高橋
高橋は髪を乾かし飯塚と入れ違いで席に戻ってくる。
笑顔で席に座ると
「将棋してたの?すんごい途中だね。」
と、飯塚とは違い静かに笑う。
「高橋さん、聞きたいことがあって。事件のことなんですけど、飯塚さんから高橋さんは知ってると思うよって。」
「うん。どうしたの?あれ?君も目のとこにホクロがあるの?俺もここにほら。」
目立って見えたホクロを指す。
「同じとこだね。へーこんなこともあるもんなんだね。すごい偶然だ。」
僕は偽物の笑顔を作り出し「そうですね。」と言ったきり。何か僕の雰囲気で察したのか高橋は自分の話を始めた。
「ごめんごめん。ちょっと嬉しくて。俺、こどもいたんだけどまだ生まれたてのときさらわれちゃってさ。その子も同じとこにホクロがあったんだよ。それで嬉しくってさ。ごめんね。なんだっけ?事件のことだっけ?」
「ホクロは医学的には皮膚奇形になるそうです。遺伝はしないと言われてるそうですよ。」
「そうなんだ…よく知ってるね。あの子と同じところにあったからおじいちゃんはしゃいじゃったよ。残念だなー。」
照れ笑いを浮かべる高橋。苦笑いを浮かべる僕。
「そういえば秋田出身なんですってね。飯塚さんから聞きました。実は僕の父も秋田なんですよ。」
「あら、またまた偶然だね。なんぼになるの?お父さん。」
「何歳でしたっけね。忘れました。ところで事件のことで聞きたいことが。こどもさんのために懸賞金貰おうとして調べてるんですか?」
「おやまあ急にどうしだの?まあそうだね。」
急に話を変えられ歯切れの悪い返事になった。しかし、飄々とした態度から一変張り詰めた雰囲気を纏い、
「君、枝野君って言ったっけ?名前は?」
「こうと言います。」
「そっか、こう…くんね。漢字は幸せの『幸』?」
「…そうです。」
「あの事件はね、幸くん。もう解決してるんだよ。所長が死んだときに。」
「どうゆうことですか?」
さっきまでの笑顔とは逆に思い詰めた顔で続ける。
「俺が…殺した。」
「え?殺した?」
「そう…俺が、奴を殺した。」
そう俺が殺った。ここのタイミングでドラマや映画で観るような不敵な笑顔を浮かべて見よう。枝野はどんな顔してるかな。と、演出をすると
枝野も不敵な笑みを浮かべていた。
目に入った時計は10時55分を指していた。
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