分界嶺
霞千人(かすみ せんと)
第1話 俺、田舎に家を買う
俺の名は野中航太26歳。しがないサラリーマンだったが、宝くじで12億円当たった。即刻会社を辞めて以前から憧れていた田舎での自給自足生活に踏み出そうと決心した。
ふらっと立ち寄った地元の不動産屋にその村のパンフレットが有った。2000坪の敷地の鉄筋コンクリート造3階建て建坪100坪。ガレージ付き、家庭菜園付、おまけに農機具、倉庫付き、驚いたのは山付きだった。その値段がたったの1000万円。
そんなに安いなんて訳アリ物件なのだろうか?そこの村も聞いたこともない片田舎でこれは1度自分の目で確かめてみないとなと、買ったばかりの4WDの自動車で出かけた。雪国育ちの俺は雪の少ない関東以南を探していた。その土地も年に数㎝しか降らないらしいので合格だ。道が舗装されていない恐れがあるので4WD車を選んだのだ。
○○県□市△町の2級河川沿いの国道を走り、山に向かって進むと町から1時間ほどで目的の村についた。
村の不動産屋に寄ってそこの職員に案内して貰うことになった。
目的の物件はその村の北端に位置する所で、途中から舗装されていない道に入って5分ぐらいで着いた。途中途中に店は無く、買い物には車で1時間ちょっと走らないといけないみたいだった。村人は1日往復4便のバスを使うか自家用車を使わないと生活出来ないみたいだ。
目的の物件は山の中腹に有った。広い敷地の北側に建物が建っていて日当たりの良い南側に家庭菜園の畑が有った。建物の後ろの小山が付属の山だった。夏の今頃は緑1色だが春は山桜が咲いて見事な風景になるらしいし、秋は紅葉が素晴らしいと言われた。
「この山は沢が流れていて岩魚が生息していて,遊漁券を買わなくても釣っても良い」という。更に春は山菜採り、秋はキノコ狩りが楽しめるのだそうだ。
元は東京の資産家の老人が別荘として建てた家なのだが、急逝したので、遺産として相続した人が田舎暮らしに興味がなく、固定資産税を払いたくないというので格安で売りに出したのだという。
条件として一括払いで買うこと。村の不動屋さんは買戻しは出来ないという。今現在の村の人口は50人で殆どが70歳以上でその内廃村になりそうだ。
この辺の土地の価格は2足3文で売り物には出来ないらしい。
俺も米作りまでする気は無いし、肉や米は町で購入するとつもりだったから一生働かなくても暮らしていける金は有るので遊んで暮らすには良いところだと思って買うことにした。村人にはパソコンを使った仕事なので出勤する必要がないということにしよう。
スマホは圏内だし、パソコンもコンセントに刺すだけで使えるWi-Fiが使えるし衛星放送のテレビも見れるし地上波デジタル放送を見たければ南側にアンテナを向ければ隣の市町村の電波を拾えると言われた。
ガスはプロパンガスで灯油もガソリンスタンドに頼めば配達してくれるという。
薪ストーブもつけれるようになっているので暖房には困らないだろうとのことだった。
滅多に停電しないが太陽光発電の設備を導入すれば安心だ。
南側の庭(駐車場)から見ると向かい側も山が有ってここ以外に人家は見えない。
ご近所とのトラブルもなさそうだ。
「もうすぐ夏祭りのがやってきますがあの南側の山の向こうで花火大会が有るんですがこの家の3階のベランダから花火が見えるそうですよ夜景も見れるそうです」
不動産屋さんが教えてくれた。昼では山しか見えない。そのときはあまり気にしなかった。ここで可笑しなことに気付くべきだった。地図で見ると隣の市は南ではなく西側にあるのだ。
一旦街に戻って銀行に寄って料金を振り込み、家の鍵を貰って、登記簿などの書類は引っ越してきたときに渡してもらうことになった。
色々と必要なものを買いそろえて新居に引っ越してきたのは5日後だった。
その間に電気、水道、プロパンガスを使えるようにしてもらっておいた。
続く
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