていると、レナを貫いたヴォイドLv2が突然異様な音を立て、赤黒い光を放ち始めた。その体が脈動し、形状が変化していく。
「なんだ…何が起きてるんだ…?」
対峙しているユアンが恐怖で声を震わせる。
赤黒い光が収まると、半透明だった体は赤黒い硬化装甲に覆われ、スリムで筋肉質な人型のフォルムへと進化したヴォイドが姿を現した。
装甲には亀裂のような模様が走り、その隙間から青白い光が漏れ出している。
胸部には青白く輝く核が露出し、防御膜で覆われていた。
「ヴォイドLv3…」
ナイラが絶望の声を漏らす。
「アレン!逃げるぞ!」
ユアンが叫ぶが、アレンは放心状態で地面に膝をつき、レナの亡骸を抱えて動けないでいた。
「おいっ!頼むアレン、立ってくれ!」
ユアンは立たせようとアレンの体を揺さぶった。
「ヴォオオオオオオオオ!」
ヴォイドLv3が唸り声を上げユアンに鋭い爪を向けた。
ユアンは死を覚悟し目をつぶる。
その時、空を裂くような轟音が響き渡り、強力な電撃がヴォイドLv3を吹き飛ばした。
「……なんだこいつは?」
そこに立っていたのはダリル・クレインだった。
「ダリル…!」
ユアンが驚いたように叫ぶ。
「お前たちは足手まといだ。下がれ。」
ダリルは厳しい口調で言い放った。
「レナが…」
アレンが小さく言いかける。
「死んだ者は戻らない。泣いている暇があるなら、他の仲間を守り生き残る術を考えろ。」
ダリルがアレンに冷たく言い放った。
ダリルがヴォイドLv3に向かってアンブレラを構え直す。
赤黒い装甲に包まれたヴォイドLv3は、俊敏な動きでダリルの放つ電撃を回避し、鋭い爪で反撃を試みる。
ダリルは冷静な判断と最小限の動きで攻撃をかわし続けるが、ヴォイドLv3の機動力と攻撃力は桁外れだった。
「一人では無理だな…」
ダリルが低く呟くと、遠くからAクラスの仲間の声が聞こえてきた。
「ダリル!状況はどうなっている!」
ジェイク・バーナムが真っ先に現れ、息を切らしながら叫ぶ。
しかし、彼の目がヴォイドLv3を捉えた瞬間、驚愕に目を見開いた。
「…なんだあれは?見たことないぞ!」
ジェイクの声に、後から駆けつけたリディア・ウェブや他のAクラスメンバーも足を止め、息を飲む。
「Lv3…ってこと?」
リディアが呆然と呟く。その異様な姿に、全員が言葉を失った。
「おい、立ち止まるな。」
ダリルが冷静な声で彼らを叱責する。
「そいつはLv2までとは格が違う。油断したら死ぬぞ。」
ジェイクがアンブレラを構え直し、他のメンバーも緊張感を漂わせながら陣形を整える。ヴォイドLv3は、Aクラスのメンバーが増えたことで少し動きを止め、一人一人を確認するように左右に顔を向けていた。
「私たちを…観察している?」
リディアが恐る恐る呟く。
「いいか、まずは動きを止めろ。」
ダリルが冷静な口調で命令を下すとAクラスのメンバーは頷きそれぞれの陣形についた。
ジェイクが先陣を切り、強烈な電撃をヴォイドLv3に向けて放つ。
しかし、ヴォイドLv3はその攻撃を軽々と回避し、逆に鋭い爪を振るって反撃する。
「速い!」
ジェイクが叫びながら後退すると、戦闘センス抜群のヴィオラ・ケインが続いて足元を狙った。
「少しでも動きを止める…」
ヴィオラの足元への一撃でヴォイドLv3が倒れる。
しかし、それも一瞬のことで、ヴォイドLv3は直ぐに跳躍し、後方に逃れる。
「どうすればあれを倒せるんだ…?」
ジェイクが汗を拭いながら呟く。
「怯むな、俺が奴の注意を引く。お前たちは隙を狙え。」
