ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる
@zechs669
第1章 美少女♂誕生
プロローグ
「はあ、はあ……何なのよ、アレは!?」
女子高生が何かから逃げている。女子高生を追っているのは頭の無い天使のような怪物。その手から発射されたビームが地面に突き刺さり、女子高生が爆風に巻き込まれて転がる。地上へと戻ろうにも、階段はまだ先。しかも爆風の影響で足をひねってしまったらしい。破れかぶれに手にしている銃で天使に向かって発砲するも、銃痕がぐじゅぐじゅと泡立ち、すぐさま何もなかったかのように再生する。
「なんでDランクのダンジョンに推定Aランクの化け物がいるのよ!」
女子高生のランクはCランク。Dランクのダンジョンなぞ小遣い稼ぎできる場所でしかなかった。にも拘わらず、目の前には自分よりも圧倒的格上の化け物。EXギアを通じて救援要請を出したものの、Dランクのダンジョン内での救援でAランク相当の探索者が助けに来てくれる確率はどれだけあるだろうか。
天使の手に再び集まる魔力光、もう駄目だと思った時、女子高生の背後から黒い弾丸が1発飛んでいく。放たれた弾丸は集まっていた魔力光をかき消し、腕を貫いていく。しかも、どういう理屈かは分からないが、自己再生する様子も見当たらない。さらに発砲され、数発の弾丸が胸元に撃たれると血が噴き出し、絶命する。
「天が見捨てても、星はいつでも見守っているわ。助けに来たわよ」
女子高生が声の主を見ようと振り返る。自分たちとは同年代の少女。探索者に似つかわしくない黒いゴスロリの衣装、ややけばさを感じ入るメイクではあるが、むしろ彼女の人外さを引き立たせているようにも見える。
「……エクステラ?」
「そうよ」
今年の春、突如として現れた推定Sランクの探索者エクステラ。巨大な力を持ちながらも、どこにも所属していないと言われている彼女には日本政府から膨大な懸賞金が掛けられている。その額はなんと3000万円。一個人に掛ける額ではないが、それほどまでに脅威とみなされてもおかしくはない実力の持ち主であるのはCランクの自分でもわかる。
(推定Aランクの化け物をあんな簡単に……これがSランク!)
「立てるかしら?」
「いえ、右足をひねってしまって……」
「そう……動かないでね」
女子高生の右足に触れた瞬間、先ほどまで感じていた痛みが無くなる。何かしらの回復魔法でも使ったのだろうかと思いながら立ち上がる。
「ありがとうございます」
「感謝はまだあと」
「えっ? それはどういう――」
女子高生が疑問を呈した瞬間、空間を切り裂いて先ほどの天使8体がやってくる。その脅威は女子高生自身が身に染みてわかっている。いくらSランクいえども一人では勝てないと。
「たった8体。甘く見られたわね。私一人でも対処できるけど……貴女、力になりなさい」
「無理です。私の攻撃なんてちっとも効かなかったんですから」
「効けばいいのね。星の力を貸してあげるわ」
エクステラが女子高生の右手を握ると手の甲に謎の文様が浮かび上がり、体の中に魔力が入ってくる感じがする。
「こ、これはいったい……?」
「ヘイローを破壊してから本体を撃つのよ」
エクステラがそういうと、銃から剣に切り替え天使たちの懐に飛び込む。この場で一番の脅威はエクステラ。彼女一人に攻撃が集中する。いくらSランクと言っても、躱し続けるにも限度があるはず。自分も戦力にならないといけないと、天使の輪っか、ヘイローに向けて銃口を向ける。
とにかく再生能力があるなら、今ある魔力をできる限りかき集めてトリガーを放つ。すると、想定以上の極太ビームが放たれ、ヘイローを粉々に粉砕する。
「こ、これが噂の『他人をSランク相当に引き上げる異能』……って、呆けている場合じゃない。本体に攻撃しないと!」
すぐに本体の胸元に向けてビームを放つ。心臓を撃ち抜かれた天使1体が倒れ、女子高生も脅威と感じた天使たちが振り向く。だが、攻撃の手を緩め、エクステラから目をそらしたことで、瞬く間に切られて倒れていく。数が減れば、エクステラの脅威にすらならない。あっというまに残る天使を切り倒し、地に伏せさせるのであった。
「【接続】解除……大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
「倒した天使、半分は持って行っても良いわ」
「それはちょっと……ほとんど何もしていないし」
推定Aランクの化け物の素材など間違いなく高値で売れる。小遣いどころではない。だが、討伐したのはたった1体、しかもエクステラの異能を使った上での勝利。とてもじゃないが、山分けにしてもらうのはおこがましい内容だ。
「その内、すぐ手に入るから大丈夫よ」
「その内って……私、戦いたくないんだけど。そこまで言うなら、わかりました。では4体分貰います」
EXギアを銃からスマートフォン型に戻し、倒れた天使をデータとしてEXギア内に保存する。
「私は天使がまだやってこないか確認してから帰るから、先に帰ってね」
「一応、私の【感知】には引っかから無かったので大丈夫かと思います」
「助かるわ。これはお礼」
女子高生の足元に地上へと戻る魔法陣が描かれる。何から何までお世話になりっぱなしだと思い、頭を下げると、女子高生の姿は消えるのであった。そして、周囲に人が居なくなったことを確認してエクステラは低めの声で手持ちのEXギアに話しかける。
「……ステラ、周囲に敵性反応は?」
【次元湾曲反応なし。どうやら、ただの先兵だったみたいですね】
「『原作』とは違う流れになりつつある。厄介だな」
【天使が出るのはもう少し後って言ってましたしね~それにしても美少女を傷つけるような輩がどこが天使ですか。プンプン】
「それは敵さんに言ってくれ」
【それにしても美少女が板についてきましたね^^】
「お前の趣味だろ、これは」
【私を扱って良いのは美少女だけ。美少女しか勝たん。この世全てを美少女にすれば平和になるのです】
「それだとお前の大好きな美少女が生まれないな」
【それは大問題ですね~解決策を考えねば】
「やれやれ。敵がいないなら帰るぞ。自衛隊に見つかったら面倒だ」
【美少女はミステリアス。これは大事です】
「俺は女装している偽物だがな」
エクステラがそういうとその姿が消えるのであった。彼がなぜ女装してダンジョンに潜ることになったのかは春先まで戻るのであった。
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