~夏の死霊(しりょう)~『夢時代』より冒頭抜粋

天川裕司

~夏の死霊(しりょう)~『夢時代』より冒頭抜粋

~夏の死霊(しりょう)~

 …文言(ことば)のきらいが軒(のき)に成らずに〝不動〟を呈せる一幻(ゆめ)の揺蕩(ゆらぎ)は深意に迫れる賄いから観て、一女(おんな)の弱きに微かに移ろう試算の譲渡に分散していた。純白(しろ)い悪魔に古豪が二重(かさ)なる旧い悪魔のその実(み)の返りに、一方から成る枯渇の行方は素人紛いの実力(ちから)を試して、何時(いつ)も眼(め)に見る仕様の所以(ありか)は成人(おとな)と児(こども)の格差を成した。漆黒(くろ)い気色に困り果て得(う)る孤高の長寿は換算されつつ、古い雅に恋女(れんにょ)を配(はい)せる白き世界の柔和を着飾り、溢れ始める毒の酒宴(うたげ)は一男(おとこ)を手に掛け未屈(みくつ)を仕上げて、一宙(そら)に見たのは光明(あかり)の朗(あか)るい明日(あす)の蜃気(しんき)の亡霊だった。可弱(かよわ)き羊に〝意味〟を観るうち生(せい)を幻見(ゆめみ)る旧い遊女は、白粉ぱたぱた、神秘(ふしぎ)の所以(ありか)を如何(どう)でも隠して小言を紅(あか)らめ、初めて相(あい)した孤独の主宴(うたげ)を黄泉に見て行く堂々巡りに、一男(おとこ)と女性(おんな)の浅い勇気が一夜(いちや)を越え生(い)く未完(みじゅく)を割いた…。しどろもどろの後光の許容(うち)から鞘を盗める女性(おんな)の早さは、幾度も掴めぬ脆体(からだ)の進理(しんり)を光明(あかり)に尽して今日(きょう)を越え活き、矮小(ちいさ)く統(たば)ねる主観(あるじ)の成果(さき)では何処(どこ)か遠方(とおく)の〝不埒〟の範囲(うち)より、未活(みかつ)で到底厚手の主観(あるじ)は何時(いつ)も健気に進化を遂げ行く…。女性(おんな)の肢体(からだ)が白亜(しろ)く光れる旧い男性(おとこ)の心理の裏では、何時(いつ)も未活に宙(ちゅう)を彷徨う厚い古着を近視(ちかめ)で寄り取り、分厚(あつ)い経過の許容(きょよう)の果(さ)きでは男性(おとこ)と女性(おんな)の一騎打ちと成り、幻想(ゆめ)の過程(さなか)に舞い込む晴嵐(あらし)は宇宙(そら)の真綿に包(つつ)まれ始めた。女性(おんな)の自覚(かくご)と一男(おとこ)の自活は無理を射止めぬ優美(ゆうび)を掌(て)にして、山を観ながら生果(さき)を辿れる男性(おとこ)の身欲(みよく)を吟(ぎん)じて居ながら、旧い一夜(いちや)を女性(おんな)と過せる過去の褒美に有難さを見た。現代人(ひと)の性根をとことん嫌える俺の覚悟は生来活きつつ、一男(おとこ)と男性(おとこ)の死闘の末(すえ)には、厚い初歩(いろは)が未来(さき)を保(たも)てる堂々巡りの闊歩が見得る…。―――一女(おんな)の孤独を海外(そと)から寄越せる自己(おのれ)の労苦の緩い暗黙(やみ)には、二才児から観る未覚(みかく)の幻惑(まどい)が如何(どう)にも仕上がり、純白(しろ)い体裁(かたち)に〝旧(ふる)き〟を幻見(ゆめみ)る〝真っ向勝負〟を低吟(ていぎん)しながら、固く詰らぬ文学(がく)の流行(ながれ)を事細かにして忘れ果て得た。俺の八頭(おろち)を既(すん)でに斬りつつ、幻(ゆめ)の暗転(ころび)に嗣業を観るのは無知に見果てぬ幻惑(まどい)の許容(うち)にて、孤独ばかりに活性して行く発狂(くるい)の生果(せいか)は暗黙(やみ)を相(あい)して、独自で概(おお)きく成長して行く幻(ゆめ)の旧さに出頭して生く。微分され行く過去の許容(うち)から次第に昇れる鼓動の海には日露が散ら付き、旧い軒端の暗黙(やみ)の範囲(なか)では足場を失くした鳥が再び女性(おんな)を究(もと)めて巣立って行った…。

