2話「配信者に誹謗中傷はつきものです」
【ヒーローちゃんねる 登録者数99万人】
『どうも、みんなのココロを檸檬色に染め上げちゃうよ!街のヒーローことれもんちゃんです!
わたしはココ、治安の悪さはダントツな黒白町で配信者として活動してるよ。どんな事件も騒動もまるっと解決しちゃうから、どんどん依頼を寄せてね!』
「はあ〜〜〜…………………」
大瀬檸檬はパソコンに表示されていたチャンネル画面を閉じると深々と溜息をついた。金髪を結ばずに跳ねさせ、芋ジャージに身を包んだ、いつもの部屋着スタイルの檸檬は作業机に突っ伏すと。
「あ〜〜〜…………ヒーロー辞めたい」
「早くね?」
後ろのソファで動画編集をしていた斑目は呆れたようにツッコんだ。白目を剥いて作業机に伏している檸檬は虚な瞳で。
「サンタさんになりたいなあ。子供たちに夢を配るサンタクロースに……1年に1回しか働かなくていいし、天職だと思うんだ……」
「檸檬、現実を見ろ。サンタクロースはいない。……というか、どうした?いつになく後ろ向きだな」
「うん……実はね………」
檸檬はパソコン画面を斑目に見せた。
『ヒーロー気取りとかだっさwwマジでこのチャンネル消えて欲しいわーwwwこのれもんとかいう女もキャラつくってんだろ』
という誹謗中傷のコメントが。
「檸檬……こんなコメント気にする必要はない。ヒーロー気取りなんじゃなくて、檸檬は正真正銘、皆のヒーローなんーー」
「キャラつくってるってなんだよお!配信者なんて大なり小なりキャラつくってるでしょ!」
「そこ!?」
めそめそと泣く檸檬に斑目は苦笑を浮かべ。
「檸檬。何度もいうが配信者に誹謗中傷はつきものだ。それよりも、大事なものがあるから配信者を、ヒーローを始めたんだろ?思い出せ、おまえの本懐を」
「わたしの、半壊……………」
泣いてる人の涙を拭いたい。困っている人に手を差し伸べたい。誰か一人でも多く笑ってくれるなら、それがどれだけ嬉しいことか。そして、その救った掌はわたしがいい。配信を見た人が、この街は大丈夫なのだと、ヒーローはちゃんといるのだと知らせたい。
ヒーローに、なりたい。
「……うん。そうだね。目が覚めたよ!わたしがんばる……ありがとう、斑目!」
そう言って檸檬は満面の笑みを浮かべたのだった。
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