ヒーローちゃんねる活動中!
AOI
1話「ヒーローのオモテとウラ!」
東京、黒白町。
警察ですら見捨てたアウトローたちの都市にはたった一人の"ヒーロー"が居る。
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「こんにちはー!みんなのココロを檸檬色に染めちゃうよ!街のヒーローこと、れもんちゃんでーす!」
【フォォォォォォォォォォーーー!!!】
【来たーー٩( ᐛ )وーーー】
【待ってました!】
『ヒーローちゃんねる』に次々と流れていくコメント欄にれもんと名乗った配信者は満面の笑顔を見せた。
れもんは檸檬色の髪をピンクのリボンでツインテールにまとめた美少女である。服は灰色のパーカーにタイツ、靴はピンクのスニーカー。
「ハイハイっ、みんなどうもどうもー。あ、ちなみに今日カメラ回してるのは緊急配信です!」
【ん??】
【なにかあったん?】
「訳を話すと長くなるんだけどー。わたしはいま、チンピラさんたちに囲まれてます!」
カメラを背後に向けると、そこにはいかにもなチンピラたちが立っていた。モヒカン頭の男、リーゼント頭の男、禿頭の男の三人組だ。舌なめずりをしながられもんを睨みつけている。
【なんでこうなったwww】
【誰だよこいつら】
【ナンパされたん?】
「実は、1時間前……。伝説のツチノコを探しに黒白町を探索していたわたしは、この三人組にナンパされました。『オイ、嬢ちゃん可愛い顔してんじゃねえか、ちょっとイイコトしようぜグヘヘ』と強引に連れ去られようとしたわたしは、この三人がギャングのチーム『シグナル』であることに気がつきました」
【どこからツッコんでいいのやら】
「と、いう訳で………街のヒーローらしく、このチンピラたちを成敗したいと思いますっ!」
「オイ、嬢ちゃんよお………」
今まで黙っていたチンピラ三人組が口を開いた。
「急にカメラ回したと思ったら、茶番は終わったか?」
「ケッ、なーにがヒーローだよ。この終わった町にそんなもの、いるはずもねぇ」
「さっさと俺たちとついてくるんだなぁ!痛い目に合わせたくなければな!」
【わあ〜死亡フラグ】
【チンピラ死亡のお知らせ】
【こいつ、命知らずかよ……れもんちゃんのこと知らねえのか!?】
【インターネット知らなそうな原始人だもんなー】
「てめーら、ケンカ売ってんのか!?今すぐこの女ぶちのめしてーーーぶぐッツ!!」
モヒカン頭にれもんの右ストレートが炸裂した。
鼻血を撒き散らしながら尻餅をつくモヒカンを見て、他の二人は憤る。
「てめえ!!よくもアキを!」
「ぶっ殺してやる!」
拳をれもんに繰り出すチンピラたちに、れもんは不敵にな笑みを浮かべると、脚を振りかぶった。
「そうやって仲間のために怒れるなら」
バキッッ!!
チンピラ二人の鳩尾にまとめて蹴りが入った。
「「ぐあッッ………」」
「二度と、こんな馬鹿な真似はしないことだね」
崩れ落ちるチンピラ二人。
まさに死屍累々。
チンピラたちの屍を前に、れもんは決めポーズをした。
「悪党退治完了!チャンネル登録よろしくね!」
【おおおおおおお!!】
【すげえええーーー!!】
【やべぇ、こいつ……】
【$10000】
【スパチャ!?】
【チャンネル登録しました!】
▼
「じゃあ、事件も解決したことだし!また会おうね!さよならー」
【さよならー】
【めちゃめちゃ楽しかったです!】
「…………ふう」
「お疲れ。れもん」
今まで動画を撮っていたカメラマン、斑目夜(まだらめよる)はカメラを下げるとれもんこと、本名大瀬檸檬(おおせれもん)を労った。
斑目は黒髪に黒ジャージを着た美青年だ。両耳につけた大量のピアスがキラリと光る。
「うん…………疲れたあああー」
檸檬はそう呟くとその場でへたり込んだ。顔を両手で覆い、さめざめと泣き出す。
「もうホントに疲れた……なんなのあのポーズ……わたしみたいなクソダサ陰キャクソ野郎にヒーローなんてやっぱ無謀だよ………」
さっきとはまるで違う陰気な様子。
そう、この顔こそが檸檬の本当の性格である。
斑目は小さく溜息をつき。
「カメラを向けられればヒーローモードに切り替えられるけど、カメラないところだとこれだもんなあ。視聴者たちが見たらなんていうか……」
ぐすぐすと泣く檸檬に再び溜息をついた。
これは美少女配信者であり、皆のヒーローでもある檸檬と愉快な仲間たち、そして視聴者が繰り広げるハイテンションアクションコメディーである。
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