      *

 天然小肥(てんねんこぶと)りの、生粋に可愛らしい娘がまた出て来た。もう少しで俺の恋人に成りそうだった。恐らく彼女には未(ま)だ、以前、洗礼の園で聞いた通りの彼氏が居て、別れて居ない様(よう)だった。しかし彼女は俺の家へ来て居り夜飯、否(いや)、昼飯を食べて居た。後(あと)から気付いたがチキンラーメンだったようだ。俺は現実通りに女に飢えて居り女(彼女)が欲しく、天然娘がその代わりに成ってくれると言うのなら、文句の付けよう無く嬉しかった。彼女は、余り見た事の無い俺の部屋に居り、俺はまるで母親に隠れる様(よう)にして彼女と密会して居て、その事は今迄と似ている。

      *

 …苦労話に華(はな)が乱れて娘の容姿は俺に近付き、娘の四肢(てあし)は綻び始めて、夜半(よわ)の身欲(よく)から解放され行く未来(さき)の礫を俺へと踏んだ。熱い日の出をこの掌(て)に納めて一女(おんな)の自覚(かくご)を幻(ゆめ)に剥くのは日の出を転がす孤独の行為の背後(うしろ)に拡がる紅(あか)い名残で、分厚(あつ)い金(かね)から知識が発(た)つのは滑稽(おかし)な明かりの身動きだった。厚い日の出を発する月(つき)の間(あいだ)の孤独の人影(かげ)には耄碌して行く紅(あか)い契りが女性(おんな)を目掛けて疾走(はし)って行って、昨日辺りに容易い調子(リズム)が一男(おとこ)の瞳(ひとみ)にはっきり象(と)るのは、旧来独語(むかしがたり)に無頼を失くせる安穏ばかりの未完(みじゅく)でもある。昨日に良く似た〝無頼長者(ぶらいちょうじゃ)〟の勇気の果(さ)きには、孤独を配(はい)して孤独に従う壮年女(そうねんおんな)の哀しきなど発(た)ち、暗闇(やみ)に紛れて律儀を培う自然(あるじ)の姿勢(すがた)は俗世(このよ)に儚く、雲間限りの月(つき)の光は一女(おんな)の延命(いのち)に宿って在った。現世(このよ)の感覚(いしき)が自己(おのれ)に発(た)つのは旧(むかし)に良く見た心中(こころ)の讃歌で、明日(あす)の界(かぎり)に無頼を識(し)り貫(ぬ)く〝旧峠(むかしとうげ)〟の孤独の内実(なかみ)は、何時(いつ)も不埒に一女(おんな)を培う身欲ばかりの優越でもある…。男性(おとこ)の羽衣(ころも)を無知に問うのは厚い火照りの胎(たい)の内にて、児(こども)ばかりが女性(おんな)を集める旧来独語(むかしがたり)の紋様(もよう)を解(と)き得た。分厚(あつ)い時日(ときひ)が段々経つのが苦労を養う讃美に在っても、旧来独白(むかしがたり)の日時の果(さ)きには一幻(ゆめ)の身陰(みかげ)が永遠据え立ち、明日(あす)の一声(こえ)まで充分役立つ白亜(しろ)い夕べに未純(みじゅん)を賭した…。一女(おんな)の周囲(まわり)は律儀に培う一男(おとこ)の連想(ドラマ)が無理を奏でる悪意を欲さず、明日(あす)の心中(こころ)を暗黙(やみ)へ問う内、幻(ゆめ)の歩先(ほさき)を絶頂(いただき)にも採る。孤狼(ころう)の態(てい)した男性(おとこ)勝りの老女の体(たい)には、分厚(あつ)い火照りが幻(ゆめ)に失(き)えるを暗黙(やみ)の内より概(おお)きく見下ろし、〝旧峠(むかしとうげ)〟を大きく見積もる幻(ゆめ)の晴嵐(あらし)を駆逐して居た…。幼女の胎(たい)から幼女が産れて、明日(あす)への形見を母性(はは)に見送る孤高の人影(かげ)での暗躍等には、旧(むかし)に良く観た苦労の暴嵐(あらし)が性(せい)を引き連れ心中(こころ)を足した。