五伍俉悟梧ォの、ハテンGO!!- 異世界にハジケリストがやって来た件 -
ぶっ飛び猿
第1話 登場! 令和のハジケリストの破天ゴウ!!
「さぁ、その聖剣を手にして旅立ちなさい。世界の平和を取り戻してくれた暁には、神々からの贈り物としてどんな願いでも叶えて差し上げましょう」
「女神様。必ず僕が世界に平和をもたらしましょう!」
あらゆる世界を管理する神々が住み、死者が最初に訪れる場所、『天界』
そこでとある女神が、困窮する世界を救わんと、転生者を勇者として異世界へと送り出していた。
この女神の名はヴィナス。
百年前に天界に誕生した、ボーイッシュながらも美女と思わせる様な短髪白髪少女。
約三百回、善良な死者達を勇者として転生させ、数多の世界を救った最年少女神である。
世界の危険度は、F〜SSまでに切り分けられている。
Fは一国のトップの野望を止めねばならぬ危険性。
Sは人類そのものの危機と言えよう。
そして、最上位である危険度SS。
その世界に留まらず他の世界も巻き込む危機。
最悪この天界にも危機が及ぶかもしれない、高難易度より遥か上の難問である。
そして今回送り出した勇者の世界の危険度は、そのSS級という超難関物。
だからヴィナスは先程送り出した彼を含め、同じ世界に五人の勇者を送り込んだのである。
全ては世界に迫り来る危機を討ち滅ぼし、全世界の平和を維持するために。
一休みしようと、近くに置かれている椅子にヴィナスが座る。
すると……
「この采配で大丈夫だったのでしょうか? 今回は前代未聞とも言える危機に挑む様な物。念の為にもう一度あらゆるーー」
ゴゴゴゴ……
「えっ? なに?」
今此処、勇者を送り出す専用の神聖なる儀式部屋。
その天井から異様な音が聞こえ、顔を真上に上げ目線を向ける。
この音を例えるとするならば、雷の様な、墜落してくる飛行機の様な……。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
音が鳴り止まない。
それどころかどんどん大きくなっている。
否、大きくなるというよりは、こちらに近づいてると思えてしまう様な響きだった。
っと、彼女が思った瞬間ーー
DOGASYAAAAAN!!
「おじゃましMAX!!」
「うぎゃぁあああああ!!」
トラックにドロップキックを炸裂してる黒髪天パの男が、部屋の天井を破壊して珍入してきたのだ。
女神歴長年、百の確立で前例のない事態にヴィナスは喉の限りまで悲鳴をあげた。無理ないっすね。
それはそうと、どこからかファンシーな熊のぬいぐるみっぽい生き物が何匹か湧いて出てきた。
驚いてるヴィナスを無視し、珍入してきたトラックを計りなど用いて調べ始める。
「減り込み度、七十点! 破壊度、八十五点! ドライバー、死亡! 百点!」
「なになになになになんですかこれ!?」
「合計ぶっ飛び点数、二百五十五点! 過去最新記録!」
「ヤタァー! 俺が新チャンピョンだぁ!」
「イエーイ!」
「イエーイ!」
「イエーiーー」
「やかましィィィ!!」(マシンガン乱射)
「「「うぎゃぁぁぁぁ!!」」」
自分を祝い歓喜するぬいぐるみ達を、懐から取り出した機関銃で蜂の巣にした男。
穴だらけになったぬいぐるみ達は、後ろにある出入り口を通って逃げ出ていったのだった。
「あー、疲れましたな」
「あ、あなたは一体何者ですか!?」
男が一息したところで、ようやく我に返ったヴィナス。
突如珍妙で豪快な登場をした、細身ながらも筋肉質な体をしている、黒髪天然パーマ黒ジャージ男。
そんな若干の“漢”雰囲気を醸し出してる彼に対し、警戒しながら問い出したのだった。
ここは、死者たちの魂が集まり、次の命へと転生させる場所であり、神々の住むべき場所である『天界』。
故に、神か死者しかこの世界に来ることが出来ない仕組みとなっている。
だからたとえ強大な力を持っていても、彼の様に生身の生命が来る事自体不可能だ。
それこそ危険度Sに出てくる様な、魔王並みの力を持ってもだ。
ヴィナスは聖なる力を溜めながら返答を待つと……
「黒より黒く闇より暗き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」
彼は我関せずに、何処ぞの爆裂魔法使いの帽子を被ってなりきっていた。
ヴィナスは、彼は何かしてくると思い警戒を強める。
だが、男から魔力を感じられない。
様子を伺いながら、現状維持していたヴィナスだったがーー
「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!」
男がポーズを決めようとした瞬間だった。
動線に着火し、今まさに爆散せんとするダイナマイトが部屋全体に数十個……
「っ!? しまーー」
「これこそが究極の攻撃魔法、エクスプロォォォォジョン!」
男が魔法名を唱えた瞬間ーー、
ガチャリ(スタスタ)
出入り口の扉が開き、『ダイナマイト』と書かれた人サイズの筒が入り込んできた。
「……は?」
唖然とするヴィナスを差し置き、その筒は男に近づき名刺を渡してーー
「すみません。ワタクシ、爆裂魔法株式会社『エクスプロージョン』の者でして。今日はこの部屋に置かせてもらった爆裂スティックの商品紹介をーー」
「全て不良品!」
KOOOOON!
