第8話 冒険者なってもハジケリストはハジケリスト③
料金をギルドに払い、冒険者になる為の試験を受ける事になったゴウ。
街を出て平原に向かい、快晴な青空の下で数分後、
「ギャァアアアアアアアアアアアアア!!」
頭以外全身生き埋めにされてる、蜂蜜塗れのクマ吉の断末魔的悲鳴が響き渡った。
ゴウ達に与えられた試験内容は、『ビードルマンを合計五匹倒して来る事』である。
ビードルマンとは、中型サイズの犬の背に昆虫の羽を、顎や牙には昆虫特有の武器を生やしているFランクの魔物。初心者向けのメジャーなモンスターである。
だが、人ではなく魔物内でもそれを周知されてる事を奴らは知っている。
その為、常に群れを形成し行動してるのである。
全て討伐するのは難しいが、奴らは臆病な性質上、逃げる相手を追いかけない。
なのでいざとなったら撤退すれば死者が出ないので、試験に持ってこいのモンスターなのだ。
基本的な討伐方法は主に二つ。
同等及びそれ以上の数による人数戦法か、罠を貼り一網打尽にするかである。
ゴウは罠を貼る戦法を選んだ。
ビードルマンの主食は樹液や蜂蜜。
基本は蜂蜜を使用した餌団子を作り、それを罠道具として利用するのが一般的である。
だけど当然、この男がそんなメジャーなやり方する訳もなく……、
「アダダダダダッッッッ!!!? 喰われるゥゥゥ!! 俺ぬいぐるみという名の綿人形なのに喰われるゥゥゥゥゥゥ!!」
今に至るというわけである。
目標数以上のビードルマンの他、あらゆる虫型モンスターに集られ、噛まれ噛まれ噛みまくられているクマ吉。
またしても顔面がホラー映画に出てもいい様な、悍ましい物となっていた。
「ゴウッ! テメェ! 絶対呪ってやるッ! 死んだら化けて出てきてやらからなヴァァァァァ!!」
「もうちょい頑張れー。チョコバットもう一本買ってやるから」
「テメエらもっと噛みついてコンカイゴルァァァァァァァ! 俺を食い切れるってんなら食い切ってみろヤァァァァァッッッ!!」
悲惨な目に合わされながらも、チョコバット如きに釣られやる気を見せる単純なクマのぬいぐるみ。
その熱意を表すかの如く、全身から光を放出し始めた直後ーー
ちゅどーんっ!
勝手に自爆し、集ってた虫共を一網打尽に吹っ飛ばしたのだった。
どゆこと???
ゴウ達が試験に向かって十数分後。
カオリは再びクエストに行く為、依頼掲示板を眺めていた。
相変わらず聞こえてくる、こっち見てヒソヒソと話している冒険者達の内緒話の声。
そんな連中から向けられる、クズを見る様な冷たい視線。
カオリはもう、この場の全てが醜い物としか見えていない。
それと同時に、自分は孤独なんだという現実。
あの日以来からずっと、嫌というほど感じている。
平然を装っているが、心中はもう悲しみで張り裂けそうな状態だった。
この抑えられない様な気持ちを鎮めるが為に、適当にクエストを選んだカオリ。
蔑んだ目線を向ける職員に報告した後、すぐさまギルドから出ようとした時、
「待ちな」
いつもの如く、自分に嫌がらせしようとする冒険者二人が彼女の行く道を遮った。
「またか」と思いながらウンザリするカオリ。
そんな彼女の気持ちも知らず、冒険者二人がゲスな笑みを浮かべ口を開く。
が、
DOGOOOOOON!
「ご愁傷様でしたッ!!」
「「ぶへぁッ!!?」」
ゴウが乗ってる霊柩車がギルドの扉をぶち破って珍乱入。そのまま勢任せで冒険者二人を轢き飛ばしたのだった。
なんだ!? と驚き、次々と振り向くギルド内にいるこの世界の原住民達。
霊柩車を目にした途端、全員が目玉が飛び出て吃った様な声を上げ驚愕したのでした。
当然カオリも腰を抜かし、目がまん丸状態となって超びっくり。当たり前だ。
そんな彼女達の心境状態を他所に、車からゴウと数匹のクマ吉が降りて来た。
「じゃあ、すぐ葬式の準備するぞ。棺はあそこ。座布団木魚もちゃんとしたところに置けよ」
「「「BU・ROGER!」」」
轢かれて血反吐吐き気絶してる冒険者二人の事なんか気にせず、ゴウ達はせっせと準備し始めるのだった。
霊柩車から棺を引っ張り出し、建物の中心部にある机の上に置く。
そしてその周りには座布団を、座布団の上に木魚を、木魚の上に数珠を、数珠の輪っか内側にバナナの皮を……
「おしっ、これでOKっと」
葬式と言うか、訳のわからない儀式の準備が完了した直後だった。
プシュゥゥゥゥ……
遺体が眠りし棺から白い煙が放出され、自動的に蓋が開いたのだ。
まるで今まで封印してた何かが、今目覚めんとしてるかの様に。
「おおっ! 遂に……遂に完成したぞ!」
いつのまにか白衣姿になって歓喜の声を上げる、遺伝子最強生物製造学者ゴウ博士。
喜び泣きしそうな彼の前にある棺から見える、人影ならぬクマ吉の影。
ムクリと起き上がったそれが、ゆっくりと階段を降り始める。
そのクマ吉の姿は……、
「冒険者試験の際、合格するが為に自爆し、命を枯らした伝説の獣『クマ吉』。彼のぶっ飛び具合に感動し、またあの爆発をもう一度見たいと私は願った! そして遺体を魔改造し再度生命を与えパワーアップして蘇らせた新たなるクマ吉! その名も……」
どんっ!
