第2話 俺、不思議な出来事に見舞われる
無事新居に入居した。今は夏だが今のうちにストーブの準備をしておこう。駐車場も舗装しておきたい。必要な工事が終わった次の日ドーン、ヒュードーンと花火の音が聞こえた。花火大会が始まったようだ。
缶ビールとつまみを持って3階のベランダに行った。イスとテーブルは昼のうちに設置してある。
そこで見た光景は驚くべきものだった。
綺麗な夜景が広がっていたからだ。視界を遮る山が無く、人の営みを示す電気の照明が煌めき、100万ドルの夜景を見せている。さらに花火が真横で見る様に花開く。
考えられることはこの家が100m以上高くなった⁈向かいの山が消え去った⁈
どちらにしてもあり得ないことだ。
俺は慌てて屋上に行く。屋上には太陽光発電のパネルが設置されていた。南側を見るとさっきよりも鮮明に人家の明かりが煌めいて見える。家が塔のように伸びていた。超高層マンション等比較にならないくらい高くなっている。北側に回ってみるとこちらも裏山よりも高くなっているのが分かった。しかもちらほらとだが人家の明かりが見えた。地図ではこっちも山々が連なっているはずなのに!
家の中に戻ると3階建ての家だった。1階の玄関を開けると舗装された駐車場と家庭菜園の畑が有った。外に出てみると町の夜景は消えて山々の連なりが見えた。振り返ってみると3階建てのわが家が有った。夢を見ていた気分だった。
翌日は裏庭に回ってみた。ガレージの北側にもシャッターが有ってそこから裏山に向かって道路が伸びている。どういうことだろう?ガレージのシャッターを開けると鍵付きの軽トラックが止まっていた。俺が乗ってきた車との間には壁があった。昨日止めた時には後ろにも収納スペースがあるなんて気が付かなかった。
軽トラに乗ってキーを回すとエンジンはスムーズに始動した。
「新しいオーナー様を登録します。お名前を教えてください」と、車がしゃべった。
「野中航太だ」
「コータで登録しました。私はここ【分界嶺】のナビゲーター兼サポーターのヨンクと申します。宜しくお願いします」
「分界嶺って何?」
「ここは現世と異世界との分かれ道です。言うなれば分水嶺みたいなものです」
「異世界って?」
この裏山には剣と魔法の世界に通じる道があります。【ショホタウン】という町に行ってみますか?」
「うん。でもお金はどうするの?」
先代のオーナー様が所持していたお金がマジックボックスに入っています。戦闘と売り物になる植物などは私が受け持って収納していきますのでご安心ください慣れてきましたらコータ様がご自分で戦闘できるようになりますのでそれまでは私にお任せください」
マジックボックスと念じると収納されているものが脳内に表示された。
異世界用の服と武器となるナイフと魔力銃を身に着けて【ショホタウン】に出発した。
草やら倒木やら岩やらが行く手を邪魔するが勝手にマジックボックスに収納されていく。後程いらないものは処分することにしてどんどん進む。
山に遮られることもなく、トンネルも通ってないのに道は下り坂になった。山をすり抜けたらしい。その間に金銀銅などの鉱石や薬になる苔や草が収納されていた
俺はハンドルに手を添えてはいるが操作はしていない。ヨンク(軽トラ)が勝手に走っているのだ。やがてウサギやら狼やら熊やらの頭に角が生えた獣が現れるがクラクションが鳴ると動けなくなってヘッドライトの光が当たると消え去って肉とか、毛皮とか角だとかがマジックボックスに収納されていく。まるでゲームかアニメのようだ。この辺は実はダンジョンなのか?
「まもなく町の近くです。入場門のところで銀貨2枚とられます。用意してポケットに入れておいてください」
ヨンクはそう言って停車した。
「ここからは歩いていきます。私はマジックボックスの中で待機しています。必要な時はテレパシーで聞いて下さい」
シュンと消えた。確かにマジックボックスの収納物表示にヨンクが有る。
さあ、異世界冒険の始まりだ。
続く
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分界嶺 霞千人(かすみ せんと) @dmdpgagd
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