「スパァァァァキィィィィング!!」
鉈で真っ二つに両断され転がった筒。そして男はヴィナスの方へと向き。
「これが俺の日常だ」
「ふぁっ!? まさか全部自己紹介のつもりだったんですか!?」
彼は自信満々に言い放った。
だがヴィナスは混乱したままだ。
わけもわからず じぶんをこうげきした! なんてことはない。
「も、もう一度聞きます。貴方は一体何者ですか?」
「俺の名はゴウ。ブットビ村出身、令和のハジケリスト、
「いずれ起きる……厄災を……」
天界にやってくるだけの力を持ちつつも、この人から邪悪な気配は感じない。
そして現在は、天界含めた全世界の危機である。
後ついで感覚に、ハジケリストってなんだろうとも思うのだった。
ヴィナスは口を開き、ゴウという名の男に問いかけた。
「あの、聞かせてください。貴方はどうやって此処に来る事が出来たのでしょうか? 此処は貴方の様な、肉体に魂を宿してる者では辿り着く事ができない世界です。何故なら此処は死者の魂をーー」
「それは絶対と言えるのか?」
言い終える前に放たれた、ゴウの穏やかながらも力強き一言。
ヴィナスは押し負けたかの如く驚き、口を閉ざした。
「江戸時代、火山が噴火すれば間違いなく飢饉が起こる。だが噴火しても飢饉が起こらなかった可能性もあったかもしれない。第二次世界大戦は枢軸国が勝利していた可能性もあったかもしれない。道端で新品の週刊雑誌最新刊を拾ってラッキーになる可能性もあるかも知れない。俺は例え僅かでも、自身が望んだ未来に進む可能性を信じ前に進む。その結果、奇跡的に此処に辿り着いたわけだ」
最後の例えがなんかアレだが、真っ直ぐな瞳でそう語るゴウ。
彼の希望満ち溢れるオーラにより、少なくとも敵ではないと思い警戒を解くヴィナス。
ヴィナスは思った。
謎は多いが、彼は全ての世界を救うために現れた、世界そのものの抑止力的存在ではないのかと。
暴れるのはやめてほしいけど。
悲惨な姿になったトラックの中にいる運転手(死体の魂)は思った。
自分達はただ、ブットビ村特有のオリンピック競技『トラック大砲』を挑んだだけ。
トラック大砲という競技は、人間大砲で道路走るトラックを破壊する競技である。
大半の者は轢かれたりぶつかってペチャンコになって命を落とす。
だが一部の者はトラックを破壊したりふっ飛ばしたり、今回のゴウの様に宇宙へと飛んでいくロケットの様に、トラック事空彼方へと吹っ飛ぶ者も存在するらしい。
そして結果的に、偶然ここに辿り着いてしまったのだ。
そう心の中で語り切った後、成仏した運転手さんなのでした。
因みに彼の世界のオリンピックで金メダルを取った選手は、オリンピック委員会からカルピス一年分を貰える様です。どうでもいい。
そんな今さっき輪廻転生していった魂の心情も知らず、ヴィナスは改めて神々しさを放ち口を開く。
「初めましてゴウさん。私の名前はヴィナス。数多の世界で死者の魂を導く神々の一人です。実は折り入って頼みたいことがあります」
「っ!? 要するに死神様と言う存在ですかアナタ!?」
「違います」
あっさり否定したヴィナスは、洗いざらい全てを話した。
とある異世界で危機が迫ってるという事を。
放っておけば他の世界にも、ここ天界にも危機が訪れる事を。
それを阻止する為に、五人の選ばれし死者を勇者に転生させ、その異世界に送り出したという事を。