どんっ!
どんっ!(ブー)
「クマ吉・フレッシュ・ノブルテ・モダーン・スタイル・アップデートだ!」
「「「“新”めっちゃあるやん!」」」
体の殆どがメカ化している姿のクマ吉だったのだ。
「……これが……俺……?」
鏡見て、新たな自分の姿に言葉が出ず固まっている、新生クマ吉こと『メカ吉』。
腕、右脳及び右顔、左足の小指以外が機械と化し、頭部に付いてる竹トンボの様なプロペラが印象的と思わしその姿。
他のクマ吉達が憧れの眼差しを向けてる事に気づかず、たった一匹茫然としてると、
クルクルクルクル……プゥゥゥン。
「あっ!? プロペラ外れたッ!!」
「「「わーい! プロペラゲットだぁー!」」」
「待てー! そのプロペラ僕のだぞー!」
他のクマ吉達と共に、飛んでったプロペラ追いかけギルドから出ていくのだった。
「…………」
今のを見てた冒険者達が、どゆこと? と言いたげそうな呆然とした顔で眺めている。
彼らとは別に、たった一人、ツッコミきれないと、呆れてるカオリなのでした。
そんな場の空気を気にせず、今までの事を何も知らない様な顔して受付に向かうゴウ。
「試験終えたんでよろしく頼んます」
ゴウはそう言うと、直前に渡された試験用冒険者カードを、受付お姉さんの目の前に置いた。
「……えっ!? あ、はい。少々お待ちください」
ゴウの声で我に返ったお姉さんはすぐさまカードを手に取り部屋の奥へと移動した。
冒険者カード。
これにはあらゆる機能が備わっている。
そのうちの一つに倒したモンスターを記録する機能が存在する。
試験用にはその記録機能のみが備わっており、これで試験内容を果たしたかどうかを調べるのだ。
少し経った後、お姉さんがゴウの前へと戻って来た。
「試験は合格ですが、貴方様の他にもう一人受けてた方がいたはずなのですが、その方はーー」
お姉さんは先程勝手に出て行ったクマ吉の事について問い出した時、
ドドドドドド……
崩壊してるギルドの扉の方から、多くの馬がこちらに来てる様な足音が聞こえて来た。
今度はなんだぁ? と、嫌な予感を感じる人の様な顔を浮かべるカオリ。
再度困惑して騒めき出す冒険者達と共に、鳴り響く音の方へを顔を向けると、
「ぶひひーんっ!」
「おうっ、邪魔するぜぇ」
暴走族の特攻服を着た大量の恵方巻きが、馬に跨ったままギルド内に入り込んできたのだった。
「「「ーーーーーーーー」」」
職員も冒険者達も、心が死んだ様な顔してあんぐりと口を開くだけ。
もう展開についていけてないのが丸わかりだ。
「……一応義理は果たしたし、いいよね……付き合いきれない……」
頭を片手で触れているカオリさん。顔を隠しながら素通りし、ギルドから出てクエストに向かうのでした。
「おい、アレ」
「へい」
首領っぽい恵方巻きの一言に、他の恵方巻き達が背後にある荷台馬車へと向かう。
その馬車の屋根に飾られてる、十字架に貼り付けられてるボロボロ姿のクマ吉。
「次からちゃんとした方角で食べないと殺すからな」
首領の恵方巻きがそう言うと、子分達はクマ吉を外し、ゴウの目の前に投げ捨てた。
そして首領巻きは、ゴウにバックドロップ及びロケラン撃ち込まれた、彼らを見て茫然と口開き心が死んでるリーゼント冒険者に近づく。
そして、両手で彼の顔を持ってーー
「今違う方角で
「……えっ!?」
ゴキッ
「ヴォボゥォッ!?」
鈍い音が響き渡ったのと同時に、泡吹きながらぶっ倒れるリーゼント冒険者。
そんな彼を気にせず恵方巻きは再び馬に跨り、配下を引き連れギルドから出て行ったのでした。
「食べ方なんて……なんでもいいじゃん……」
泣き崩れてるクマ吉を「よっこらしょ」と言って背負い、ゴウは再度受付の前に立つ。
「これで全員揃いました」
「……は……はい」
何言えばいいか分からない受付のお姉さんの一言が、静寂なギルド内に転がった。
そして、リーゼント冒険者はある決意をした。
「俺……別の街に行こうっと……」ガクッ
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