ある修学旅行生の夜
修学旅行生が泊まっている旅館の一室。
とうに消灯時間は過ぎており生徒達は眠りにつかなければいけなかったが中には電気を消しながらでもこそこそと話し込む生徒が必ずいる。
「ねぇ、怖い話でもしない?」
中心になっている女子がこんな提案をした。他の四名の女子はいいねと賛同するが
そんなのお構いなしに話は進みじゃんけんで負けた人から順番に話すことになってしまった。
こういう時の不安な予感は当たってしまうものでネタが思いつかない山根が一番最初に話すことになってしまう。
数秒の沈黙、みなどんな話をするのか期待しているようだ。
ここから一刻も早く抜け出したい山根は少しこれを話していいものかと引っかかりがあったが圧で声に出してしまう。
「学校の近くにさ、神社があるでしょう? あそこの階段の途中にある横の道に行くと人が消えて戻ってこれなくなるって噂、知っている?」
「えっ、なにそれ。知らない」
初めて聞いたと誰もが口々に言う。
出だしで聞き手の心を掴んでしまったようだ。
山根はもう話すしかなかった。
適当に子供二人がその神社に足を踏み入れて遊んでいたら一人の子がその道を歩き始めて、もう一人の子もその後を追おうとした時には姿を消していたと脚色した。
「それ、本当の話? 誰から聞いたの?」
「お姉ちゃんから。でもいつの話かは分からないって」
「場所が場所だし、なんかそういうことありそう」
「うん、もうあの神社には入らない方がいいかもね」
思いのほか好感触で乗り切った。
しかし山根はなんともいえない気持ち悪さがじんわりと胸に広がっているのを感じる。
あの日の事はもう忘れようと思った、それでも不意に浮び上がってくるあの日の記憶。山根は部屋が暗いのをいいことにその気持ちを隠すことなく表情に表していた。
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