元英雄の古書店スローライフ~魔王は倒したのでもう使わない禁書と魔導書売ります~
自来也
第1冊目 勇者より強い英雄
「終わったなぁ」
魔王の討伐した帰り道、僕は達成感となにか悲壮感のようなものを感じながらボソっと呟いた。
「終わりましたね、これからリオはどうするんですか?」
綺麗な金髪に少し幼い顔のエリシア、回復と補助スキルに特化した女神官。
少し怪我をしただけでも問答無用でハイヒールを使う過保護だが優しい女性だ。
「リオはなんでもできるからね、どこに行っても引くてあまたなんじゃないかな?」
黒髪の整った顔つきのアレク、魔法も剣も一流の勇者様。
誰にでも優しく接するし人を疑う事を知らないのでよく騙されるがいつも笑っていたよな。
「何かやりたい事ないの?私は王様からの報奨金でのんびり暮らすけど、なんなら一緒に来る?」
世にも珍しい赤毛のエルフのリィナ。
初めはツンツンしていたが一緒に冒険する間に打ち解けて今では勇者パーティのムードメーカーだ。
「いや、遠慮しておくよ。僕は古書店でもやろうと思ってね」
「古書店?リオってばまさか持ってる禁書と魔導書を売るつもりかい?」
僕の持っている禁書と魔導書。
僕は勇者になりたくて数々のダンジョンを踏破し、報酬の禁書と魔導書を読み漁った。
運良く鑑定のスキルを手に入れて色々な町や村で埋もれている本も手に入れた。
自分が強くなっていくのもそうだが何よりも読書そのものが好きだった。
そしてそんな事を続けた結果…
「リオって正直僕よりも圧倒的に強いよね…、聖剣に選ばれなかっただけで実は世界最強なんじゃない?」
この世界では十歳になると神からギフトが贈られる。
僕の貰ったギフトは英雄、元々剣も魔法も人一倍できたし、僕は絵本の英雄譚のような勇者になれると心が躍った。
そして勇者になりたい一心でダンジョンでレベルを上げ、魔導書や禁書を読み漁ったわけだが…。
聖剣に選ばれなかった…
「そうかも知れないけどさ…魔王って聖剣でしか倒せないじゃん?瀕死のボロボロにするくらいは出来るけど、僕は勇者に憧れてたんだけどなぁ」
「まあ僕はボロボロの魔王に聖剣刺しただけだからね…なんで僕が聖剣に選ばれたか謎でしょうがないよ…」
勇者のギフトだけは特別だ。聖剣に選ばれた者が勇者になれる。
アレクは勇者っぽい見た目だからかなぁ…。
なぜ僕じゃないのかと最初は凹んだもんだよ。
「正直回復も補助魔法も私の何倍も強いのを自分でかけてますよね」
「たまに作るお菓子とかエリクサー並の効果あるしどんだけ禁書と魔導書読んだの?」
「うーん…いっぱいあって分からないよ。これからは本当に欲しい人にあげちゃおうかなって、あとは買い取りもして色んな本読みたいんだよね」
「そうするとリオはどんどん弱くなるんじゃないのかい?禁書や魔導書って譲渡すると自分は使えなくなるんだろ?」
「まあそうだね、でももう使わないの多いし、必要な人がいるならその人が使った方がいいよ」
「じゃ、じゃああの魔導書売ってくれますか!?あの身体を清潔に保てる魔法の!」
「私はあれが欲しい!鍛治スキルを全部覚えてカンストさせる禁書!」
「僕はそうだなぁ…相手のウソを見破るスキルの本があったよね、あれが欲しいかな」
「なんだ急に欲だして…だめだよそれはまだ使うから!たまに店に寄ってよ、その時の気分で売るかもね」
「是非そうさせて貰おうかな、店の名前は決まってるのかい?」
「ふふ、決まってるんだよね。魔王をボロボロにしながら考えてたからね」
「片手間にボロボロにされる魔王も可哀想ですね…」
「確かになんか上の空で攻撃してたけど…」
僕の店の名前は…『星の栞』
希望に満ちた良い名前じゃないか。
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