第30話「戦略の果て」



北斗学園の図書室。夕暮れ時の薄暗がりの中、織部翔は古代の星霊カードを前に座っていた。


「どうしたの? まだ始めないの?」

天宮双葉が心配そうに声をかける。


「ああ...少し、考えていた」

翔は静かに答える。

「僕の戦略は、いつも完璧を求めすぎていたのかもしれない」


古代のカードが、かすかに明滅する。その光が、図書室の本棚に細かな影を作る。


「始めよう」


翔がカードに触れた瞬間、空間が歪んだ。オリオン座の力が呼応し、青い光が広がる。


「これは...!」


いつもなら頭の中に浮かぶはずの戦略パターンが、霞んでぼやけていく。まるで、思考そのものが制限されているよう。


「翔くん!」

綺羅が心配そうに駆け寄ろうとするが、星見凛が制止する。


「自分で気付かないと、意味がない」

凛の声は静かだが、強い確信に満ちていた。


翔の額に汗が浮かぶ。

「なぜだ...いつもなら、あらゆる可能性を計算できるのに...」


その時、窓の外で不気味な影が揺れる。


「完星会!」

アカネが叫ぶ。

「また来てる!」


黒装束の集団が、校庭に集まっていた。その数は、前回より明らかに多い。


「対応が必要です」

春野カズマが立ち上がる。

「でも、翔先輩は...」


翔は、動けなかった。古代のカードの影響で、戦略を立てることができない。そして、その無力感が彼を苦しめる。


「待って」

秋月みらいが前に出る。

「翔くん、覚えてる? 星霊大会の時のこと」


翔の目が開かれる。


あの時も、予想外の展開に苦しんだ。でも...


「そうか...」

翔の表情が変わる。

「完璧な戦略なんて、存在しない」


その瞬間、古代のカードが大きく脈動する。


「僕は...考えすぎていた。すべてを計算で支配しようとしていた」


翔は立ち上がる。まだ、思考は霞んでいる。しかし...


「でも、それが限界だということを知ることで、逆に...」


「見えてくるものがある」

星見凛が言葉を続ける。

「完璧な計算ではなく、仲間との繋がりが導く答えが」


校庭では、完星会のメンバーたちが円陣を組み始めていた。


「みんな」

翔が声をかける。

「僕には完璧な戦略は立てられない。でも...」


「私たちがいるわ」

綺羅が頷く。

「それぞれの不完全さを、繋ぎ合わせて」


その時、古代のカードが温かな光を放ち、新たな文様が浮かび上がる。


「これは...!」

みらいが驚きの声を上げる。

「第二の試練の鍵」


『不完全な繋がりから生まれる可能性を見出すこと』


図書室の窓から見える夕空に、最初の星が瞬き始めていた。


「行きましょう」

綺羅が言う。

「私たちの力で」


それは完璧な戦略とは違う、しかし確かな光を放つ道標だった。


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