第1話シナリオ

一見ごく普通の健康的な少女に見える女子高生・沙樹。しかし、実際には内部障害を抱えており、余命いくばくもない運命を抱えている。未来さきのことを覚悟しながら、現在いまを楽しもうと必死に生きる彼女の前に立ちはだかる、数々の壁。だんだんと人生に対して諦念を覚えるようになってきてしまっていた。


 たとえば、部活。友達と同じものに入ろうとした。だけど、健康上の懸念を理由に許可が下りない。見た目は普通なのに、何故か大人たちに特別扱いされる彼女を、周囲は次第に敬遠していく。かと思えば、見た目が普通なせいで、周囲と同じ成果を要求されることもある。


「生きるのが、怖い」

「死ぬのは、もっと怖い」


そんな彼女の心の叫びに応える者は、誰もいなかった。


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 一方、こちらもどこにでもいそうな男子高生・富吉。彼が他人と違うところがあるとすれば、校内で不良と恐れられていることだった。


彼は家庭環境に問題を抱えていた。帰っても大抵、【家族】と呼べるものは誰もいない。夕暮れの中、見もしないTVが無意味についているだけのリビング。たまに誰かいるかと思えば、酒を煽って管を巻いているか、寝てるだけ。自身の存在は、あってないようなものだと感じていた。


だから彼は、色々なことを諦めるようになった。ガマンはしんどいから。無いモノを求めたって仕方ないから。最初からなかったのだと、諦めることを覚えたのだ。


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 暗闇の中、膝を抱える少女と少年が出会うのは、もうすぐ。

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