「ーーですので、できれば彼らのサポートをしてもらいたいのですが、よろしくお願いしてもいいですか?」
ゴウは笑み浮かべて快諾したが、
「任せろっ! 世界を滅茶苦茶にする野望を抱く異世界勇者達は、この俺の手でぶっ潰す!」
「あ、ありがとうございますっ! ちなみにどの様な厄災かと言うとーーえっ!?」
勇者処刑宣言してヴィナス様もびっくり。
「ぶっ潰すってなんですか!? ち、違いますよ! 彼らの助けになってほしいとーー」
「大丈夫だ。天界の審判により天罰を与え送り出した外道勇者達は、俺がこの手でトドメを刺して見せるっ!」
「トドメ刺すッ!!?」
全く話を聞いていないゴウさんなのでした。
今、ゴウの脳裏にはこの様なビジョンが浮かび上がっていた。
特戦隊の服を着た五人の勇者達。
彼らがナメック星人を大量虐殺してドラゴンボールを強奪。
そして身長を五センチ伸ばすという野望を抱いてるフリーザ様に献上する姿を。
「許せん! 許せんぞ勇者達よ! ヴィナス様の名に誓い、奴らを自宅だけを守る勇者にしてくれる!」
「いや、それただの引きニートですよね……じゃなくて、話をちゃんと聞いてーー」
「という訳で出発だ! 共に勇者討伐しに行く人手を上げろッ!」
ヴィナスの話を聞かず、ゴウがこの場でお供探しをし始めると、
「だからそれ以前に話をーー」
「ワンッ!」
「ウキッ!」
「キジィ!」
威勢の良い返事が三つ、山彦の如く部屋中に響き渡り、ヴィナスの静止の声を遮った。
気づけばヴィナスの隣には、さっきこの場から出て行った筈の熊のぬいぐるみがいた。しかも三匹。
それぞれ犬、猿、雉のコスプレをしており、ヴィナスも一瞬「何故桃太郎?」と思い込んでしまう。
ちなみに三匹共額に「目指せ書籍化!」と書かれた鉢巻を巻いてたが、そこに関しては誰も触れなかったのでした。
「では共に行く資格があるかどうかの試験を行う! パンはパンでも食べられないパンは山程ありますが、意味に“悪魔”という文字が含まれる食べられないパンはなーんだ!?」
ぬいぐるみらが腕を抱え、難しい顔して考え出した直後、
「ちなみに制限時間は〇.五秒ですっ!」
「「「えぇっ!!?」」」
「はいっ! とっくに時間切レェェェッ! 答えは
理不尽宣言及び答えが発表され、予想外な顔して驚愕するぬいぐるみ達。
そんな三匹の事を気にせず、ゴウが手に持っていた起動ボタンを押した瞬間、
BOOOOOOON!! と、今も驚き固まってる三匹のぬいぐるみが突如爆発した。
「うばァァァァァァ!!」
その内の猿衣装着てる一体が、悲鳴をあげて真上に吹っ飛んだ。
そして上空に灯るように光る、例の異世界の入り口に刺さる。
そしてそのまま吸い込まれてしまったのだった。
「待ってろよ勇者共! 全ての世界は俺の手で必ず守ってくれるわァァァ!!」
そしてゴウも入り口に向かってジャンプし吸い込まれる。
彼が入った直後に光が消え、ゴウはヴィナスが言う、例の世界へと向かうのだった。
登場からこの展開まで僅か七分。
「し……心配なんですけど」
散らかった部屋で取り残されたような感じのヴィナスは、最初とは比べ物にならないほど不安に満ちた声でそう呟いた。
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