第2話 恩送りの種
玲子から教えられた「恩送り」の考え方に触れた晴人は、その言葉が心の中でじんわりと広がっていくのを感じていました。しかし、どうすれば恩送りが本当に未来につながるのか、その方法はまだぼんやりとしていました。
「恩送りって具体的にどうすればいいんだろう?」
その夜、晴人は星空を見上げながら考えました。玲子の言葉は確かに素晴らしい。でも、どんな行動が未来へ繋がるのか、答えはまだ見つかりません。
翌日、晴人は町の広場に行き、困っていそうな人に声をかけてみました。
「おじいさん、大丈夫ですか?荷物をお手伝いしましょうか?」
買い物袋を抱えた高齢の男性に声をかけた晴人。男性は一瞬驚いたようでしたが、にっこり笑って「ありがとう、助かるよ」と言いました。その笑顔に、晴人の胸が温かくなりました。
その日から、晴人は日常の中でできる小さなことから恩送りを始めました。困っている人の手助けをすること、ゴミを拾って町をきれいにすること、子どもたちに勉強を教えること。どれも目立たない行動でしたが、晴人はそれを続けていきました。
ある日、晴人は近くの川辺を訪れました。幼い頃、友達と遊んだ思い出の場所です。しかし、川の水は濁り、周囲にはたくさんのゴミが散らばっていました。
「こんな状態じゃ、未来の子どもたちはここで遊べない…」
晴人は心を痛め、川を元の美しい姿に戻すことを決意しました。翌週、近隣の住民たちに声をかけ、川の清掃活動を始めました。活動に賛同した人々が少しずつ集まり、晴人を中心に自然を守るための小さなコミュニティが生まれました。
活動を続ける中で、晴人は未来の世界に価値を残すには、自然環境を守ることが不可欠だと気づきます。
「環境を守ることは、未来の人たちへの贈り物だ。」
晴人はその思いを胸に、さらに行動の幅を広げていきました。
晴人の行動を見ていた周囲の人々も、次第に彼の考えに共感し始めます。
「晴人君のやってること、素敵だね。私も何かできることをしたい。」
「未来のために、私も手伝わせて。」
そんな声が少しずつ増えていき、晴人の活動は地域全体に広がっていきました。恩送りの輪は、人から人へとつながりを広げていったのです。
晴人はふと、玲子が言っていた花壇の話を思い出しました。
「誰かが種を蒔けば、それは未来に花を咲かせる。」
晴人の心に一つの確信が生まれました。自分がしている恩送りの行動は、未来に確実に種を蒔いているのだと。
ある日、清掃活動を手伝いに来た子どもたちの一人が、晴人にこう言いました。
「僕、大きくなったらこの川をもっときれいにしたい!お魚がいっぱい泳げる川にするんだ!」
その言葉を聞いたとき、晴人は「恩送り」の力を実感しました。一つの小さな行動が次の世代の夢や希望につながり、それが未来を変えるきっかけになるのだと。
恩送りはただの優しさの連鎖ではありません。それは未来を形づくり、新たな可能性を生み出す力を持っているのです。
晴人は、これまで以上に恩送りに真剣に向き合うようになりました。ただの個人の行動ではなく、未来に種を蒔くような行動を意識し始めたのです。
「未来の世界を幸せにするために、今できることを全力でやる。」
それが晴人の新たな決意でした。そしてその小さな種は、やがて未来の世界に大きな花を咲かせることになるのです。
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