第3話 父が灰を体に塗ることはありませんでした

 初め父は、カーマを擬古的な仕方で呪いました。

 「シヴァに同じ悪ふざけをした後、カーマはシヴァの第三の目の炎に焼き尽くされ、傲慢さから解放されるだろう」

  でもカーマと話をしてからは、カーマを自分の後継者として認めて祝福しました。

 「カーマよ、いかなる疑いも持たないでください。聞いてください。恐怖を捨ててください。幸せになりなさい」

 カーマは私を見る前から、人々の有様に疑問と悩みを抱いていました――もちろん、彼が管化を選択していなかったのはそのためです――それからふたりとも優れた工学者でしたから、気が合ったのかもしれません。それで父はカーマに生命史と人類史の講義を行いました。それは私が幼い頃から聞いてきた子守歌でした。カーマはまるで喉が渇いていて水を飲むように、夢中になって学びました。


 私はこのことにカーテンを引くこともできます。でもあなた方のためには、そうすべきではありません。ですから包み隠さずお話ししましょう。

 父に、カーマを愛しているかと尋ねられました。わからないと答えました。本当にそうだったのです。魅力的な男性だとは思っていましたけれど、それ以上のことを考えていなかったのです。すると父は、

 「いちど接吻してみれば、すべてがわかるだろう」

 と言いました。カーマは何度か、私に接吻しようとしたことがありました。そのたび私は拒絶していました。ふたりでマンゴーの森を散歩していたとき、カーマはまた私に接吻しようとしました。それで私は試しに受け入れてみたのです。父が言ったことは本当でした。私の心に火がつきました。カーマを愛していることに気づきました。カーマは一度私の息を捕えると、愛の激流の堰を切りました。激しく私を求めました。私の方でも一度カーマの体に触れると、カーマと同じような具合になってしまって、もう恥じらいもためらいもなくなって、着物を脱いで、女の秘所を開きました。彼は私の秘所を捕え、愛の行為を降り注ぎました。来る日も来る日も私たちは交わりました。こんな太古のやり方そのままに、私はカーマの子を宿したのでした。私は古人に習いこれらをこう表現したいと思います。それは神聖な営みだったと。


 私が本当にカーテンを引きたいのは、むしろこちらのことです。でも、これもお話ししなければなりません。父の、そしてカーマも協力することになった反乱の計画についてです。それはつまるところ、人々から量子的な、工学的な仕方で貪欲と暴力への志向を切除するというものでした。これこそが恐ろしい暴力です! 私は何度も父とカーマに訴えましたけど、ふたりはそれを承知の上でした。父の言い分はこうでした。

 「太古の人々は犠牲を焼き、その火を神々に捧げた。その灰を体に塗った。私は彼らの灰を体に塗るだろう」

 でも父が灰を体に塗ることはありませんでした。父はカーマを得てから癌の治療を辞めていました。私のお腹が大きくなった頃、父は亡くなり、金星の火で焼かれたのは父自身でした。灰は父の遺言通りマンゴーの森に撒きました。そのときの私の慟哭の有様については、あなた方に正確にお伝えすることは不可能です。

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