ダリルが冷静に指示を出し、自らヴォイドLv3に接近する。
その間、戦場の隅でアレンは放心状態のまま地面に座り込んでいた。
レナの亡骸を抱え、戦いを見ても動けない。
「アレン!アレン!」
ユアンが叫ぶが、アレンは微動だにしない。
「こんな時に何してんだよ!レナが命をかけたんだぞ!」
ユアンが必死にアレンを鼓舞するが、アレンはただ涙を流すだけだった。
Aクラスの連携攻撃が少しずつ実を結び始める。
ダリルが囮となってヴォイドLv3の攻撃を引きつける間に、ヴィオラが足元を狙い
ジェイクとリディアが電撃を核に向けて放つ。
「す、すごい!」
Aクラスの見事な連携にナイラは驚いていた。
狙撃メンバーの遠距離射撃がヴォイドLv3の頭を捉え、ヴィオラが足元を一瞬拘束することに成功し、ジェイクとリディアの放つ電撃が正確にコアへと向かう。
しかし、ヴォイドLv3は胸部のコアを守るように身をよじり、体を回転させながら電撃を回避する。
「コアを守ってる?」
今までのヴォイドにはない行動にリディアが驚きの声を上げる。
「こいつはヤベェな!」
ジェイクが叫びながら、距離を取り直す。
「落ち着いて、ジェイク!」
ヴィオラが鋭く指示を飛ばす。
「やみくもに攻撃せずに、ダリルが隙を作るまで、タイミングを待つのよ!」
ダリルはヴォイドLv3の鋭い爪を間一髪でかわしながら、アンブレラを振り回して攻撃を続けていた。彼の動きには無駄がなく、冷静そのものだったが、それでもヴォイドLv3は全く隙を見せない。
「このままでは消耗する一方だな…。」
ダリルは小さく呟きヴォイドLv3の前でアンブレラを開いた。
「ジェイク、リディア、準備しろ!」
ダリルが短く命令を飛ばすと、ジェイクとリディアがそれぞれアンブレラを構え直し、緊張感を漂わせる。
ダリルはヴォイドLv3に向かってアンブレラを開いたまま一直線に突進し、あえて挑発的な攻撃を仕掛ける。
「どうした、もっと本気を見せてみろ!」
ヴォイドLv3はその挑発に応じるように鋭い爪を振り下ろし開いたアンブレラを破壊するが、ダリルはその攻撃を紙一重でかわし、反撃の隙を作り出した。
「やれっ!」
ダリルが叫ぶ。
ジェイクとリディアが同時に電撃を放ち、その雷光がヴォイドLv3の胸部のコアに直撃する。青白い光が一瞬だけ強烈に輝き、ヴォイドLv3の体が震えた。
「やったか…?」
ジェイクが息を呑みながら呟く。
しかし、その瞬間、ヴォイドLv3が最後の力を振り絞るように唸り声を上げ、口から青白い光線が放たれた。
「避けろっ!」
ダリルが叫び、全員が一斉に退避するが光線はジェイクの展開したアンブレラを突き破り脇腹を捉え重症を負わせた。
「うぁぁぁぁぁ!」
ジェイクは痛さのあまりその場に崩れ落ちる。
その場の誰もがヴォイドLv3の新しい攻撃に驚き、恐怖に立ちすくんでいたがダリルだけは違った。
ジェイクの落としたアンブレラを拾い上げると、一瞬のうちにヴォイドLv3の懐に入り、光線後の隙をついてアンブレラを核に突き刺し電撃を放った。
「死ね!化け物!」
ダリルが呟くとヴォイドLv3は断末魔の叫びを上げながら、その巨体が光に包まれる。そして、爆発的なエネルギーを放ちながら消滅していった。
しばらくして、教官達とAクラスの奮闘もありヴォイドは掃討されたが、そこに精霊ミストラルの姿はなかった。降り続く雨の中、訓練生の屍だけが虚しく残されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます