第10話カリナへの謝罪
sideリアム
「ごめんなさい」
現在謝っているのは学長先生でもアランでもない。
── そう、僕だ。
そして謝っている相手はカリナ姉さん。理由は今日のスクール試験の交渉の時、交渉ネタにカリナ姉さんを引き合いに出してしまったからである。まあ、僕が交渉材料に使ったわけじゃないんだけど。
それでも身から出た錆、僕が我儘を言ったことが始まりなので、しっかり謝っておかないとね。
人の威を借りること自体が悪いとは言わない。しかし、それが意に削ぐわなくとも借りる、それも事後承諾によってその威を借りてしまったのであれば、それにはできるだけ礼を持って返さなければならない・・・・・・というのが僕のモットーの一つだ。というか、どこかで借りを作ってそれがバレたり、あとから面倒になるのが嫌なだけなんだけど。
そして今日起こった事の顛末を説明したあと頭を下げる僕に、カリナ姉さんはどこか不敵な笑みを浮かべている。
『これは、怒ってるのか?』
まあ、僕も自分で築き上げた実績や力を知らないところで使われたりしたら怒るだろう。それで悪い事をされた日には堪ったものじゃないから・・・・・・。
「その、ごめんなさい」
何も言わないカリナ姉さんに不安になってもう一度謝罪の意を声に出す。
「大丈夫だってリアム。お前は気にしすぎだ」
すると返ってきたのは父さんの声だった。父さんは現在「今日はお祝いだ!」なんて言って、どのお酒にするか酒瓶を品定めしている。
『いや、ある意味父さんも共犯だと思うんだけど。というか主犯は父さんと言っても過言じゃないんだからね!』
なんて僕は父さんの言葉に思ってしまう。しかし同時に『本当に気にしすぎなのか?でも、カリナ姉さんは僕の謝罪に答えてくれないし・・・・・・』という不安も拭えず、考えてどう行動すればいいのか戸惑ってしまう。
もしかしたら「人には基本頼らない」「その方が面倒がない」と思ってしまうのは、前世でぼっちだった僕の悪い癖なのかもしれない・・・・・・そんなに悪くはないよね?
「そ・・・それじゃあ・・・・・・」
「?」
sideカリナ
一方、リアムが謝っているの間カリナは何を考えていたのか。
『なるほど。折角リアムがスクールに入った後にさりげなくサポートして、徐々に株を上げていこうと思っていたのに・・・・・・もうバレちゃったか』
スクールの初等部で学年を飛び越して学力1位だったことがバレた。スクールには初等部から中等部まであるため、リアムがスクールに入学してからも三年は同じ学校で勉強できるはずだった。しかし、今日はとても嬉しい誤算が舞い込んできた。初等部と中等部は同じ学校内にありはするが、校舎が別々。だが、リアムが今年から入学することによって更に二年、一緒の校舎で学ぶ時間ができた。
『まあ、それでも私は充分なんだけど・・・・・・』
リアムが不安げな顔でもう一度謝ってくる。
『リ、リアムがしおらしい。それにいじらしい・・・・・・けどそれがいい!』
そして『これは脳内保存決定ね!』なんて考えてると
「大丈夫だってリアム。お前は気にしすぎだ」
と父さんが口を挟んでくる。
『そうよ、リアム。私はそんなこと気にしないわ・・・・・・って言ってあげたい!でももう少し、このリアムを見ていたい!』
カリナは変なジレンマに悩まされていた。しかし、これ以上何も反応してあげないのは流石に可哀想だと思ったカリナは、許す代わりの代替案を出すことにする。
「そ・・・それじゃあ・・・・・・」
「?」
リアムが私の声に反応する。そして、リアムに嫌われない様程々の案を考える。
そして ──
「1日私に付き合って!」
私の突然の言葉に、リアムは疑問を浮かべていたが、やがてその意図を理解した様だ。
「それで許してくれるの?」
私の提案が許す代わりの代替案だと悟ったリアムがその確認をとる。
「ええ、そうよ」
リアムの了承と確認の言葉にカリナは嬉しそうに肯定する。
そしてその後の協議の結果、リアムは明日、カリナと共に出かけることとなった。
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