文芸グループ「ハッチポッチ」~ごった煮ミステリーの執筆
三坂鳴
序章 文芸グループ「ハッチポッチ」の集合と分業決定
文芸グループ「ハッチポッチ」メンバー
駒形 宗次(こまがた そうじ)
得意ジャンル: 推理小説
年齢:30歳
職業:中小企業の総務担当(会社員)
性格:計画性があり、段取りを組むのが得意。合理主義的な面がある一方、推理小説の“鮮やかな謎解き”にロマンを感じる。リーダーシップをとるが、時に周囲に振り回されがち。
外見:身長175cm程度、やや細身。黒髪短髪で、いつも無地のシャツにカーディガンのような落ち着いた服装が多い。メガネは使わず、視力はわりと良い。
好きな作家・作品:横溝正史、アガサ・クリスティ、法月綸太郎などの本格推理。特に「そして誰もいなくなった」の密室・孤島設定に影響を受けている。
文学以外の好きなこと:麻雀やボードゲームなどの頭脳ゲーム。料理番組を見るのが密かな楽しみ。
御子柴 隆士(みこしば りゅうじ)
得意ジャンル:ハードSF
年齢:24歳
職業:大学院生(物理学専攻)
性格:とことん理系思考で、SF的アイデアや科学考証が大好き。話し始めると細かい専門用語で止まらなくなるタイプ。好奇心旺盛で、新技術やガジェットにも目がない。
外見:身長170cm程度、細身。やや猫背気味。乱雑に伸びた黒髪をそのままにしている。いつもリュックを背負い、大学の研究室や図書館にこもっているイメージ。
好きな作家・作品:アーサー・C・クラーク、グレッグ・イーガン、伊藤計劃などのハードSF。SF映画も網羅しており、『ブレードランナー』『インターステラー』などがお気に入り。
文学以外の好きなこと:ロボットコンテストやプログラミング。電子工作が趣味で、3Dプリンターでいろいろ作ることもある。
北園 七海(きたぞの ななみ)
得意ジャンル:ラブコメ
年齢:19歳
職業:大学1年生(文系学部)
性格:明るく社交的で、人間関係の機微を描くのが好き。恋愛観察が趣味で、カップルのやり取りに興味津々。思いつきで行動することが多く、軽やかな雰囲気を持つ。
外見:身長160cmほど、ボブカット。カジュアルなファッションを好み、キャンパスでも目立つ存在。笑うと八重歯がちらっと見える。
好きな作家・作品:有川浩、羽海野チカなど、青春恋愛要素がある作品を好む。少女マンガやアニメのラブコメ作品にも精通。
文学以外の好きなこと:SNSでの情報発信。カフェ巡りやスイーツ食べ歩き。映画鑑賞(特に学園ラブコメもの)。
西園寺 凌介(さいおんじ りょうすけ)
得意ジャンル:論文執筆
年齢:35歳
職業:コンサル系シンクタンクの研究員
性格:常にロジックを重視し、情報整理力に長ける。感情表現は控えめで、どちらかというとドライ。完璧主義で、文章の誤字脱字や体裁にも厳しい。
外見:身長178cm程度、スーツ姿が基本。黒縁メガネをかけており、髪は短く整えている。表情があまり変わらないが、たまに微笑むと柔和な印象。
好きな作家・作品:ジャレド・ダイアモンド、ユヴァル・ノア・ハラリなど、学術系ノンフィクションが中心。小説としては山田風太郎の『明治断頭台』のような史実の考証が緻密な作品も好む。
文学以外の好きなこと:統計やデータ分析、経済ニュースのチェック。資料のデザインやPowerPoint作りが妙にうまい。
加賀 美里(かが みさと)
得意ジャンル:時代小説
年齢:28歳
職業:市立図書館の司書
性格:重厚な歴史ロマンに胸をときめかせるタイプ。丁寧で物腰が柔らかいが、歴史や時代考証に熱くなると止まらなくなる。周囲からは「知的で穏やか」と思われがちだが、内面は意外と情熱家。
外見:身長165cmほど。長めの髪を後ろで一つにまとめていることが多い。やや和風美人な雰囲気があるが、普段は地味めな私服。メガネはかけず、視力はそこそこ良い。
好きな作家・作品:司馬遼太郎、池波正太郎、宮部みゆき(時代小説)など。歴史関連のノンフィクション書籍や博物館巡りも好き。
文学以外の好きなこと:茶道、華道などの伝統文化に関心がある。旅行先でも古い街並みを巡るのが好き。
橘 貴子(たちばな たかこ)
得意ジャンル:官能小説
年齢:32歳
職業:出版社の事務職(校正部門に所属)
性格:感情表現が豊かで、情熱的。恋愛や人間の欲望にまつわるテーマに強い関心を持ち、タブーを恐れない。周囲の雰囲気を読むのが上手く、さりげなく場を盛り上げる。
外見:身長168cm程度、スタイルは女性らしくしなやか。髪はセミロング。職場ではシンプルなオフィスカジュアル。ソフトな口調だが、内面に芯の強さを感じさせる。
好きな作家・作品:谷崎潤一郎、三島由紀夫の官能的な文体や、海外のエロティシズム文学も幅広く好む。官能と文学性を両立している作品を探すのが趣味。