文言(ことば)巧みの揚げ足取りにて男性(おとこ)の生気は一幻(ゆめ)を観ながら昨日の晴嵐(あらし)に直面してたが母性(おんな)の猛気(もうき)が唖(おし)を運んで雑記を燻(くす)ねて、五月蠅(あわ)い惨事の流行(ながれ)の果(さ)きには未完(みじゅく)に鍛える光明(あかり)が在った。死に生く者から盲者(もうじゃ)が成り立ち、真言・無限に発破を掛け行く慌てた乞食は貰いが少なく、茶色い気色が意味を問うまで自体(おのれ)の景色は充分満たない空気(もぬけ)の主観(あるじ)を揚々留(とど)めて、漆黒(くろ)い有事が暇を辿れる愚かな絵面を鍛えて在った。退屈(ひま)を見送る〝遊女〟の一姿(すがた)は幼女の内実(なかみ)を滑稽(おかし)く摩り替え、幻想(ゆめ)の白亜(はくあ)を六(ろく)に差し込む朝の光を夢限(むげん)に射止めて、独歩(ある)き疲れた未完(みじゅく)の杜から少し離れた白亜(しろ)い小鳥は、沢山並べた未完(みじゅく)の相(そう)から時日(ときひ)を費やし孤高に萎え生く…。苦労ばかりの奈落の俗世(このよ)に幼女(おんな)が萎え生く気色が戯れ、俺の寝床が宙(そら)の目下(もと)から概(おお)きく乖離(はな)れた旧巣(ふるす)を観た時、自由を異(い)にして精華(メッカ)を掌(て)にする〝未刻峠(みこくとうげ)〟の一連(ドラマ)を観た儘、旧来独白(むかしがたり)の独歩を呈する淡い一姿(すがた)の奥方等には、幻盲(ゆめ)の律儀が一歩を把(つか)める女性(おんな)の活気を用意して居た。純白(しろ)い小鳥が一宙(そら)を恋して移ろう時には、孤独語りが夜半(よわ)を掌(て)にする幻見心地(ゆめみごこち)の脆弱(よわ)さが先立ち、苦労を掌(て)にした孤独の跡では一男(おとこ)の自覚(かくご)を如何(どう)でも好くする自分の未活(みかつ)が闊達して居た…。紺(あお)い気色が感覚(いしき)を連れ去り、明日(あす)の〝囲い〟を自由が跳び発(た)つ旧来独語(むかしがたり)の無言の目下(もと)では、幻(ゆめ)に揺蕩い併鏡(あわせかがみ)が身欲(よく)を忘れて人間(ひと)を差し込み、俗世(このよ)の逆行(もどり)に規矩を幻見(ゆめみ)る労苦の穂先を追討して居る。厚い界(かぎり)に延命(いのち)を棄て置く未知の夕べは過去を引き連れ、向日峠(むこうとうげ)の暴嵐(あらし)の果(さ)きから未活を想わす奮起が発(た)っても、自己(おのれ)の気力が無難を報せる孤高の独裁(ドグマ)は郷里を保(も)たずに、悪しき駆逐を正義に培う物の見事を行為に採った…。明日(あす)の気力を母性(はは)に観たまま一女(おんな)の初歩(いろは)は純白味(しろみ)を揺さ振り、自体(おのれ)を這わせる分厚(あつ)い界(かぎり)は精(せい)を産みつつ無己(むこ)を取り下げ、〝併鏡(あわせかがみ)〟に純気(じゅんき)を見送る一男(おとこ)の正義に感(かま)を掛けては、懸命(いのち)に侘しく透る瞬間(あいだ)を晴嵐(あらし)に見立てる試算を解(と)いた。一男(おとこ)の余波(なみ)には暴嵐(あらし)が纏える勇気が仕上がり、併鏡(あわせかがみ)に男・女(だんじょ)を侍らす宙(そら)の居場所をついつい追いつつ、明日(あす)の孤独へ未活が誘(いざな)う孤独の正義を仰いで在った。暑い四季(きせつ)が重なりながらも未完(みかん)の四旬(きせつ)は超越され活き、微塵に煙たい禿(かむろ)の調度は白亜(はくあ)の紅葉(もみじ)を紅潮させ得た。辛気(しんき)に跨る不問の気色(いろ)には無断に繋がる悪霊など見得、一女(おんな)の主観(あるじ)が手毬を突き生く未亡の文句(ことば)を手繰り寄せつつ、悲鳴を挙げない無価値の心理は身欲(よく)に傾き試算を上げた。