第12話特例許可証
入学試験から3日後、僕と母さんは再度スクールを訪れていた。理由はギルドカードの発行とステータス情報の作成の許可証を受け取るためだ。
「先日はお見苦しいところをお見せしてしまって、申し訳ありません」
学長室を訪ねた僕と母さんに、学長先生が改めてお詫びの旨を口にする。
「いえいえ、こちらこそ。突然の申し出にもご対応していただき感謝しております」
すると母さんは学長先生のお詫びに対して感謝で返す。
「ははは・・・・・・。そう言ってもらえると助かります」
その返しに少し痛いところを突かれた様頬を指で掻く学長先生は、社交辞令もほどほどに本題に入り始める。
「では、早速本題に入りますが、リアムくんの入学とギルドカード発行の許可証は無事取得できました」
この国ではギルドに登録しなければオブジェクトダンジョンに入ることができない。通常のダンジョンについては登録がなくとも入ることはできるが、魔物の素材や魔石の買取もほとんどギルドが担っているため、ダンジョンに挑むのであればギルドに登録するのが一番だ。
それにギルドに登録するとステータスの魔石がもらえる。ステータスの魔石はギルドカード同様精製方法はギルドが独占・管理しており、その魔石を身につけて「ステータス」と念じれば自分のステータスを見ることができるらしい。
だがギルドに登録するには10歳を迎える、またはスクールや学院に所属している必要がある。なぜスクールや学院に所属していると優遇処置が取られるのかというと、魔法の授業にステータスがあると自分にあった魔法の練習や
さらに、オブジェクトダンジョンの中で負った怪我やもし死んでしまう様なことがあってもダンジョンの外に出ることで回復するし復活もできる。つまり、危険な魔法の練習に対人戦の試合もダンジョンに入ることでいくらでもできるというわけだ。
そしてこれらの理由でギルド登録が必要となれば、逆にそれはスクールや学院に通う子どもたちのギルド強制登録を意味している。ギルドには年会費の様な会員費は存在しない。そのためギルド登録しただけでは利益を見込むことができない。しかしこれらの子供たちが魔物を狩ったり、採集した素材をギルドに売ってくれれば手数料や仲介益といった利益が出る。ダンジョンで得た素材は絶対にギルドに売らなければならないという規則も存在しないが、ギルドという市場はとても巨大であり、一定の適正価格で素材を買い取ってくれるため「素材を売る場合はギルドで」というのがどうやら
ちなみに、10歳というのは「自分で判断して動くことのできる年齢」という最低ラインの様だ。魔物や魔法という概念が現実に存在するこの世界では、自立するための能力については前世と比べて著しく高い。そして、10歳を迎えていないスクールや学院の生徒は保護者や教員の同伴が推奨される。
「ありがとうございます」
僕は学長先生が手渡してくれる許可証を両手で受け取る。受け取った許可証には特例を認める旨と、領主の名前『ブラームス・テラ・ノーフォーク』の署名が記されていた。
「では、入学式までにギルドでカードの発行とステータスの魔石を作る様に」
「はい!」
思いつきからここまでトントン拍子で進んできたが、遂にダンジョンに入るためのギルドカードとステータスを確認することのできる魔石が手に入る。転生してから四年半、赤ん坊の頃から物事を考えることのできた僕にとって、この期間はとても長く感じた。ファンタジー世界でようやく魔法を使える様になるはずだった初めの精霊契約ができなかった。しかし、精霊魔法はあくまで精霊を介して魔法を使う技術。僕は自分自身の力で魔法を行使する術を学ぶ環境も遂に手に入れたのだ。
▽ ▽ ▽ ▽
冒険者だった父さんの仕事は今も冒険者だ。では昔と何が違うのかというと、難易度の高くない依頼の片手間に簡単に手に入る薬草採集や魔物を狩って生計を立てる方針へとシフトしたことだ。昔は母さんや他のパーティーメンバーと高ランクの依頼をこなしていた様だが、今はいわゆる低ランクの仕事をこなしているというわけだ。
そんな父さんは今日もオブジェクトダンジョンに出向いている。僕と母さんは学長先生と今後の打ち合わせを済ませ、ギルドでカード発行をするため父さんが仕事を終えるのを、待ち合わせのダンジョン近くのカフェで待っていた。
ギルド支部はオブジェクトダンジョンの中と隣にある。ギルド支部は中の第1支舎と外の第2支舎に別れており、第1支舎は冒険者の登録や素材の買取などを行っている。第2支舎は商会へ素材を降ろしたり取引するなど、内と外にその役割を分けている。
そして円形の大きいコロシアムの形をしているオブジェクトダンジョン「テール」の四方には、ギルドノーフォーク支部第2支舎、教会にスクールなど様々な主要な施設が集まっている。さらにこの街はテールを中心に開発されているため、円形に街を囲う外壁の東西南北にある門へと繋がる主要な道が真っ直ぐ伸びているため便も良い。
カフェで母さんとお茶を始めて小半刻ほど経った時、仕事を早く切り上げた父さんが合流する。父さんが合流し、今日向かうのはギルド支部第一支舎だ。つまりオブジェクトダンジョンの建物内に僕たちは向かう。
目的地へ向かう僕は今日もらった領主様の署名入り許可証を父さんにも見せたりと会話を弾ませて目的地へと向かっていた。
すると突然、父さんが今更な疑問をつぶやく。
「そういえば、なんでリアムはあんなに難しい問題が解けたんだ」
唐突な父さんの呟きに心臓が飛び出しそうになる。
「た・・・偶にカリナ姉さんが勉強してるのを一緒に見て覚えたの!」
父さんの疑問の答えを誤魔化そうと焦るあまり、急に子供ぶりっ子が出てしまう僕はさらに焦る。しかし ──
「やっぱりリアムは天才だったか。いや〜まだ4歳なのにこんなにしっかりしてるんだからな」
「そうね。なんせ私たちの子どもですもの!」
この家族でよかった・・・・・・なんせ僕はまだ4歳児。この世界の子供は早熟で自立が早いが、流石にここまで物事をはっきり伝えたりすることはない。しかしそれを「天才だ」で済ませてしまう両親には、内心ホッとしつつも僕も思わず苦笑いだ。
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