文学以外の好きなこと:アロマや香水など、香りにまつわるもの全般。ファッション誌やコスメ情報のチェック。ダンスやフィットネスで体を動かすのも好き。
ネット上で作られた文芸グループ「ハッチポッチ」のメンバーがWeb会議をしていた。
「一週間で書く推理小説なんて、正気の沙汰じゃないですよ」
通話アプリ越しに北園 七海がぷくっと頬をふくらませた。
駒形 宗次は慌てて両手を振りながら、「いや、そこをなんとか。ミステリー大賞の締め切りがすぐなんだよ」と苦笑いで応じる。
「とにかくストーリーは単純明快にいきたいんだ。孤島の洋館で連続密室殺人、これをしっかりミステリーとしてまとめようと思ってる」
隣の画面でスーツ姿の西園寺 凌介が「しっかり、と言いますが」と静かに口を開いた。
「乱雑な要素を入れると混乱を招きます。ラブコメ作家とハードSF作家と時代小説作家と官能小説作家では文体が散逸する可能性が高い」
真っ当な意見だが、その瞬間、別の窓から聞こえた声が割り込んだ。
「SF的要素は絶対に入れたいですね。例えば遠隔操作式の鍵とか、生体センサーでドアが開閉するとか。そこらへんの仕組みをがっつり考証しませんか」
勢いよくしゃべり出したのは御子柴 隆士で、リュックを横に置いたまま、何やら回路図らしきメモを見せびらかしている。
「理詰めでいくのはいいんだけど、事件の雰囲気が大事でしょう。どこかドキドキするような恋の駆け引きも入れたいです」
七海が早口でまくしたてる。駒形は「うん」と曖昧に頷きながらペンを走らせた。
「駒形さん、仮にラブコメ要素が増えすぎたら、密室殺人というより恋愛群像劇になりかねません。大丈夫なんですか」
西園寺の厳しい突っ込みに、駒形は一瞬ペンを止めた。
「そこは僕が全体を整理するから大丈夫…なはず。どうしてもラブコメテイストになるなら、最終的にしっかり謎解きがまとまるように軌道修正するよ」
そこへ加賀 美里が穏やかそうな表情で口を挟む。
「私も、あまりにも世界観がバラバラになるのは望ましくないと思います。でも舞台となる洋館の歴史をじっくり描きたいんですよ。できればちょっと時代小説っぽく、古い書簡や武家屋敷の名残を感じさせるような…」
ミステリーのはずが武家屋敷とは、と駒形の頭をよぎるが、加賀は熱のこもった目で続けている。
「それだけでも読者を惹きつけられると思うんです。雰囲気って重要ですから」
「うちの会社の上司に見せたら一発で没になりそうだけど。まあ、面白ければいいのよ」
ひょいと手を挙げたのは橘 貴子。
出版社の校正部門に所属している。
しなやかな仕草で髪を後ろへ払ってから、気楽そうに笑った。
「私が解決編を書くなら、推理の真相と登場人物の深い欲望を絡めたいわ。混ぜたら危険って言うけど、逆にスリリングでしょう」
駒形は全員の表情をじっと見つめたあと、深い息をつく。
「とりあえず、各章の担当を確認しておこう。第一章は御子柴くんで、第二章は七海さん、第三章は西園寺さん…」
その一つひとつを読み上げている途中、御子柴が何やら機械音を鳴らしながら「量子鍵」とか「相転移」とか聞き慣れない言葉を口走り始める。
七海は七海で「いや、ここは三角関係にしたほうが盛り上がる」とテンション高めだ。
加賀は歴史年表のメモまで画面越しに示してみせている。貴子は「欲望と罪の融合がミステリーの醍醐味よ」などと言い出した。
駒形は胃のあたりを押さえながら、それでも苦笑いで持ちこたえる。
「いや、みんな。いいアイデアなんだけど、最終的にはちゃんと推理小説の体裁になるようにしようね。僕の理想は文体の統一感…なんだけど……」
言葉を濁す駒形を横目に見て、西園寺が淡々と告げる。
「このグループは各々の主張が強いので、どうやっても文体がバラつくでしょう。ですが、締切が迫っている以上、手段を選んでいる時間はありません」
駒形はうなずいたものの、「全章ミステリー」を成り立たせるのはかなりの試練だと内心で覚悟を決める。
いや、まとまらないかもしれない。けれど時間がないからこそ、突き進むしかないのだ。
こうして分業体制が決まったものの、誰も彼もが独自の世界観を押し通そうとしている。
駒形は一応まとめ役としてパソコンの画面にプロットを打ち込むが、各章の文体がガラリと変わる予感だけはひしひしと伝わってきた。
それでも、まるで合宿のようなわくわく感が全員の声から伝わってくるのは確かだ。
グループの闇鍋のような創作が、はたしてどこへ向かうのか。
駒形は一つ深呼吸をし、あえて誰にも聞こえない声で「なんとかなるさ」と小さくつぶやいた。
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