Swaying Train~つま先踏まれ~のストーカー扱いされ〜の恋に落ち〜の【全7話】【毎朝7:04更新】

Minc@Lv50の異世界転生🐎

水曜日

「踏んでしまったのは謝りましたよね?付いてこないでくださいっ!!!」


(えっ?俺?)


 そう声を張り上げた女性は俺を見上げ目に涙をいっぱいためて泣きそうな顔をしながらも必死に俺を睨んでいた。


あ、さっき俺の足を踏んだ女性だ。



         ※



 毎朝通勤のために満員電車に乗るのは苦行でしかない。つり革のあるところに乘れてもドアの広い付近はつり革の根本のバーを持たないと揺れる。


 ガタッ!


 一瞬すごく揺れた瞬間!


ムギュゥゥ!!


「イテッ」

 ヒールでつま先を踏まれ思わず声が出てしまった……


「あ!すいません。大丈夫ですか?」

 頭一つ下から女性が体は満員で固定されているので必死に振り返って謝罪してくれたが真後ろにいたので顔までは見えなかった。


「い、いえ、大丈夫です」

 頭上から答える。


 会社のある駅は結構なターミナル駅なので多くの人が乗り降りする。雪崩のように電車から吐き出され会社に。


 まさか自分の前にその女性が歩いていたとはまったく気づかなかった。そしてまさか会社の前でストーカー扱いされるとは……


 慌てて胸ポケットから社員証を出す。

「えぇっとこの会社で働いている者です」

「あっ……」


 女性は顔を真っ赤にして

「失礼いたしました!」

 顔を真っ赤にして最敬礼の45度で頭を下げた。


 周りも最初は何事?って見ていたけど事件性が無い事を感じ取りむしろ見なかった事のように会社へと足を運んでいく。


 頭を下げている女性の耳が真っ赤になっているのが見えて不憫に思って

「ふっくくくっ…い、いいですよ……そりゃビックリしますよね」

 普通だったら怒ってもおかしくないところを俺は笑って許した。


 女性はバッと顔を上げて力が抜けたのかフニャってした顔になる。なんか特別に美人でも無ければ可愛いという顔じゃないけどなんかすごく可愛く感じた。


「えぇと設計部の内海陽翔うつみはるとです」

「私は経理の川田紬かわたつむぎです。本当に失礼いたしました。足は大丈夫ですか?」


「うん、ちょっと…折れてるかも…」

「本当に申し訳ございません」

 冗談で言ったのにまた彼女こと川田さんは顔を真っ赤にしてまた最敬礼で頭を下げた。


 いや、本当は痛い。まぁピンヒールじゃなかっただけマシなんだと思うがヒールで踏まれるっていうのはマジであの小さいスペースにかなりの圧が来るので本当に痛い。満員電車でピンヒールを履く女性はサイコパスだと思っている。


「ふふっごめんごめん。大丈夫だよ。さ、遅刻しちゃうといけないから入ろう。川田さんは着替えもあるんでしょ?」


 はっ!と川田さんは分かりやすく気付いて

「本当にすいませんでした。私急ぎますので失礼します」

 ペコッと頭を下げて更衣室へとダッシュした。


 まさか、足を踏まれてなおかつストーカー扱いされるとは……あの同じ会社の人間だって分かった時の川田さんのやらかしたぁって顔を思い出すとまた笑えてきた。


 ふぅっとため息をついて社内の自販機でコーヒーを買って企画室へと向かった。


 まぁ、入社して5年……経理の人との関わりもほとんどなく、今まで知らなかった人だからまた会うなんて事はもう無いだろう。


 また踏まれてもいいように安全靴スティールトゥーの靴でも買おうかな


 とりあえずネットショップ密林で安全靴スティールトゥーを検索した。










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