第4話

その日もいつかの昼休み帰りだった。


猫部屋の大窓におでこをつけそうなくらいに張り付く私に呆れた千明ちゃんが先に行こうとしていた。



「あっ」


「どうしたの?」


私の視線を追う千明ちゃん。

その先を見つけて”ああ”と納得する。


いつもなら居ないような人が猫部屋にいた。

わたしの愛しのチャップ君にナデナデしている男性。


彼も大きな手に撫でられて気持ち良さそうに目を閉じている。


男性は人目を惹くような容姿をしていた。

そう考えたのは私一人ではないようだ。


現にいつもは私しかいない窓際のギャラリーに人が集まり始め、あれよあれよという間に外へと追いやられてしまった。



「あの人ね、今月から入社した黒田さんって人らしいよ。他の会社から中途採用で来たんだって。うちからの誘いがあったとかなかったとか言われてるらしいよ」


「へぇ~、もしかしてヘッドハンティングってこと?」


「さあそれはわからないけど。この業界では有名な人らしいね」


「そうなんだ」



野次馬が大きくなり、いよいよ二人(男性+チャップ様)の姿が見えなくなる。


その直前、大きな手の持ち主がこちらを見て微笑んだ気がした。



「え、なに?」


隣にいた千明の方を見たけど、わたしの声に千明ちゃんは気づかないように先に行ってしまった。



なんだったんだろう?

一瞬こっちを向いたとき、どこか心がざわつくような感じがした。

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