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トントントン。カタカタ。ジューー。
ハンバーグが焼きあがる音と、味噌汁づくりの音が聞こえている。祖母のそばには、小学生の俺が立っている。さっきよりも背が高くなっていた。
「おばあちゃん。お味噌をといたよ」
「ありがとう。テーブルを拭いてちょうだい」
「はーい」
そっと祖母の近くまで行って手を伸ばしたのに、すーーっと通り抜けてしまったから、やっぱり夢だと分かった。それなのに、祖母が俺の方を振り返った。
「悠人、大きくなったわね。おばあちゃんより背が高いじゃない」
「大学生になったもん。170センチあるんだよ。……あれ?」
「おばあちゃん。もう小学6年生だよ。155センチあるんだ」
「もうそんなに?4月に計った時は……」
祖母が話しかけたのは、小学生の俺の方だった。
そっか。これは夢の中だ。俺に気づいたわけないよね。今は170センチあるんだよ。150センチのおばあちゃんより、20センチも大きくなったんだよ。会って言いたかったなあ。
もっと話したいことがある。お父さんとお母さんが離婚したよ。お父さんには再婚相手がいて、もうすぐで子供が産まれるんだ。女の子だって言ってた。
お母さんにも恋人がいるんだ。紹介したいと言われたら、大人として会うよ。毛嫌いはしない。お母さんが寂しくないからだよ。少しばかり、俺は大人になれた。
俺が大学の寮で暮らすようになり、就職はこっちですると思うから、俺達が住んでいた家は処分する話が出ていたんだ。家に帰らないだろうと、お父さん達が言ったんだ。俺達が家族だった証が無くなり、帰る場所が無くなることに悲しんだよ。結局、もう少し置いておくことにしたんだけどね。でも、俺は大丈夫だよ。もっと報告したいことがあるからだよ。
おばあちゃん。あなたに習ったピアノのことを思い出している。あなたが亡くなる前は、俺はロックバンドの楽曲を聴いたことがなかった。高校入学後に聴き始めたんだ。すぐにギターを練習したよ。そして、とても信じられないことがある。ロックバンドのギタリストとして、プロデビューを控えているんだ。
おばあちゃん。あなたに紹介したい人がいるよ。裕理さんというパートナーだよ。素敵な人だよ。一緒に暮らしている。結婚の誓いも立てたんだ。俺達は婚姻届が出せない。つまりは、離婚届も出せないということで、一緒にいるしかないんだって、裕理さんが言ってくれたよ。だから心配しないでね。俺は幸せに暮らしているからね。
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