恋、溺れ

@ruca_

第1話

If love be blind,


It best agrees with night.


― W.Shakespeare




ふと窓の方に目をやると外は真っ暗だった。


ああ、もう夜か。


今日もいかなきゃ、あの丘へ。


外は雪が降っている。マントを羽織って身震いしながらあの人の元へ急ぐ。早く、早く、早く…




ライツェルン集会―月に一回、新月の日に集まってお茶会だの相談会だのをする集会。メンバーは一回につき20人くらい。私は半年くらい前から参加している。


最初は友人からの誘いだった。なんでも、相談すると全部解決してくれる、美味しいお菓子付きの楽しい集会であり、メンバー募集中だから来いというのだ。半信半疑のまま参加して見ると意外と楽しかった。いろんな年齢層の方が集まりわいわい喋る。日常生活があまりにも窮屈だった私には息抜きの場としてちょうど良かった。


…あの人が来るまでは。




「レイ、さん!」


私は息が切れ切れになりながらも呼んだ。


「ああ、やぁ。急いで来てくれたの?ありがとう。」


「いえ。遅れそうだったので…。」


そういって顔を上げると優しく微笑んでいた。


レイ。あなたはそう言った。ライツェルン集会の創設者。最初に会ったのは二回目の会合のときであった。


私はこのような人に会ったことがなかった。


絹のような髪、雪のように白い肌、華奢な雰囲気を醸し出していた。そして何よりも瞳。この世のどの星空よりも美しい紺色の瞳。初めてみた時は吸い込まれそうになった…否、吸い込まれたのだ。


レイは私をよく頼ってくれた。相談にも乗ってくれた。友人はそんな私をみて、


「うつつを抜かしすぎだ。危ない。」


と言った。今まで色恋沙汰には程遠い生活をしてきた私に向けての警告だろう。


しかし、その言葉は私には届かなかった。私はとっくにレイに夢中になっていた…。


暗い夜にしか会えないのは寂しいものだ。だがそれでいい。月に一度会えるのなら、私はそれで…。それで…。


「どうしたの?何か悩みでも?」


おっと、考え事をしすぎた。


「いいえ、レイさん。さ、もうそろそろ集会の時間です。ティーカップの準備をしましょうか。」


「そうね。」


月が見えないため時間がわからない。だからこそ良いのだ。この時が永遠であるように思える。この幸せが永遠に続くように思える。憎らしいほど明るい日が昇るまで。




今日集まるであろう全員が席に座った。


「みなさま、お集まりいただきありがとうございます。主催のレイです。この集会ではー。」


といつもの説明が入る。


いつのまにか雪が止んでいた。今日もまたいつも通りの集会が始まる。そう思っていた…。

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