幻想(ゆめ)の元理(げんり)へ盲進(もうしん)するうち魅惑の輪舞曲(ロンド)は文言(ことば)を吐きつつ、一幻(ゆめ)の優雅に一女(おんな)をたえ行く斬新(あらた)な奮起をその眼(め)にした儘、自体(おのれ)の臭気に収める〝肉体(からだ)〟は一男(おとこ)を寄せ得ぬ悪態から成る。自体(おのれ)の美体(からだ)に未完(みじゅく)を寄せ得る清閑(しずか)な文殊の共喚(さけび)の跡には〝男性(おとこ)の労苦〟が壮声(こえ)を出さない萎びた固陋が雲散(うんさん)して居り、紅(あか)い女性(おんな)の確固(たしか)な奮起は物の見事に鎮静され得た。確固(たしか)な私欲(よく)から〝黄金(きいろ)〟が芽生えて過去の夕日へ無垢が生くのは、自己(おのれ)の進度(しんど)に類推出来ない分厚(あつ)い容器に絡まり続ける無産の行為に相当して行く…。旧い一女(おんな)の孤独が居座る楼机(ろうき)の上では、自己(おのれ)の未完(みじゅく)を完就(かんじゅ)させ行く未知の泡沫(あぶく)に行為を奪(と)られて、厚い白壁(かべ)から暴利を貪る円々(えんえん)豊穣(ゆたか)な気色を観る儘、一気に仕上げる事始(こと)の有利を一女(おんな)に見立てて完遂させ得た…。無論の条理を雨散(うさん)に失(け)すうち無駄な労苦は対して止まない幻(ゆめ)の小敗地(アジト)に決闘して行き、未婚が奏でる一幻(ゆめ)の盲者(もうじゃ)の巣箱が成り立つ幻(ゆめ)さえ観ながら、事始(ことのはじめ)に雲母を見詰める小春(はる)の茂りは見様(みよう)の御託を私算(しさん)に並べて、孤独に仕上がる初夏(なつ)の上気(じょうき)は到底怯まぬ親身を盛(も)った。一幻(ゆめ)の周囲(まわり)で自覚(かくご)を酔わせる無効の概句(おおく)は未産(みさん)を識(し)りつつ、無駄に了(おわ)れる数多の従順(すなお)は無口を拡げて〝買い被り〟を知り、学歴ばかりが活きる糧だと強く信じて有名にも成り、未(いま)に観得ない旧い〝雲母〟はその名を失(け)されて幽霊にも成る。分厚(あつ)い夜伽は事始(こと)の概(おお)くを信義に偽り、旧い誠実(まこと)を俗世(このよ)に向けない強靭(つよ)い快無(オルガ)は快活さえ識(し)り、他(ひと)の誰もが委細見知らぬ孤独の境地は俺へ靡いて、純白(しろ)い自主(あるじ)は孤独に耐え貫(ぬ)く宵の明暗(あかり)とこの実(み)を化(か)えた…。孤高の光明(あかり)と共鳴するうち女性(おんな)に感ける不純が仕上がり、孤高の老理(ろうり)に抗う私事(こと)には矛盾を孕める心機が拡がり、交響(ひび)く一命(いのち)の活気に成るのを屑(くず)の内(なか)から徒党を固める幻覚(ゆめ)の残骸(むくろ)の悲惨な途(と)である。白亜(しろ)い人煙(けむり)に自己(おのれ)を問うのは未活に了(おわ)れる私算(しさん)の途(と)であり、古い事始(はじめ)に霊理(れいり)を問うのは無垢の仕業(しぎょう)の倫理に息衝き、孤独と居座る人物(もの)の概(おお)くの無産の活きには、一幻(ゆめ)の初歩(はじめ)に学(がく)が興(きょう)する文言(ことば)だらけが無応(むおう)に在った…。

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~夏の死霊(しりょう)~『夢時代』より冒頭抜粋 天川裕司 @tenkawayuji

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