第2話 戦下で君は...

初めはびっくりした。とにかく。毎夜毎夜いつ戦争に駆り出されるんだろう、だったりを考え続けていた。

しかしそんな俺の思いは杞憂に終わったようだった。どうやら今は睨み合っている状況で実際に戦いは起こってないらしい。

俺は少しホッとしたのかベッドに横たわった状態で響にメッセージを送った。今思えば自分は響と話して安心したかったんだなと思う。


「今、なにしてる?」


「勉強してるよー👌」


「呑気なもんだな」


「学生は勉強が義務ですから📖」


「確かにそうだね」


戦下だっていうのに彼女と話すと落ち着く。やっぱり俺は彼女が好きだなぁ、と再認識した。


そこからの日々は何ら変わりない普通の生活がずっと続いていた。一抹の不安は払拭されないものの、それなりに充実した学生生活を謳歌していたと思う。言ってしまえば戦争より恋愛の方が俺にとってはすごく重要な事だった。


どうやってアプローチしたらいいかな?


デート?一緒に帰ったりとか?


そんなことを考えてた。過去の俺からは想像もできない進歩だ。そこで俺は更なる高みを目指すために、今日、彼女をデートに誘ってやるぜと息巻いていた。ただし、俺は生粋のコミュ障である。故にデートに誘うなど今までした事も無いし、恥ずかしい!!しかも響はちゃんとクラスの男子からもモテモテだ。正直俺の入る隙ねェ。しかし漢にはやらなきゃいけねェ時がある!!と自分の心を鼓舞し、メッセージを送った。ドキドキだ。


「ポピーン」


通知音が鳴った。頼む断らないでくれ!


「ごめんなさい、彼氏がいるのでちょっと2人だけってのは...」


俺の中で何かが崩れた。


いたんだ彼氏

無駄だったな、メッセージ

送んなきゃ良かったかな


初めてのデートのお誘いであり、初めての失恋だった。ダメ元でやった事だったのに、何でだろうな。

その日は泣いた。


次の日からの世界はより一層黒ずんでて、何の希望もなくて汚かった。とても。


「なんの為に生きてんだろ、俺」


最早俺はただの空っぽな人形だった。響の隣に彼氏がいる事を想像すると吐き気がした。そして自分の惨めさを改めて実感する。いっそ全部なくなってしまえとも思った。


しかし翌日にはまた学校があり生活がある。弟は相変わらずゲームしてるし、振られたからといって何一つ変わりはしなかった。


俺はいつものようにホームルームを終わらせて帰ろうとしていた。その時、見知らぬクラスメートに声をかけられた。


「お前、響に告ったんやって?ありえねー釣り合う訳ないやん。アホかよ。そもそも彼氏いるのわかって告ってるん?」


クラスの注目は俺に集まった。刺すような視線だ、ここにいるのも苦しい。俺は何も返答せずにそそくさと帰宅した。その日から俺はいじめの標的にされた。簡単な話だ、目立たない陰キャが露呈したから暇つぶしにいじめる。よくある事だ。日に日にエスカレートしていくその行動は誰の目にも留まることはなく、響も俺を無視した。そしていつしか俺は学校にすら行くのを辞めた。ウンザリしたんだ。全部に。


そこからは空虚な生活の始まりだ。食って寝る、食って寝る、食って寝るの繰り返し。時間は止まってはくれないし、戻ってもくれない。

俺は死んだようなものだ。ただの屍、死に体だ。結局、俺はネットに明け暮れた。ネットでゲームしたり小説読んだりさまざまだ。


そんな時だ、俺があの小説に出会ったのは。




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