第4話 秘密の約束

華乃の手の温もりが残るまま、輝人はそっと彼女をリビングのソファに座らせた。部屋の中は静かで、時計の針の音だけが響いている。


「華乃、飲み物いる?」

「うん…お水、もらえる?」


輝人はキッチンで水を用意しながら、ちらりと華乃の様子をうかがった。彼女は膝を抱えるようにして座り、どこか落ち着かない様子だった。


「…やっぱり、無理言っちゃったかな?」華乃が小さな声で呟いた。


「そんなことないよ。俺はむしろ嬉しい。華乃が俺を頼ってくれたのが。」


そう言いながらコップを手渡すと、華乃はほっとしたように微笑んだ。


「ありがとう、輝人。…こうして2人きりなの、なんだか不思議な感じ。」


「確かに。学校で会うのとは全然違うな。」


2人はしばらくの間、静かに話をしていた。学校での何気ないことや、思い出話。いつもならすぐに流れていくような会話が、今夜はどこか特別に感じられた。


「ねえ、輝人」


華乃がふと、輝人の隣に寄り添うように座り直した。驚いて顔を向けると、彼女は少し伏し目がちに続けた。


「…今夜だけ、甘えてもいい?」


その言葉に、輝人の心臓が大きく跳ねた。


「もちろん。華乃が安心できるなら、なんでも言って。」


すると華乃はそっと輝人の肩にもたれかかってきた。


「ありがとう…なんか、輝人といると落ち着くんだ。」


輝人はドキドキしながらも、華乃の細い肩をそっと支えた。こんなに近くで感じる彼女のぬくもりが、心地よくてたまらない。


「華乃…」


「ん?」


「もし、明日になっても華乃が帰りたくなかったら、そのときはまた俺を頼ってくれよ。」


華乃は少し驚いたように輝人を見つめたが、すぐに優しく微笑んだ。


「うん、約束する。」


輝人の心に、今まで感じたことのない感情が溢れていく。この一夜が、二人の関係を変えてしまうかもしれない。


「今夜だけ」じゃなくて、本当はずっと隣にいてほしい――。


その想いを胸に抱きながら、輝人はそっと華乃の髪を撫でた。

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